後日談 『彼シャツ』

 詩「ごめんね隼人くん。スポドリもらった上に、着替えも貸してくれて……。あ、ちゃんと洗濯して返すからね!」


 隼「あ、うん。……てか。ごめん、そんなものしかなくて。結構サイズ大きいでしょ?」


 詩「うん。大丈夫……って言いたいけど、そうだね。やっぱり隼人くんって体大きいもんね」


 そう笑った詩帆さんは、スウェットのウエストの部分をぎゅっと握っていた。


 当たり前だ。その華奢な体に対して、着ているのは俺のものなのだから。


 そしてそれは。


 紗「でしょー。隼人もダイエットしなくちゃね」


 隼「アホか。俺は適正体重だ」


 あはは。と笑った紗季。彼女もまたウエストの部分を握っていた。


 詩「でも、てっきり紗季の着替えがあるのかと思っちゃったよ〜。だって当たり前のように持ってくるんだもん」


 紗「ふふっ。ここに私の着替え置いてもいいんだけど……。まぁ、隼人も男の子な訳だし? 毒かなって」


 詩「あはは。確かに。隼人くん結構むっつりすけべだもんね」


 隼「当の本人を前にして、がっつりそういうこと言うな」


 詩「あ、ごめん。でも……隼人くんので良かった……」


 隼「ん? 詩帆さん?」


 詩「あ、ううん! 何でもないよ!」


 詩「てかさ、もしかして……」


 隼「ん?」


 すると詩帆さんは、俺に近づき背伸びをする。


 そして、華奢な息を耳に吹きかけると。


 詩「これって、『彼シャツ』、だったりするのかな?」


 隼「——っ!」


 そう言ってすぐに離れていく詩帆さん。


 紗「え〜、なに? 私にも教えて」


 詩「ふふーん! 紗季はまだ秘密!」


 そう言って、ふとこちらに顔を向けた詩帆さん。


 その魔性的な表情に、不意に心臓が速くなる俺であった。

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