タイタン陥落


 転移陣を使ってやって来たはタイタンの住む国。天を見上げても尚頂点の見えないおおきな木に囲まれたこの場所が、巨人の住む場所である。


 既にアバート王から連絡は行っているらしく、転移した瞬間に馬鹿でかい巨人が俺達を出迎えてくれた。


「久しいですねノース殿。お変わりないようで何よりです」

「ホッホッホ。相変わらず大きいの。このジジィが見上げるにはちと辛かろうて」

「それは種族の都合上仕方がありませんよ。どうかご勘弁を」


 エルフの国はタイタンの国とあまり深い交流が無いものの、全く交流が無い訳では無い。


 特にこの世界では顔が広いノース村長はどうやらタイタンの中にも知り合いがいるらしく、彼が出迎えをしてくれた。


 やっぱり、このお爺ちゃんが1番ぶっ飛んだスペックをしているのでは?


 全ての種族に知り合いが存在しており、こうして最初の繋がりを作ってくれるノース村長こそがこの世界の救世主に見えてきたな。


 拝んでおくか。ご利益ありそう。


 そんなアホな事を心の中で思っていると、タイタンは膝を着いてできる限り俺達の目線と合わせる努力をしながら挨拶をしてくる。


 馬鹿みたいにでかいから、目線の位置はあまり変わってないんだけどね。


「初めまして人類の王よ。私の名はグレッド。貴方々に出逢えた事を光栄に思います」

「ご丁寧にどうも。グレッド殿。一応俺が代表者のグレイだ。好きなように呼んでくれ。早速だが、王の場所に連れて行って貰えないか?あまり長い時間を掛けすぎると、この世界の崩壊を目論む根喰いヘッグの連中が対策を立ててしまうからね」

「畏まりました。では、私の掌の上にお乗り下さい。高くて少々怖いかもしれませんが、いい景色が見られると思いますよ」


 雑な煽りあいもなく、サクサクと話が進み俺達はグレッドの掌の上に乗って移動を開始する。


 巨人族と言うだけあって彼らの身長はとてつもなく大きく、手のひらの上から見た景色はビルの屋上から見下ろしている気分であった。


「人の掌の上で転がされるなんて表現があるが、この世界だとそれが物理的に可能になるんだな。さすがはダンジョン。俺たちの常識が全く通用しないぜ」

「全くだ。バンジージャンプとか簡単に出来そうだ。アリカ、またやってみるか?」

「本当に勘弁してくれグレイお兄ちゃん。私は締まりがいい方だが、今度こそ漏らすぞ?そういう趣味があるなら目の前でやってやるから、この命懸けのバンジーだけは勘弁してくれ」

「アリカ?変な勘違いをするんじゃない。そういうのが見たいから言ってるわけじゃないからな?」

「あらん?ボスもいい趣味してるわねん。でも、11歳の少女に頼むものでは無いわよん?」

「おいコラ性自認女野郎トランスジェンダー。俺にそんな趣味はねぇ。お前と一緒にすんな」


 アリカ、可愛くていい子なんだけど、偶にとんでもないことを言い出すから困るな。


 しかも、僅かに顔を赤らめながらモジモジする演技をするな。俺がロリータ・コンプレックスだったら今頃襲ってたぞ。


 良かった、うちの組織の男共の性癖が終わってて。でなければ、今頃女の取り合いで殺し合いが起きていたかもしれん。


「ダメですよアリカ。淑女がその様なことを言っては、男が近寄りませんよ。幻想を抱く頭の悪い男どもは、清楚で可憐な女性を好むものですからね」

「男に近寄られてもはた迷惑なだけさ。昔、小児性愛者ペドフィリアの教授に詰め寄られたことがあったが、本当にクソだったよ。ケツに塩酸をねじ込んでぶっ殺してやろうかと思ったぞ。グレイお兄ちゃんなら許せるが、あの豚は無理だったな」


 アリカが昔の出来事をサラッと口にしたその瞬間、その場にいた全員(ノースとグレッドは除く)が一斉に殺気立つ。


 ........は????


 うちの可愛い可愛いアリカちゃんを、襲おうとした生きる価値もないゴミが存在していたのか?


 女神に手を出していいのは、この世界のどこにも存在していないと言うのに?


 今の口ぶりからしてまだそいつ生きてるよな?このダンジョン攻略が終わったら、日本を正式な国として認めさせるよりも先にやるべき事ができたわ。


 アリカに懐いているスーちゃんやナーちゃん、ピギーまでもが“殺すべし”と言っているのがわかる。


 アリカは本当にこの組織の中で愛されているな。素直で可愛いし、その明るさにはみなが元気をもらう。


 だからこそ、過去にした行いのツケは払ってもらおう。人殺しは良くない?何を今更。俺達はマフィアなんだよ。


 仲間が悲しんだら、その元凶をぶっ殺してでも仲間を笑顔にさせるのがマフィアのやり方さ。


 望んでなった訳じゃないけど。


「今すぐにでも、そのペド野郎のケツの穴にコンクリを詰めてミシガン湖に沈めてやりたい気分だ。おいボス。これが終わったらUSA(アメリカ)に行って今までアリカを苦しめてきたクズ共を全員殺っちまおうぜ。正常者のフリをしたヤク中ジャンキー共で湖を赤く染めてやるんだ」

「あぁ、俺も今同じことを思ったよ。最近ちょいと忘れていたが、俺達はマフィアなんだ。組のモンが世話になったんなら、しっかりとお礼参りしてやらないとなぁ?」

「私の可愛い妹をファックしようとした........?ありとあらゆる拷問をした後、生きたまま湖に沈めても足りないよ」

「うふふふふ。久々に故郷の国へと帰りましょうかねん。私の恩人に汚らしいポークビッツを向けたブタ野郎は屠殺場がお似合いよん........」

「あ、あのー皆さん?殺気立つのは分かりますが、ノース村長が........」

「無理っすよミルラ。こうなったら止められないっす。まぁ、どうせいつもとやってることは変わらないんで、いいんじゃないっすか?俺もちょっと人を殺したい気分になってきてるっすし、クズならぶっ殺しても心が痛まないっしょ」

「あぁ、これは全員ダメですね。レミヤさん。なんとか言ってくださいよ」

「........見つけました。アリカの過去は、様々な情報がネット上に載っているので探しやすくて助かりますね。後でデータを送りますよ?」

「あぁ、こっちもダメだった」


 どうせ俺達は社会から溢れたクズの集まり。今更人を殺す事に罪悪感を覚えることも無ければ、同じクズを殺す事で世界の治安を守る正義だとも言える。


 このダンジョン攻略が終わったらマジでUSA(アメリカ)に行って暴れてやるよ。過去にやらかした事の精算を取らせてやる。




【ミシガン湖】

 北アメリカにある五大湖のうちの1つの湖。世界では5番目の面積をもつ淡水湖であり、完全に1つの国の中にある湖としては世界最大である。




 ダンジョン攻略が終わり次第、USA(アメリカ)に飛んでアリカを虐めたりファックしようとした発情豚をぶっ殺すことが確定した後、俺達はタイタンの王との面会に望んだ。


 やはりこの世界では、偉い人の建物は世界樹の近くに建てられるらしいな。


 アホみたいにでかい家は、天井までなんと15m程もある。


 どう頑張っても手が届きそうにないが、タイタンからすれば普通のぐらいなんだろうな。


「よく来たな。人類の王よ。我がこの国の王であるジュフスだ」


 タイタンの王は、思っていたよりも普通であった。


 力こそパワーとか言い出すような強さ至上主義とは聞いていたのだが、見た目は優しそうなオッチャンである。


 デカさが半端じゃないので圧が凄いが。


「はじめましてジュフス王。早速ですが、我々と同盟を結んで頂きたい。具体的には、邪神として恐れられるニーズヘッグとそれを信仰する根喰いヘッグの殲滅。それが成されれば、この世界に平和が戻ります」

「ふむ。それは我々も理解している。が、その提案にホイホイ乗る程我も馬鹿ではない。力を示せ。それが出来れば、我々も同盟に入ろう」


 うん。まぁ、予想通り。


 力こそ正義のこの国では、強いやつが偉いらしい。


 実に原始的な国家ではあるが、力があれば誰でも王になることが出来るのだ。


 その気になればこの国乗っ取れるんじゃないんだろうか?とも思うが、今回は同盟を結ぶのが目的なのでそれは置いておく。


「方法は?」

「なんでも良い。ここにいる者たちを納得させられるだけの力があれば、それでいい」

「なるほど。では、見せてあげますよ」


 俺はそう言うと、やる気満々のピギーに声をかける。


 ピギーは直接的な攻撃手段こそ無いものの、圧倒的な殺気と圧で相手の精神を貪り食う。


 その嘆きは、世界最強とまで謳われる英雄王アーサーすらも跪かせるのだ。


 こんなにもハッタリにもってこいの性能を持っている者もそうはいない。俺は仲間たちに“今からピギーを出すから備えてね”と合図を送ると、全員ギョッとしてアリカが配布していた精神安定用の薬を飲み干す。


 俺はもう慣れてしまってよく分からないが、どうやらこれを飲むのと飲まないのとでは結構な違いがあるらしい。


 俺にはわからん。だって飲まなくてもなんとも思わないもん。


「では、始めます。心を強く持ってくださいね」

「ん?何を────────」

「出番だ。存分に嘆け」

「ピギェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!」


 刹那、世界に鳴り響く死の不協和音。


 今回は、相手に強さを見せつけるためのものなので、ピギーも死ぬほど張り切っていた。


 ドス黒いオーラが何時もよりもさらに黒く舞い上がり、死を告げる嘆きはタイタンの国どころが世界そのものに死を感じさせる。


「っ........グゥ........!!」


 もちろん、タイタンの王もこの圧には耐えられず、椅子から転げ落ちて床に手を付きながら心臓を抑えた。


 うーん。やっぱりピギーはチート武器だな。何がやべぇって、これでも億分の一も本気を出してないのがやばい。


 さすがは世界を三度滅ぼした(らしい)剣。封印を解く気は無いが、封印解除状態のガチのピギーが暴れたらどうなるのだろうか?


 世界って事は、平行世界の宇宙を壊してきたって事だよな?


 え、ピギーは宇宙そのものをぶっ壊せるだけのエネルギーを持っているってこと?ヤバすぎて草も生えんわ。


 封印されていた頃に出逢えたのは、幸運だったのかもしれないな。もし封印されずにピギーがこの世界を訪れたら、その瞬間に世界は消し飛んでいたかもしれない。


「ピギェェェェェェェェ!!」


 俺の役に立てるのがそんなに嬉しいのか、ウッキウキで叫びまくるピギー。


 封印状態で出せる最高出力は、タイタン達に力を見せつけその誰もが俺達のことを認めてくれるだろう。


 そろそろいいかなという事で、ピギーを仕舞うと息の荒いジュフスは何とか椅子に座り直しながら大量の汗を拭った。


「み、認めよう。確かにその力は凄まじいものであった。認めるから、もう二度とその力を使わないでくれ」

「........ニーズヘッグとの戦いではおそらく使いますが?」

「そ、その時だけは許可するから、それ以外時に使うのはやめて頂きたい。いやほんとに」


 こうして、俺はピギーとかいう反則技であっという間にタイタンと同盟を結び、遂にこの世界に存在する全ての種族と有効的な関係を結ぶことに成功したのであった。


 後はボスを倒すだけ。サッサと終わらせてUSAに殴り込みに行くとするか。





 後書き。

 ジュフス「タイタンだけ雑過ぎないか?」

 グレイ「神もどき(作者)が、想像以上にこの話が長くなりすぎてるからタイタンは雑でいいやだって(早く地球でのドンパチに戻らせたい)」

 ジュフス「解せぬ」

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