一と二のシンクロニシティ
りおん
第1話「一斗と二葉と」
「ねーねー!
「だぁーっ!
ぐいぐい迫って来る二葉を押し戻し、俺はふーっと息を吐いた。
しかし二葉に見られていたのか……これはめんどくさいことになりそうだと、俺はちょっとどんよりとした気持ちになってしまった。
俺、
「ねーねー、誰なの!? あ、彼女なの!? キャー! 彼女よ! まぶしいわー!」
「な、なんでそうなるんだよ、違うよ、図書委員長の
「ああー、そういえば一斗、図書委員だもんねぇ、へぇー富岡先輩かぁー、可愛らしい人だねぇー」
「ま、まぁ、可愛らしいといえばそうだけど……」
先程からぐいぐい来ているこいつ……あ、こいつなんていうと失礼だと思われるかもしれないが、こいつでいいのだ。こいつは
「ふっふっふー、で? で? 告白はどちらからですか一斗さん!?」
「お前はそのおめでたい頭をどうにかできないのか……彼女じゃないって。図書委員で一緒なだけだって」
「あっ、お姉ちゃんに向かってそんなこと言うんだー、へぇー、そうなんだー」
「ぐっ、こういう時になるとお姉ちゃんであることを押してきやがるな……!」
……そう、二葉は俺の姉だ。ん? 姉が二葉で、弟が一斗。なんか名前がおかしくないか? それに先程どちらも高校二年生と言っていたのは……という疑問があるだろう。俺たちは双子の姉弟だ。
以前父さんと母さんに訊いたことがある。本当は俺の方が早く生まれる予定だったから、一番目ということで一斗、次に生まれる予定の女の子は二葉にしようと決めたらしいのだが、いざ生まれてくるとなぜか二葉の方が早かったらしい。でも父さんと母さんは名前を気に入っていたので、そのまま姉の二葉、弟の一斗と名前を決めてしまったとのこと。本当にややこしい。
「ふっふっふー、姉は弟のことはなんでもお見通しだからねー、彼女ができたらお姉ちゃんにすぐ言うんだぞっ!」
「なんでもお見通しならそこも気づくんじゃないのか……ていうか、なんで彼女ができたらお前に言わなきゃいけないんだよ」
「えー、当たり前じゃん! 可愛い可愛い弟の彼女がどんな人か、私がチェックしないといけないからね!」
「いや、チェックしなくていいんだが……まぁいいや、はいこの話は終わり。彼女ではありませんでしたー、残念無念」
「あーっ、また生意気な口きいてー! こいつめー!」
そう言って二葉が俺をポカポカと叩いてくる。まぁこんな感じで、双子の姉弟の仲はそんなに悪くない。一般的な姉弟がどんなものかよく知らないのだが。
双子の俺たちは、似ているかと言われるとそんなに似ていないかもしれない。顔は似ているところもあるが、俺は父さんに似ていると言われることが多く、二葉は母さんに似ていると言われることが多かった。性格は……先程のやりとりで分かる通り、二葉は明るくかなりおしゃべりだ。俺はそこまでではなく、どちらかというとおとなしいタイプかなと思う。身長は俺の方が十センチくらい高い。まぁ男だからそこは仕方ないと思う。
そんな俺たちは、先程も言ったようにバスケ部に所属している。バスケ部の鮎原姉弟というと学年でもけっこう知られている。まぁ双子だから目立つといえば目立つのだが。
クラスは小学校の時から別々になることが多かった。双子は同じクラスになりにくい。今も俺は二年三組、二葉は二年七組だ。青桜高校は二年生から文系と理系でクラスが分かれるのだが、数学が得意な二葉は迷わず理系を選んだ。俺は英語が好きだからなんとなく文系を選んだが、まぁ高校が一緒なだけで十分だろう。
「ふふふー、一斗も二葉も、今日も仲良しさんねー、ねぇお父さん」
「ああ、仲が良いのはいいことだ! あっはっは」
父さんと母さんが俺たちを見て笑っている。ここぞという時にビシッと意見をくれる父さんと、のんびり穏やかな母さん。そんな四人で暮らしている。
「さてと、お風呂に入ってこようかなー、あ、一斗、覗くんじゃないぞ~」
「なっ!? そ、そんなことするか!」
俺の頬をツンツンと突いて、二葉はお風呂へ向かった。う、うーん、めんどくさい姉だ……とか口にすると怒られてしまうので、言わない。でもほんとにめんどくさい時があるので仕方ない。
俺は自分の部屋に行って、勉強をすることにした。
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