123.依頼完了報告と支払い
翌日、三の鐘に神殿へ行った。ヤハトとともに通された部屋にはすでにフェナとバル、イェルムにローディアスが揃っていた。
「お待たせしました」
もう少し早く着けそうだったのだが、店を少しいったところで、
「先にイェルムの毛皮の取引からだ」
「はい。こちらにご用意しております」
赤い布を張ったトレイに、大金貨が積み上がっている。
「まず、シーナさんのベッドの分を引いた毛皮の料金が、大金貨六十五枚。フェナ様のベッドを差し引いた毛皮の料金が五十八枚。少しばかりフェナ様の方の毛皮が小さかったのでこのように。フェナ様はそこからソファの分も引かせていただきます」
「大きさの取り決めがなかったからな。普通の冒険者なら自分の方を大きくする。覚えておきなさい、シーナ」
言われているのはわかっていたが、それよりも依頼分が丸々返ってきていることに驚きすぎてそれどころではない。
さらにベッドフレームや加工料を引かれる。これがまたかなりの金額だ。大金貨八枚もする。
「シーナさんには大金五十七枚ですね。良いお取引をありがとうございます」
「切り取るのを一方からする差額は?」
一枚皮を得る見返りは? とイェルムが問われている。
「今の時点で一枚物の毛皮の注文も来ておりませんし、この毛皮を保存し、定期的に洗浄をかける手間を考えますと……半年以内に注文があれば、フェナ様とシーナさん心ばかりのお礼をさせて頂く予定です」
「半年……まあ、わかった」
「じゃあシーナ、ここで精算してしまおう。依頼料の大金貨五十枚」
「はい。お収めください」
残りは大金貨七枚。七枚もプラスなんて!
「私への指名料は大金貨一枚だ。が、まあいい」
「いえ、きちんと払いますよ」
指名料が百万単位とは……。しかも、気分が乗らないと平気でお断りする。
「新しい部屋も得たし構わない」
「あそこはうちの客間であってフェナ様のお部屋じゃありませんからっ!! ベッド、お友だち泊めちゃいますからねっ!!」
もう客間にホェイワーズのベッドが入ることは決定事項で話されているので諦めた。
ベッドは大きいので、パーツを作って組み立ては部屋の中で行うそうだ。全部入れたあとクリーニングをして、絨毯を敷くそうで、それはヤハトが、やると請け負ってくれた。報酬はまた何か新しいお米料理の注文を受けた。
あの屋敷の中でヤハトだけが米料理に興味を持ってくれている。次は牛丼を作ろうと決心した。カツ丼も喜んでくれそうだ。
残った金をそのまま預けて、次は冒険者ギルドだ。中に入ると普通に奥に通された。
「毛皮の代金は支払済みです」
「倉庫の方に来てくれればいつでも渡せるようにしておく」
イェルムとビェルスクのやり取りだ。そしてそのやり取りを終えると、イェルムは時間がなくてと一人先に帰った。
「さて、魔石の代金だ。解体費を引いて、シーナは金貨五枚。フェナ様は金貨四枚と銀貨一枚だ」
ありがたく貰う。ホェイワーズの魔石は糸の素材になることはなく、魔導具に使われるそうなので、即売ることにした。
と、ビェルスクの腰にある物に気づいた。
「あれ、守り袋……」
「ん? ああこれか? なんかイェルムと悪巧みしてるらしいじゃねぇか。カミさんがいきなり持ってきたぞ」
「おお……流行ってきてる?」
「なんでも、自分の色か、自分の好きな色の紐のやつを渡すんだと言って、ピンクの紐のやつをくれたんだが、ピンクはなんだか可愛らし過ぎて困ってるとこだよ」
あまり一人で出歩かなかったから気づいてなかったが、順調に浸透しているらしい。結果フェナへの報酬を払っても儲けがでたから、商売に手を出す必要はなかった。しかし、お金はいくらあってもいい! 家の維持費がきっとすごくかかる。
「私のは紫だけど、シーナの好きな色?」
「それはフェナ様の銀髪に合う色を選んだだけですね。ヤハトは前に青が好きって聞いたから青にしたの。フェナ様はもしかしたら貰うかもしれませんね、他に。ヤハトも誰か可愛い子からもらいたいなら、その守り袋外しておいたほうがいいかもしれない!」
あえてバルには触れなかった。というか、気遣いができるバルが、気づかないはずがない気がする。つまりわかっててスルーしているのだ。
無念、ズシェよ。
「別に今、結婚相手とかいらないしなぁ……めんどくさい。フェナ様と狩りしてる方が楽しい」
「ヤハトはそうよなぁ……」
めちゃくちゃわかる。
「だから守り石だけ買いに行ってくる」
「あー、中身入れ替えないとね」
狩猟祭は去年と同じく神殿教室の送り迎えをしてくれる子どもたち二人と店を回った。お土産にフルーツの砂糖漬けをプレゼントした。
途中ギーレたちにまた会ったが、そのギーレの腰が守り袋でえらいことになっていた。お姉様たちにはこのコンセプト、気に入ってもらえたようだ。守り石が砕けた物ほど愛が深いとかそんな話もしていた。尾ひれがついている。イェルムにはシーナが糸を編んで卸しているので、きちんと報酬は頂いている。これはまた追加をもらいそうだ。つどもらうのは面倒くさいので、後でまとめて貰う話になっている。小銭稼ぎではあるが、食器や布類を揃えるのに使おうと思う。
夜はフェナたちとともに祝賀会だ。予想はしていたが、当然のように招待状が届いた。まあ仕方ない。ガラにお化粧をしてもらい、見た目年齢を上げて参戦である。
ヤハトとともに美味しいものめぐりをしていた。
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