第16話「二葉のデート」

 ダブルデート当日となった。

 私、二葉は普段あまり着ない黒のブラウスとチェックのプリーツスカートに身を包んだ。たまにはおしゃれくらいしてもいいよね。

 駅前に集合になっているので、遅れないように一斗と一緒に家を出ることにした。しかし一斗があまり話そうとしない。こっちをちらちら見ているような……?


「……ん? 一斗、どうかした?」

「……あ、い、いや、二葉の格好が……」

「あれ? そんなにおかしい?」

「い、いや、そうじゃなくて、か、可愛らしいなと……」

「ええー、そんなぁ~、もっとはっきり言ってくれていいのにー! 一斗もカッコいいよ」

「ぐっ、めんどくさい二葉が出たな……ブツブツ」


 何かブツブツつぶやいている一斗だった。

 駅前へ行くと、新奈と洸太くんがもう来ていたようで、私たちを見つけて手を振っていた。


「はい、鮎原姉弟遅刻ー! バツとして千円ね」

「ええ!? に、新奈? まだ時間早いのでは……」

「ふっふっふー、嘘だよー、あらやだ、二葉ったら可愛い格好しちゃってー! おじさんといいとこ行かない?」

「い、いや、なんでおじさんになるのよ……そういう新奈もスカートにしたんだね……」


 膝上のミニスカートに身を包んだ新奈は、背が高いのもあって足も長く見える。くっ、負けた気がする……!


「……おい、一斗」

「ん? どうした?」

「……俺らは最高の景色を眺めているんじゃないか……?」

「……はいはい、お前が本当のおじさんだな」


 結局女同士、男同士で固まってしまう私たちだった。


「ま、それはいいとして、一斗くん、行こっか!」


 そう言って一斗と腕を組む新奈だった。


「ええ!? あ、う、うん……」

「あはは、一斗顔が真っ赤だぞー。二葉ちゃん、俺らも行こっか」

「あ、そ、そうだね、行こっか」


 私たちはショッピングモールにやって来た。ここで色々見た後に、カラオケに行こうと話していた。あ、あそこにゲームセンターがあるな、私たちは行ってみることにした。


「お、バスケのフリースローがあるな、二葉ちゃんと一斗なら楽勝なんじゃない?」

「うーん、どうだろ、距離感がちょっと違うからなぁ、ねぇ一斗、ちょっと勝負しない?」

「ん? まぁいいけど……」


 後ろから新奈と洸太くんの「頑張れー」という声が聞こえてくる。制限時間内に何回入れることができたかを競うゲームみたいだ。私と一斗が二人で始める。どんどんボールを投げていく。あ、距離が短いのもあってわりと入りやすい……と思ったら、なんとゴールが動き始めた。な、なるほど、こうやって入れにくくしてくるわけか。


「ぬぬ、なかなか難しいな……一斗どんな感じよー?」

「今集中してるとこ、そういう二葉こそどうなんだ?」

「むう、負けないからねー!」


 ピーっという音が鳴ってゲームが終わった。結果を見るとわずかの差であったが一斗の方が多く入れていたみたいだ。くそぅ負けた……。


「うう、負けた……」

「まぁこんなもんかな、二葉も頑張ったじゃないか」

「……なぐさめの言葉はいらないさ、私は敗者、一斗の好きなものを買ってあげようではないか……」

「なんだそれ、何も賭けてないから、気にするな」

「一斗くん、カッコよかったねー!」


 また一斗の腕に抱きつく新奈だった……って、新奈め、ぐいぐいいくな……私もあれくらい積極的になった方がいいのだろうか。


「え!? あ、まぁ、バスケだから出来たって感じで……あはは」

「あはは、一斗また顔が真っ赤になってるな。あ、二葉ちゃん、お、俺らも手つなぐくらいやってみる?」

「え、あ、う、うん……」


 私は洸太くんの手をそっと握った。さすが男の子、手が大きい。一斗の手はよく触っているけど、他の男の子というのが恥ずかしさを倍増させた。

 私たちはゲームセンターを後にして、せっかくここに来たので服などを見てみることにした。


「これから夏に向かうといえば、やっぱり水着だよねー、ねぇねぇ、一斗くんはどんな色が好き?」

「……それは色の話をしているんだよね? み、水着ではなくて……」

「あはは、恥ずかしがらなくていいよー、そうか、一斗くんもオオカミさんだったか……」

「え!? な、何も言ってないんだが……」

「あはは、一斗の奴、押されまくってんなぁ。あ、二葉ちゃんにこのシャツとか似合いそう」

「あ、ありがとう、けっこう派手だけど、似合うかな……」

「大丈夫、二葉ちゃんも可愛いよ」


 か、かわ……!? 急にあのことを思い出してしまう私だった。

 結局新奈と洸太くんに押されっぱなしの私と一斗がいたような気がするけど、気のせいかな……。

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