第2話 入社3か月前 やっと春は…
もう、駄目かもしれない。
大学卒業まであと2ヶ月という中、2階の自分の部屋の中で項垂れていた。
就職難というか絶賛氷河期という中、就活の終わりはまだまだ来ない。
今も最終面接までようやっと漕ぎつけた企業からお祈りメール、つまり
不採用の通知が来た。就活をスタートして以来そのメール、手紙しか送ら
れてこないし見ていない。
もう見るのも憂鬱だ。
かといって返事が来ないのもモヤモヤするという何とも情けない気持ちである。
あまりにも自分宛てのメールや手紙はそればかりなので、みかねた母は手紙の
通知確認の嫌な役割は代わってくれた。
なので、通知を最初に見たのは母だった。
上擦った声で1階から名前を呼ばれても打ちひしがれていた私は、黒光りする
あの虫が出没したか、懸賞か何かが当選したのか、どちらにしても自分には関係
ないと思い、やさぐれて聞こえなかったふりをした。
しかし、一向に呼ぶ声はやまない。再度聞こえなかった振りをしていたら、
しびれを切らした母が部屋まで来た。さすがに起き上がって謝ろうと思ったら、
ニコニコした母が目の前に来て採用だって!と紙を突き出してきた。
「宛先と宛名合っているの?」最初にでてきた言葉はそれだった。
一枚の紙を10回くらい裏表ひっくり返したり、誤字脱字がなかったり、
確認しても中々、現実なのかわからなかった。
最後まで確認作業に付き合ってはくれたが5回目くらいの確認から母は、
「あってる、あってる、もーいーでしょ?」と呆れ顔だった。それくらい
しても全く実感はわかなかった。
母は流石に付き合いきれなくなったのか、ほっぺたを抓られて現実よ
とニッコリ笑って今日はお祝いねーと1階へと戻って行った。
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