第2話「二葉の部活動」

 ある日、私、二葉は部活に精を出していた。

 今日も先輩、同級生、後輩が一生懸命頑張っている。特に部長の高梨たかなし先輩……背も高くて美人でカッコよくて、みんなをまとめる力もある、素敵な先輩だ。私もあんな風になりたいなと思った。

 

 休憩時間になり、お茶がなくなったのでスポーツドリンクでも買いに行こうかと思って、体育館を出て学食の方へ行った。学食の入り口横に自動販売機がずらりと並んでいる。私はお金を入れて、スポーツドリンクを買った。さて戻るかと思っていたら、


「あ、二葉ー!」


 と、声をかけられた。見ると新奈にいながこちらに来ていた。

 

 横溝新奈よこみぞにいな。同じクラスの女の子。背は私よりも高く、バレー部に所属している彼女も運動が好きな人だった。私も運動が好きだからバスケをやっている。元々は一斗と遊びでバスケをやっていて、中学生になって部活に入るかとなった時に、バスケが面白かったのを思い出してバスケ部に入った。それは一斗も一緒のようだった。それから高校生になった今も続けている。


「二葉も休憩中? あ、飲み物買ってたんだね」

「うん、お茶がなくなっちゃって。まぁこうして自販機があるからありがたいよね」

「そうだねー、実は私も持って来たお茶飲み干しちゃって。私もスポーツドリンク買おうかなぁ」


 そう言って新奈が自動販売機にお金を入れ、ポチっとボタンを押す。ガランゴロンと音を立ててスポーツドリンクが出てきた。


「バスケ部も練習熱心だねー、体育館で一緒だからよく見てるけど」

「うん、三年生は最後の大会もあるからね、気合い入ってるよ」

「ああ、そうだね、それにしてもバスケ部の部長の高梨先輩、美人さんだよねー、どこかのアイドルかモデルさんみたい」

「あ、新奈もそう思う? うん、背も高いし明るくて美人だし、男の子にモテそうだよ」

「そうだよねー、あれ? そういえば高梨先輩、彼氏がいるって聞いたことあるような」

「あれ? そうなの? そんな話本人からは聞いたことないけど……」


 なんと、高梨先輩に彼氏がいるのか、まぁあれだけの美人だ、いてもおかしくないよなと思った。


「うん、たしかサッカー部だったかな? そんな話を聞いたことがあるよ」

「そっかー、恋の話が大好きな新奈が言うなら、間違いないんだろうねー」

「あっ、ちょっとバカにしたでしょー、そうですよ私は恋バナが大好きですよーだ」


 新奈がぷくーっと頬を膨らませた。そんな彼女も可愛くて私は思わず笑ってしまった。


「あ、彼氏といえば、二葉はいないのー? 好きな人」

「……ええ!? わ、私は別に、いないかな……そ、そんなこと急に訊かないでよ」

「あはは、なーんか怪しいなぁ、実はこっそりいるんでしょー、カッコいいなって思ってる人とか!」

「い、いや、いないよ。カッコいいなって思う人はいるけど……風紀委員長の中川なかがわ先輩とか」

「ああ、二葉は風紀委員だったね、サッカー部の中川先輩か、たしかにカッコいいよねー」

「うん、まぁでもきっと彼女がいるんだよ、間違いない」


 中川先輩はサッカー部の部長だ。背も高くてカッコいい。いつだったか女の子と話しているのを見かけたこともある。まぁあれだけカッコよかったら彼女がいてもおかしくないよなと思った。あれ? なんかさっきと同じようなこと思っているな。


「ええー、諦めちゃうのー? もったいない。二葉だって可愛いんだからもっと積極的になっていいと思うけどなー」

「え!? い、いや、積極的って……あ、そろそろ休憩時間が終わっちゃう、行かないと」

「あ、逃げたなー、まぁいいや、続きはまたクラスでねー」


 新奈がブンブンと手を振っている。な、なんか新奈とはすぐ恋の話になってしまう気がする。まぁそれも楽しいんだけど。高校生女子なんてそんなもんだよね。

 

 休憩時間が終わるので、私は急いで体育館へと戻った。また練習に集中する。それにしても高梨先輩はカッコいい……バスケも上手いし、自分のことだけでなく、後輩のこともきちんと見ている。私もあんな風になりたいなと思った。あれ? これ二回目だな。


「やっほー鮎原さん、ちょっといい?」


 そんなことを思っていると、その高梨先輩に声をかけられた。


「は、はい! あんな風になりたいとか偉そうなこと思ってすみません!」

「え? なんのこと? まぁいいか。鮎原さん、次の試合でPG(ポイントガード)として出てもらうからさー、そのつもりでいてねー」

「……え!? あ、は、はい! 頑張ります!」

「うんうん、鮎原さんのドリブルのスピード、武器になると思うよー」


 そう言って高梨先輩がぽんぽんと私の頭を叩いた。そ、そうか、試合に出してもらえるのか、嬉しくなった私は、いつも以上に気合いを入れて練習に取り組んでいた。

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