ひと握りのしあわせ
ミハナ
最終話 ひと握りのしあわせ
手を握りあったまま教室のドアへと到着した。
ぎゅっと力が互いにこもる。
そして二人して目配せして、アイツがドアを開けた。
「お! お前ら遅いんだよ! 聞いたよやっと付き合いだしたんだって! 」
クラスで一際元気な男の子が僕たちの前に立つ、そして後ろを振り返る。
反発ややっかみや否定的な目をしていると思い込んでいたクラスメイトたちは。
皆温かな瞳の色を浮かべていた。
アイツが僕を庇うように一歩前に出る。
握った手を見せつけるように頭上に掲げられば、自然僕の腕もつられる。
がっしりと繋いだ手にクラスメイトたちは皆口々に良かったね、と言ってくれた。
そうゆうことだから、もうコイツに手出しは厳禁だからな! とアイツは言って、皆の前で高らかに宣言してしまった。
僕も、怖々と、でもこくりと一つ頷く。
そうすると次々にクラスメイトがこっちにきて、僕らは揉みくちゃにされた。
「いつ付き合うのかとオレらずっと思ってたんだぜ? 」
クラスの中心人物たちが一様に頷きだし、本当に良かったなあと更に揉みくちゃにされる。
気持ち悪くないの、と思わず僕が言うと、皆は普段の二人を見てればわかると口を揃えて言う。
「今日はお祝いパーティだな! 皆でカラオケ行こーぜ! 」その声に皆して、いいなと声が上がる。
もしかしたら僕たちをダシにして騒ぎたいだけかも知れない。
でも嫌われるのも覚悟していた僕には、受け入れられたことが何より嬉しかった。
アイツは時間をクラスメイトの人気者たちと決めている。
一度もその手は離されなかった。
ホームルーム始めるぞ、と先生が入ってくるまでは。
皆蜘蛛の子を散らしたように席に戻っていく。
先生が皆が席に着いてからホームルームを開始した。
僕は今まで握っていた手を眺め、ぎゅうと強く握りしめる。
昨日も嬉しかったけど、今が一番実感出来た。
僕たちは、これで正式に付き合い始めたんだと。
先生の目を盗むように回されてきた小さな手紙を開くと中には、カラオケの場所と時間が書いてあった。
僕らのお付き合いはこうして始まったのだった。
ひと握りのしあわせ ミハナ @mizuhana4270
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