第15話「一斗のお誘い」
ある日の夜、俺、一斗は部屋で勉強をしていた。
二年生になり、勉強もどんどん難しくなっている。好きな英語はまあまあできていると思うが、苦手な数学が問題だった。公式が頭に入って来ない。覚えるだけではダメな数学の難しさを肌で実感していた。
(うーん、不等式の証明と言われてもな……なんかイマイチピンとこないというか。これはまた二葉に訊いた方がいいのかな……)
コンコン。
うんうんと唸っていると、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。「はい」と言うと、二葉が入ってきた。
「一斗、今何してるの……って、勉強?」
「ああ、ちょっとやっておこうと思って。でもなんか数学が難しくて」
「そうなんだねー、数学か、お姉ちゃんに任せなさい!」
「お、おう、なんでそんなにやる気なのか知らんが、ここ教えてくれるか?」
二葉が問題を見て、「ああ、不等式の証明かー、ここはこうして、こうなって……」と、分かりやすく教えてくれた。さすが理系女子だなと思った。
「あ、なるほど……ありがとう、なんか分かった気がする」
「ふっふっふー、分からないことあったらお姉ちゃんに訊くんだぞっ!」
二葉がそう言って俺の頬をツンツンと突いてきた。な、なんなんだこいつは……でもあまり言うと怒られそうな気がしたので、やめておいた。
「それはいいんだけど、何か用事でもあったのか?」
「あ、ああ、そ、それがね、その……」
先程の勢いはどこへやらという感じで、なぜかもじもじし始める二葉だった。なんだろう、何か言いにくいことでもあるのだろうか。
「……そ、その、実はね、新奈が一斗とデートしたいって言っててね……」
「ああ、なるほどデート……って、ええっ!? で、デートって、誰が誰と!?」
「だ、だから新奈が一斗とだよ」
「え!? 横溝さんが、俺と……?」
二葉からまさかの言葉を聞いた。横溝さんが俺とデートしたいと……? あれからよくRINEでは話をしているが、学校のことやお互いの趣味など、普通のことを話していたので、もちろん横溝さんからデートという言葉は聞いていなかった。
「う、うん、それでね、私も洸太くんに誘われてたって言ったじゃん? だからさ、ここは、だ、ダブルデートなんていいんじゃないかなーって思ってるんだけど……一斗はどう思う?」
だ、ダブルデート……? ということは、四人で遊びに行くということか。ま、まぁ、洸太も二葉も知らない人ではないし、俺もいきなり横溝さんと二人きりというのもなんだが恥ずかしい気がした。
「な、なるほど、そういうことか……うーん、でもせっかく洸太と二葉が出かけるのに、お邪魔にならないかな……?」
「い、いや、私も新奈もそっちの方がリラックスできそうでさ、一応洸太くんにも訊いてみたんだけど、いいよって言ってくれて。あとは一斗がうんって言えば決まりっていうか……」
なんと、洸太はいいよって言ったのか。う、うーん、まぁ洸太がそう言うのなら、俺も二人よりも四人の方が楽しめるかなと思ってしまった。
「そ、そっか、まぁ、俺も横溝さんといきなり二人きりは恥ずかしいかもしれないな……分かった、だ、ダブルデートでいこうか」
「あ、ありがとう! あの二人には私から話しておくね。たぶん新奈から一斗にもRINEが飛んできそうな気がするけど」
「そうだな、なぜか横溝さん、マシンガンのように送って来るんだよな……まぁ別にいいんだけど」
「ああ、新奈打つのめっちゃ早いもんね。新奈と楽しく話すこと出来てる?」
「まぁ、学校のこととか趣味のこととか、よく話してる方だとは思うけど……」
「そっかそっか、うんうん、いいことだよー、RINEの相手が私だけっていうのも寂しいもんね!」
「い、いや、俺も一応友達いるんだが……まぁいいや。そういう二葉こそ、洸太と楽しく話せてるのか?」
「あ、う、うん、色々訊かれたりするから、私も質問したりして……楽しくやってる方かな」
「そっか、まぁいいんじゃないか。RINEの相手が俺だけっていうのも寂しいしな」
「そ、そうだねー……って、なんか生意気なこと言ってるねー! 私はお姉ちゃんだぞー!」
そう言って二葉がポカポカと俺を叩いてきた。まぁ、こうやってお互い異性の友達がいるというのも普通のことだし、悪いことではないよなと思った。
そして、いつか言ったが俺と二葉にもそのうち恋人というものができるだろう。その時は二葉を応援したい。そんなことを思っていた。
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