後日談 『イッヌ』

 渋谷スカイに行った翌日の放課後のこと。


 詩「さぁ〜きぃ〜っ!」


 いつも通り、突然ハグされる。


 詩「ん〜っ! 紗季ニウム……えへへ」


 紗「……あのさ」


 詩「ん〜?」


 紗「これ、会うたびにやらなくちゃだめ?」


 詩「うん。最近これだけが生き甲斐だから」


 紗「え、ごめん、何かやだ」


 詩「え、ひど! ……てか紗季、香水変えたの? 何かリンゴとローズ混ぜたみたいな、大和撫子みたいな匂いする」


 紗「うん……包み隠さずいうと、隼人から貰った」


 詩「え〜! めっちゃ良いじゃん! そっか〜、あれから隼人くんとも仲良くやってるんだぁ〜。うんうん、めでたしめでたし!」


 紗「あはは。それでさ、今日は私からもお土産渡したくて……」


 詩「ん?」


 小首を傾げた詩帆。


 私はカバンから手のひら程の紙包を取り出すと、彼女に手渡した。


 紗「ごめん、何買えばいいか分からなくて。とりあえずキーホルダーなら邪魔にならないかなって。だから……っ!」


 次の瞬間、再びギュッとハグをされる。


 詩「ん〜〜っ!」


 紗「ど、どうしたの詩帆。紗季ニウムはさっき補充したばかりでしょ?」


 詩「……ありがと」


 紗「……っ。ふふっ、どーいたしまして」


 詩「ね、これ、開けていい?」


 紗「うん。開けてみて。まぁ中身は……」


 ……。


 紗「一応、私とお揃いなんだけど」


 詩「……」


 詩「かわ……かわぁ〜っ! 何これ、イッヌ!? ハチ公みたいなイッヌじゃん!」


 紗「あはは。ハチ公であってるよ。私もよくわからないけど」


 すると、彼女はスマホケースにキーホルダーをつけ、頭上に掲げる。


 詩「ふふーん。えへへ♪」


 そんな曇りなく嬉しそうな横顔に、プレゼントしてよかったな。という気持ちと、何だか私も嬉しい気持ちになった。


 詩「紗季、ありがと。大切にするね♪」


 紗「うん。ありがと、詩帆」


 その後、彼女からコンビニでアイスを奢って貰った。


 家に帰ると私もお揃いのハチ……。


 いや、イッヌのキーホルダーをスマホケースに括り付けた。


 ちょっとだけ賑やかになったスマホに、思わず鼻を鳴らす私だった。


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