第13話「一斗の部屋で」
ある日、俺、一斗は部屋でのんびりと漫画を読んでいた。
洸太に借りたものだが、ラブコメでほのぼのしている展開が面白いなと思った。俺もこういう恋がしたいな……と思いながら読み進める。
先日二葉とちょっと恥ずかしくなるような出来事があったが、その後は今まで通り普通に接している。まぁたしかに洸太が言うように、二葉も可愛いと思わなくもない。近すぎてこれまでよく分からなかっただけなのかもしれないなと思った。
(……それにしても洸太の奴、ぐいぐい行ってたな……俺もあれくらい積極的になった方がいいのだろうか……いやさすがに無理だな……)
そんなことを思っていたその時、「いいい一斗ーーー!!」という声とともに、バタバタと騒がしい物音が聞こえた……と思ったら、部屋にいきなり入ってきた二葉がいた。
「お、おお? どうした? なんかでかい声が聞こえたけど」
「い、一斗、わ、わ、私どうしよう……」
「な、なんだ? 何かあったのか?」
バタバタと入ってきた二葉が、今度は恥ずかしそうにもじもじしている。なんだろう、何かそんなに恥ずかしいことがあったのだろうか。
「そ、それが……洸太くんに、で、でででデートに誘われて、わ、私思わずいいよって返事したんだけど、今になって恥ずかしくなってきて……」
顔を真っ赤にして俯く二葉だった。な、なるほど、洸太が二葉をデートに誘ったのか。あいつ、本当にぐいぐい行くな……男女関係なくフレンドリーな性格だとは思っていたが、まさかここまでとは。
「お、おお、そうなんだな、い、行きたくないのか?」
「い、いや、そういうことではないんだけど、私、デートなんてしたことなくて、どうすればいいのか分からなくて……うああ、また恥ずかしくなってきた……」
「そ、そっか、まぁ俺もデートなんてしたことないから、アドバイスできることが少ないんだけど……嫌でないのであれば遊びに行くのもありなんじゃないか」
「う、ううー、一斗、ついて来て……」
「ええ!? さ、さすがにそれはできないぞ……せっかく洸太が二葉を誘ったのに、俺も行くっておかしいだろ」
「う、ううー、そっか、やっぱりダメか……仕方ない、頑張るか……」
そう言ってうんうんと頷く二葉だった。まぁでも、二葉の気持ちも分かるなと思った。先程言った通り、俺もデートの経験なんてなくて、同じ境遇になったらどうしたらいいのか分からなくなりそうだ。
でも、これも二葉が成長するためには必要なのではないかと思った。俺たちもいつかは恋人というものができるだろう。それがいつになるかは分からないが、俺は二葉に彼氏が出来たら応援してあげたいなと思う。
「……まぁ、二葉の気持ちも分かるよ。俺がもし二葉だったら同じような気持ちになってそうだ。でも、俺らもいつかは恋人ができると思うんだ。その時は俺は二葉を応援するよ」
「……あ、ありがとう……なんか恥ずかしいけど、頑張る。私も一斗に恋人が出来たら、応援する……っていうか、彼女が出来たらすぐに教えてね!」
二葉がニコッと笑顔を見せた。うん、明るく元気な方が二葉らしいだろう。
「あ、ああ、その時は教えるよ」
「ふっふっふ、お姉ちゃんが可愛い弟にふさわしい彼女か、見定めてあげようではないか!」
「ええ、急に元気になったな……見定める必要あるのか……ま、まぁいいか」
「細かいことを気にしたら負けだよー! それよりも、何か読んでたの?」
「ああ、その洸太に借りた漫画読んでた」
「へぇー、どんなの? 面白い?」
「ラブコメ作品なんだけど、なんか物語も全体的にほのぼのしていて面白いよ。今三巻まで出ているらしい。二葉も読んでみるか?」
「あ、うん、読んでみたいなー、ちょっと一巻貸してー」
そう言って二葉が俺の横に座った……って、え、そこに座るのか、まぁいいけど……。
そんな感じで、いつも通り仲が良いような気がする俺たちだった。それにしても洸太の奴、デートに誘うなんて、なかなかやるな……俺は友達の積極性に感心しながら、二葉の隣で漫画を読んでいた。
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