世界樹同盟


 ピギーとかいう反則技を使ってタイタン達に力を見せつけた俺は、あっという間に同盟を結ぶ事に成功した。


 ピギー、あまりにもバランスブレイカー過ぎる。直接的な攻撃力は無いが、精神的攻撃力があまりにも高過ぎるのだ。


 この世界に顕現させるだけだ世界の均衡を壊しかねないこのチートちゃんは、久びさに俺の役に立てたのが嬉しかったのか物凄く上機嫌である。


 心優しき怪物。そう表現するのが1番正しいだろう。


「大活躍だったなピギー。お前のお陰でタイタンとの同盟があっという間に終わったぞ。お疲れ様」

『ピギェ!!』

「あはは。そんなに俺の役に立てたのが嬉しいのか?大丈夫。いつも愚痴を聞いてくれるだけで助かってるよ」

『ピギー』


 語尾にハートマークが着いてそうなほど甘い声(死を感じる)を出しながら、楽しそうに鳴くピギー。


 自分の力が制御出来ていたらとても頼もしい相棒として、様々な世界で伝説を残す事になっていたんだろうな。


 世界を愛し、世界に拒絶された存在。


 未だにその正体が何者なのかは分からないが、ピギーが可愛いということだけ分かれば十分である。


「ちなみにピギー。ちょっとした質問なんだが、封印されていなかった頃の全盛期ならこの世界も滅ぼせたのか?」

『ピギ?ピギー』

「あぁ、やっぱり余裕なんだ」

『ピギピギ、ピギェー』

「は?この程度の世界なら一秒も経たずに滅ぼせたって?なら、俺達が住む世界はどうなんだ?」

『ピギー........ピギェ』

「........マジかよ。10秒もあれば十分なのか。136億年の歴史があるとされているこの宇宙空間を、たった十秒足らずで無に還せるのか。封印されていた時に出会えたのは本当に幸運だな。一歩間違えたら死んでいたってことだろ?」

『ピギー!!』

「あはは。俺は殺さないって?それはもちろん分かってるよ。いつも守ってくれてありがとな」

『ピギ!!』


 今もどこかで見守ってくれるピギーに感謝を告げると、ピギーは嬉しそうに鳴く。


 全力を出せれば10秒もかからずにこの宇宙空間そのものを消せるとか、どんだけ強いんだよこの子。


 やはり、世界を三度滅ぼしたと言うだけの事はある。間違ってもピギーの封印を解いてはならないな。


 また力を制御出来ずに世界を滅ぼして、孤独な人生を歩ませてしまうし。


 俺も人間だ。いつの日か寿命を迎えるか、この腐れファックな世界に飲み込まれて死ぬ日が来るだろう。


 その日が来る時までは、この子の寂しさを紛らわせてやろう。ピギーの人生からすれば一瞬の出来事だろうが、それでもその思い出と言うのは世界が滅んでも残り続けるのだ。


「ナー!!」

(ポヨン)

「ナーちゃんもスーちゃんにも感謝してるよ。俺を守ってくれてありがとな。これからもよろしく頼むよ。俺が死ぬその日までは、こうして俺と遊んでくれ」

「ナー」

(ポヨン)


“私達もいるぞ”と言わんばかりに、俺の胸に飛び込んで顔を舐めてくるナーちゃんと頭の上でポヨポヨしてくるスーちゃん。


 ナーちゃんもスーちゃんも可愛いねぇ。特に最近はナーちゃんが構って欲しいのか、俺へのスキンシップが激しい。


 少し遊んであげなかっただけで求めてくるとは、やはりナーちゃんは甘えん坊だな。


 初めてであった時は、俺の事を餌として見ていたと言うのに。


 今となっては甘えん坊なただの猫。この魔物の可愛さを人類が知ってしまったら、真面目に魔物愛護団体が生まれそうで怖いな。


 尚、スーちゃんはいつも通りである。最近構ってあげられなくて少し拗ねていたが、少し構ってあげるとすぐに機嫌を治す。


 チョロい。チョロいよスーちゃん。出会った頃からチョロかっただけあって、スーちゃんは扱いやすくて助かるね。


 ナーちゃんはスーちゃんの真似して俺の服の中に入ろうとするのを辞めようか。あ、待って。おヘソ舐めないで。くすぐったいから。


「私もナーちゃん達とは仲がいい方ではあるが、やっぱりグレイお兄ちゃんには敵わないな。流石は一流のテイマーだ。魔物からの親愛度が違う」

「撫でさせてもらえるだけいいでは無いですか。私なんて少しでも触れようとすると逃げられるか叩かれますよ。スーちゃんはポヨポヨと揺れているだけで、基本何をやっても許してくれるんですがね」

「そりゃ、実験体にされかけたら誰だって嫌がるだろ。と言うか、お前も元は実験体なんだから相手の気持ちを分かってやれよ。機械になったのと同時に人の心も失ったのか?今時は黄色のポンコツ車バンブルビーだって人の心は持つんだぜ?」

「あれは設定上宇宙人でしょうが。私を未確認生物UMAだとでも言いたいのですか?その腐った頭にグレネードをぶち込んで赤い花でも咲かせてやりましょうか?」

「え、アレって宇宙人設定だったのか?マジかよ知らなかったぜ」

「はぁ、これだから知ったかぶりミーハーは。いいですか?あの作品のあらすじは─────」


 と、何故かナーちゃん達の話からトランスフォーマーの話に変わっていく一同。


 もう慣れたからあまり突っ込まないけど、一応トランスフォーマーが世界的に発表されたのは1980年代で、確かタカラトミーとハズブロによって展開されていたと思うんだが?


 ハズブロはアメリカの会社だからともかく、タカラトミーは日本の会社。


 しかも、1980年代と言えばダンジョン戦争真っ盛りの時期であり、車に擬態する宇宙人の話とか作ってる場合じゃないんですけどね。


 ちょくちょく出てくるよな。平行世界のパラドックス。


 深く考えたら負けな気がするから何も言わないんだけどさ。


「なー、グレイお兄ちゃん。あれはなんの話しをしているんだ?」

「アリカが生まれるよりも前に流行ったロボット玩具のお話さ。あー、そういえば昔その玩具で遊んだ記憶があるな........ほい、昔懐かしの玩具箱トイボックス


 昔遊んだよなぁと思い、能力で具現化してみるとあのトランスフォーマーの主人公オプティマスプライムの玩具が具現化される。


 うわ、懐かしい。昔はこいつを変形させたり戦わせたりして遊んでいたっけ。もう十年近くも前の話だな。


 土曜の朝アニメでやっていたのを見ていたっけ。俺が好きだったのは、あのバイクに変形する黒いやつだった気がする。


 昔過ぎて名前を覚えてないけど。


「お!!ボス!!そいつはオプティマスプライムじゃないか!!なんで持ってるんだ?」

「ん?あー昔この玩具で遊んでた事があったからな。俺の能力はこういうのも出せるんだよ」

「懐かしいですね。昔、CH(中国)にいたアホが本気でこれを作ろうとしていましたよ。結局あれは完成したんですかね?と言うか、彼は生きているのでしょうか?」

「今度映画でも借りて皆で見てみるか?」

「いいんじゃないか?テレビとか持ち込んだら、ドワーフ達は喜んでくれるだろ。映像記録の技術はあまり発展してなさそうだったしな」

「次いでにトランスフォーマーも見せましょう。そしたらきっと、この世界樹の世界は自然溢れる豊かな土地から機械仕掛けの都市サイバーティクエリアになりますよ。ちょっと楽しみです」


 ちょっと見てみたいかも。変形する車はどうでもいいが、バイクとか車に乗るエルフやらドワーフを。


 そんなことを思いながら、俺達は懐かしい映画の話で盛り上がるのであった。


 アリカが殆どものを知らないことが発覚したので、これが終わったら映画鑑賞パーティーを開くとしようと心に決めながら。




【トランスフォーマー】

 タカラトミーとハズブロによって展開されているメディア・フランチャイズ。北米では1984年5月から、日本では1985年6月から発売開始された。変形ロボット玩具を基にしたアニメーション、コミック、映画で全世界的に展開されている。

 多分いちばん有名なキャラはバンブルビー。黄色い車に変形するオッチョコチョイなヤツ。




 世界線が違えど、やはりロボットに人はロマンを感じるらしい。


 割とマジめにドワーフたちに変形型ロボットでも作らせてみようかという話になりつつも、俺は会議に出席することとなった。


 全ての国家との同盟も終わり、残すは邪神の討伐とそれを崇めるテロリスト達の始末。


 ただイタズラに殴り込みに行っても甚大なる被害を出すのは目に見えており、最低限の作戦や役割を決めておくのが重要と言えるだろう。


 そんな訳で、集まったのはタイタンの王が住まう家。


 タイタンがデカすぎて他の国だと街を壊してしまう為、消去法でこの場所に決まったのである。


 まぁ、俺は適当にしていればいいや。もうやつことは終わったし、後は上手くいくことを祈るばかりである。


 あぁ、さすがにそろそろグダニスクに帰りてぇ。日本国を取り戻したのはいいが、その後のことを考えるとやるべきことが山積みだな。


「ふむ。皆集まったようだな。では、始めるとするか」

「おい、アバート。貴様が仕切るな」

「おっと、失礼。グレイ殿。進行を頼む」

「え、俺?まぁいいけど。それじゃ、会議を始めます。とは言ってもそんなに多くのことは決めません。簡単な作戦と役割だけ決めましょう」


 何故か俺が仕切ることになってしまった会議が始まると、王たちはおふざけ無しで真面目に今後をどうするのかを話し合った。


 元々優れた人たちなのだ。王やら議長という地位に立てるだけの頭と実力を持っている。


 あとは勝手に任せてしまえば問題ないなと思って話を聞いていると、最後の方にアバート王が俺に話を振ってきた。


「では、この同盟の名前を決めよう。同盟を結んだのだから、我々の団結を一目見てわかる名前をよろしくしたい」

「........俺が決めるんですか?」

「この同盟はグレイ殿が主導となって結ばれたもの。ならば、その主が名をつけるのが自然の道理というものだ。そうだろう?」

「異議なし。儂もそれを望むぞ」

「異議なし。ちゃんと考えてくれよ。今後、歴史に残る同盟の名前なんだからな」

「異議なし。頼みましたぞグレイ殿」


 えぇ........そんなの一つも考えてないんだけど。


 俺はそう思いながら、適当な名前を考えることにした。


 人と魔物が結ぶ同盟だから“人魔同盟”?いや、彼らは魔物ではあるが人と本質はそう変わらない。ここで分けるようなことをすれば、今後何かしらの溝が生まれる可能性だって有り得る。


 もっと分かりやすく、もっと団結をできるような名前........


 と、ここで俺の目にとあるものが入ってきた。


 タイタンの王の後ろに聳え立つ世界樹。そうだ。俺達はこの世界樹のために戦うのだから、この名前を使わせてもらうとしよう。


 ついでに言えば、世界樹の名前を使うことで“正義”は我らにありと誇示することも出来る。


「世界樹同盟なんて言うのはどうでしょう?世界樹の元に集まった5つの種族が手を取り合い、この世界を守るために戦うんです。正義は我らにありますよ」

「ほう!!単純だが、いい名前だ。“正義は我らにあり”か。既に我々は奴らに勝っているとということだな」

「悪くないんじゃないか?時にはシンプルな方がいい時もある」

「“技術の進歩の為に”。儂らも世界樹様の元に集ったこの英雄達と肩を並べるかの」

「悪くない。では、世界樹同盟。初めての仕事にして、最後のおお仕事をするよしよう」

「行くぞ。邪神を崇めるテロリスト共のケツの穴をファックしてやれ」


 世界樹同盟vs根喰いヘッグ


 この世界の歴史の転換点がすぐそこまで迫ってきていた。




後書き。

昔、テレビアニメで見てたなぁ.....最後に黒いバイクの奴が死んだと記憶しているけど、あってるかな?

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