第11話「一斗の熱視線」
今日は球技大会が行われる。
青桜高校はちょっと変わっていて、一年ごとに球技大会と体育祭が入れ替わることになっている。もっとうまくやりくりすればどちらもできるのではないかと思ったが、大人の事情があるのだろう。大人の事情ってなんだ?
俺、一斗はサッカーに出ることになっていた。洸太も一緒だ。サッカーも嫌いではないがそんなに上手いとは言えない。自分なりに頑張ってみたがうちのクラスは初戦で負けてしまった。まぁ仕方ないだろう。
「くそー、負けちまったなぁ」
洸太がやって来て悔しそうな声を出した。
「ああ、でも二対一だから、まあまあ頑張った方じゃないか」
「そうだなぁ、あ、今から女子の応援に行かないか?」
「そうだな、そうするか」
俺と洸太は体育館へと移動する。体育館では女子のバレーとバスケが行われるようになっている。男子もバスケがあれば俺も少しは力になったのに……と思うが、それを言うのはやめておこう。
バレーの会場では二組と七組が試合を行っていた。あ、二組にいるのは
「上げて!!」
七組の方から大きな声が聞こえた。見ると横溝さんが大きくジャンプしてスパイクを打つ。相手のブロックもぶち抜いてボールはコート左隅に決まった。
「おー、さすが横溝さんだな、バレー部なだけあるぜ」
「ああ、なんかカッコいいな……」
試合は一進一退の攻防だったが、横溝さんを中心に点をとった七組の勝利となった。
(そういえば横溝さん、けっこうRINE送って来るんだよな……俺のこと気になってるとか……? いや、それは考えすぎか)
「あ、一斗くーん!」
試合が終わり、横溝さんがこちらにやって来た。
「ああ、お疲れさま、横溝さんすごいね、大活躍だった」
「ふふふー、どう? 私だってやればできる女だからねー、惚れちゃった?」
「え!? い、いや、まぁ……カッコよかった」
「ふふふ、ありがとーう! あ、バスケの方、二葉が出るみたいだよー。見てみよっか」
隣のバスケの会場を見ると、五組と七組が試合を行うところだった。あ、五組に
七組にはもちろん二葉がいる。みんなと何か話し合っている姿が見えた。経験者ということで色々教えているのだろう。
試合が始まる。七組のボールでパスを回していく。二葉にボールが回って来た……と思ったら、フェイントをかけて右からドリブルで切り込んでいく。相手のディフェンスも厳しくなかったのでそのままレイアップシュート。綺麗に決まった。うん、あいつは右からの展開が得意だったな。
「おおー! 二葉ちゃんさすがだなー、カッコいいな!」
「いいぞー! 二葉ー! やっちゃえー!」
洸太と横溝さんが声を上げた。五組に点を入れられた後、二葉がボールを持って周りを見ている。自分でボールを運んで、マークがきつくない仲間に鋭いパスを出した。そのまま仲間が決める。うん、PG(ポイントガード)の基本を忘れていないようだな。
試合は途中から差がつき始め、終わってみると七組が大きくリードしての勝利となった。
「やったー! 二葉、大活躍だったねー!」
試合が終わって、横溝さんが二葉に声をかけた。二葉もニコニコ笑顔でこちらにやって来た。
「ふっふっふー、どうだ! 私だってやればできる女だからねー!」
「いや、横溝さんと同じこと言ってる……」
「んー? 一斗さん? もしかして私に惚れちゃったのかなー? やだー、お姉ちゃんに惚れるなんてやめてよー」
「なっ!? そ、そうじゃないよ、二葉も自分のポジションがよく分かってたようだなと思って」
「そうだねー……って、なんか生意気な口きいてるねー! 弟のくせにー!」
そう言って二葉がポカポカと俺を叩いて来た。それを見た洸太と横溝さんが笑った。
「あはは、お前らほんとに仲がいいなぁ」
「ほんとほんとー、まぁそれでこそ鮎原姉弟って感じかなー」
「え!? ま、まぁ、これが普通というか、なんというか……」
なんだろう、急に恥ずかしくなってしまった。
「一斗はもう試合終わったの?」
「ああ、負けてしまって。まぁサッカーはそんなにできないから、仕方ないんだけど」
「そっかー、男子もバスケがあったらよかったのにねー。そしたら一斗も活躍できたのに」
「うんうん、一斗くんカッコいいもんねぇ。バスケで活躍する姿見たかったなー」
「え!? い、いや、カッコよくはないと思う……」
ますます顔が熱くなる俺だった。
結局その日の女子バスケは、二葉の活躍もあって七組がそのままの勢いで優勝していた。これは帰ったら自慢されそうだな……と思っていた俺だった。
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