第8話 入社2か月目 おいおいおーーーい…

 前任者となった先輩は本社へ異動していった。退職じゃないから、質問できるから、心配ないから、電話頂戴ね、と言って。


 が、世の中やさしくはなかった。


 どうしてもわからない。引継ぎ書類を見ながら、手順道理にこなしていくが、

この1を作業した後に出てきたボタンをどうしたらよいかわからない。

 これ、OKボタン押してOK?

 更新って書いてあるけど、押すが正解?キャンセルが正解?

 次の2の作業手順の画面が出ない、このボタンの試練を越えねば進まない

らしい…。


 行間を睨み、何か浮き出てこないかと思ったが、当たり前だが出てくるはず

がない。イレギュラーがわからない。わからないなら聞くしかない。本社に

電話をかけるのはハードルが高かった私は、駄目元で先制パンチ上司に聞いた。


 こんなことも分からないの?私に聞いても助けないって言ったじゃないと言われた。


 ……無駄に大きなダメージを負っただけだった。


 先輩が出てくれーと願いながら本社に電話をする。

…残念ながら先輩ではなかった。ドキドキしながら、取次をお願いする。

が、甘くなかった。


 あれ?聞いてなかったかな。あの子ね、結婚も重なってて、ちょうど本社に異動もあるからって5月いっぱい休暇を取っているからいないよ?伝えることでもある?

 とちょっと困った感じで本社の方に聞かれた。


 ……な、な、なんだってー。5月いっぱい…。聞いていませんよぉ。終わった…。心配ないなんて…嘘じゃーん、その場しのぎの言葉じゃーん、じゃーん…。

トホホ……。


 打ちひしがれたが、なんとかしないと仕事は進まないし、終わらない。繋がっているのは本社の方。解決出来るはずと思い、名前を再度名乗り、躓いている作業の件をお話しした。その方ではわからなかったが、わかりそうな方(後々わかったが、経理課の係長だった…。)に代わってもらい、再度説明して、なんとか解決に漕ぎつけ、2の作業に戻った。ボタン一つに長い道のりだった…。キャンセルが正解とは、なんぞや。トラップ?


 お昼の時、先制パンチ上司(お昼は自宅に帰る)の言葉を聞いていたパートさんに声をかけられた。雑用とか出来そうなことはコッチで上手く処理するから、経理の仕事を優先してね。そこは私たちではわからない所で作業してあげられないから。シンドイと思うけど頑張ろうね。後、お昼の休憩は忙しくてもしっかり取ろう、体がもたなくなるからね。と言ってお茶を淹れてくれた。


 あまりの仕事の進まなさに焦っていた私は、いつも通りお昼をちゃっちゃと

食べて、本当は仕事に戻りたかった。

 しかし、焦り具合が態度に出ていたのだろう、パートさんは、ゆっくり休まないと

上手くいくものも上手くいかなくなるから、お茶飲んで一息つこうよ。と再度言って、お茶をもう一杯淹れてくれた。


 お腹の中は、お茶でタプタプになりました。


 

 …忙しすぎると食欲ってわかないんだねぇ。



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