第14話「二葉の名案は」

「よし、じゃあ今日はここまでだねー、みんな明日も頑張ろうねー」

「お疲れさまでしたー!」


 部活が終わり、高梨先輩の一言の後、みんなで挨拶した。

 私、二葉は荷物を持って部室を出た。この前の試合では私もPG(ポイントガード)として出してもらった。試合も勝ったし、高梨先輩にも「鮎原さん、いい感じだねー、そのままどんどん技術を磨いていってねー」と褒められた。ああ、憧れの高梨先輩に褒められると、どこかフワフワした気持ちになる。


(ふふふ、私もバスケが少しずつ上手くなってるってことかなー、嬉しいなー、るんるんるーん)

「――葉、二葉?」


 その時、声をかけられたような気がした。見ると新奈がいつの間にか私の横にいた。


「わぁっ! な、なんだ新奈か……」

「なんだってことはないでしょー、呼んでもなんか上の空だったし、何かいいことでもあったの?」

「あ、ああ、高梨先輩にバスケで褒められて、嬉しくてそのことばっかり考えてたよ」

「ああ、そっかー、憧れの高梨先輩だもんねぇ、でも褒められると嬉しい気持ちになるよねー」

「うん、単純かもしれないけど、やっぱり嬉しくなるよねーって、新奈も部活終わったの?」

「うん、今から帰ろーと思って。一緒に帰らない? ちょっと話したいこともあるしさー」

「ん? うん、いいよ」


 そんなことを話して、私と新奈は一緒に帰る。それにしても話したいことってなんだろうか?


「新奈、話したいことって?」

「ああ、ちょっとドキドキなんだけどさ、私、一斗くんとデートしたいなーと思っててね」


 ああ、なるほど、一斗とデートがしたいと……って、ええっ!? で、でででデート!?


「ええ!? あ、そ、そうなんだね……」

「うん、まだお誘いはできてないんだけどさ、一斗くんと一緒なら楽しいんじゃないかなって思ってねー」


 その時、私は洸太くんに「二葉ちゃんと一緒なら楽しいかなーって思って」と言われたことを思い出していた。


「そ、そっか、ま、まぁいいんじゃないかな、一斗がどう返事するかは分からないけど……」

「そうなんだよねー、もしかしたらうざい女だと思われてないかなって、ちょっと心配で」

「い、いや、それはないんじゃない? 一斗はそんなこと思うような人じゃないし……」

「そうだといいんだけどねー、よし、勇気を出してお誘いしてみるかー!」


 新奈が鼻息を荒くしてぐっと拳を握った。


「そ、そっか、新奈と一斗が……はっ!? そ、そうだ!」


 新奈が覚悟を決めたその時、私はあることを思いついた。


「じ、実はさ、私も洸太くんに、で、でででデートしないかって誘われて……その、もしよかったら、だ、ダブルデートなんてどうかな? あれ? こういうのってダブルデートって言うんだよね……?」


 私の言葉に、新奈はぽかんとした顔をしていたが、すぐにニコッと笑顔になった。


「ああ、そーなんだね、なんだ、川島くんに誘われてたなんて知らなかったよー。うん、それもなんかよさそうだね。あ、でも川島くんと一斗くんの承諾がないと、私たちで勝手に決めるのもよくないよね」

「あ、そ、そっか、そうだね……うん、二人には私から話してみるよ」

「分かった。でもそっか、二葉もデートに誘われるようになったんだね、ふふふ、いつの間にかモテるようになっちゃってー!」

「ええ!? い、いや、モテてはないと思うけど……あれ? デートに誘われるってことは、そういうことなのかな……」

「うんうん、二葉可愛いんだから、自信を持っていいと思うけどなぁ。一斗くんにも可愛いって言ってもらえたでしょー」

「ああ!! そ、それはもう忘れていただけると……!」

「ふふふ、忘れないよーだ。でもなんか楽しみだね、私もドキドキだからさ、二葉と川島くんがいてくれた方が心強いっていうか」

「そ、そっか、まぁ、お互いリラックスして行くことができるかな……」


 そんな感じで盛り上がる帰り道だった。あ、でも新奈の言う通り、私たちだけで勝手に決めるのはよくないな、一斗と洸太くんに訊いてみなければならない。

 それでも、優しい二人ならいいよって言ってくれそうな、そんな予感がしていた。

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