シーズン2 二章 【VS怪盗猫&十二支刻獣編】

第62話 唯一無二は独占できない、美しく分け合えよう

 どうも、ユミナです。現在私はクジラの上にいます。クジラに乗って、航海を始めました。目的地は『サングリエ』。アシリアさんを自宅兼仕事場に送り届けるクエストを受注中。


 クエスト名は《聖女護衛》。意外にもシンプル。徒歩で移動しては時間がかかってしまう。それに、巨大人魚姫でもあるアクエリアス、猛ダッシュで現れた聖女アシリアちゃんの影響で、プレイヤーは皆さんは大慌て。逃げる形で海から移動している。潜水艇では味わえない水平線の景色が目の前に広がっていた。


 もしかして、信じていませんね?

 トンデモゲームプレイをしているから、嘘が混じっても騙せるだろうとお考えの方もいませんか?







 ............いや、事実です。ついでに言えば、仁王立ちの格好になっています。


「ご主人様、失礼いたします......!!」


 カプリコーンが私の首筋を舐める。


「ユミナの言うとおり、手を舐めてる」


 左手はレオの口中。


「お嬢、頑張ったからお礼」


 右手はタウロスにマッサージされてる。


 どっちもやり方は違うけど、手がほぐれていく。


「やはり、あたしは足が好きですね」


「......これも修行......心を強く持て、アシリア!!」


 両足には新旧聖女がしがみついている。

 私は自分の従者プラスアルファに拘束され、身動きができない。

 唯一、動かせる口には刻一刻と危機が迫っている。



「くっ! わ、私......屈しない」


「もう一段階、おもてなしをさせていただきましょう♡」


 海の景色を見えないように立っているのはヴァルゴだった。


 歩み寄るにつれて、鳥肌が立つ。


「そんなに怯えられると、流石の私も心が痛むのですが」


 自分の胸当てに手を置き、ため息を吐くヴァルゴ。


「お嬢様は若い子がお好きなのですね」


「何を言ってるの?」


「行く先々で女性を口説き、関係を持ち。古い人は蔑ろにされる......」


「蔑ろにした覚えはないけど......」


 ヴェルゴとキスするまで詰まる。


「年増は飽きたのですか」


「ヴァルゴは年増じゃないけど」


「石化状態を抜きにしても、遥かの年齢差があります」


「私は別に歳にこだらわないよ」


「えっ......!?」


 目を見開くヴァルゴ。


「大事なのは誰を好きになった、じゃないの」


 息が荒くなるヴァルゴ。瞳孔は更に開き、頬は上気に染まっている。獲物を襲いたい、そんな狂気な顔になっていた。


 私の唇にヴァルゴの手が触れる。


「お嬢様は、本当に人を誘惑するのお得意ですよね」


 ドキッ...! 


 私の表情にニヤけるヴァルゴ。


「何を想像したのですか?」


「......ヴァルゴには関係ない」


 指は移動し、私の頬に添えられる。


「お嬢様の可愛いお顔、ぐちゃぐちゃにしたいです」


「息を荒げながら、何口走ってるのよ!?」


 んっ......!!


 唇を塞がれた。私を見ず、目を瞑ったまま。


 ヴァルゴの舌が私の舌に絡まる。


「......お嬢様ぁ」


 力が抜ける......

 こっちまで熱くなる。


 離れた唇。息を整いたいが、待ってくれない。

 ヤバい目をしているヴァルゴ。


「ハァハァ。このままずっーと、一緒に......気持ちよくなりましょう♡」


 舌なめずりが頭から抜けない。


「............あ............うぅ」



 上空から水の塊が降ってくる。私にご執心の従者たちも反応できず、ズブ濡れになった。


 全員が先頭に視線を変える。




「貴方たちっ!!!!! ワタクシの上で何、卑猥なことやってるのよ!!!!!」




 クジラが喋った。事実を知らない人からすれば、頭がおかしくなったかと憐みを向けるだろう。

 クジラことアクエリアス。アクエリアスが自身にかけたスキル、形態変更モデリングで形態をクジラにしてくれ私たちを乗せてながら移動してくれた。


「アクエリアス。お嬢様に水をかけるとは、いい度胸」


 先程のヤバいヴァルゴは消え、凍てつく目になる。これから欲を満たすための実行を中止されたのだ。ご立腹な様子のヴァルゴ。私は私で助かったと心を撫でているのは秘密。


「潮吹きとは、貴方も欲求不満なんですか」


「イモナちゃんに夢中で、知能低下した? これは呼吸してるの!!」


 クジラの頭から水が出るのって、呼吸だったんだ。初めて知ったけど、シチュエーションが奇妙。


「それに、誰がイモナちゃんに惚れるのよ。勘違いしないで!!」


(これはチャンス...!!)


「立つのに疲れたから、座らせて」


 未だに私の体を支配している従者は、冷静になり、素直に頼みを聞いてくれた。

 クジラの背に大の字。これも経験するとは、世の中は何が起きるのかわからない。


「今度は、私が」


 背中にいたカプリコーンは私の唇にうるっとした瞳を向ける。


「次は、あたいだ!」


「ここはアタシが、ユミナ様の唇を貰います。アシリアさんもご一緒にどうですか」


「えっ...!? そんなの......まだ......キスは初めてで心の準備が」


 カプリコーンとタウロスは我先にと群がる。動物的本能なのか、獲物の私ユミナちゃんはなす術がない。アリエスはアシリアさんの腕を掴んで、一緒にイこうとしている。常軌を逸した行動を取ったアシリアさんは困惑している。口や行動は即できるが、いざとなると足がすくむタイプとみた。


 因みにヴァルゴは冷めたと言うことで水面を走っている。意味がわからない。


『サングリエ』到着まで時間はある。私はみんなの機嫌を回復させるために食糧となっている。

 だよ。決して、自ら進んで喰べられる趣味は持ち合わせていない。













 ◇


 クジラ先頭部分。


 三角座りで水平線を見ている影が一つ。妙齢な女性。シスター服を数多の試練を潜り抜けてきた厳格な元エクソシスト。今は現聖女アシリアの教育係兼司教兼孫でもカトレア。隣には、白衣を改造した衣装を身にまとう幼い少女。生まれて初めて見る海の風景にワクワク状態。周りにあるモノ全てが少女には宝石のように煌めく存在。そんな好奇心旺盛な少女、名はアリス。


「ねぇ、かとれあおばちゃん」


 音声言語はあっているが、アリス自身は記憶は持っていない。なので、辿々しい発音をしてしまう。

 カトレアは、アリスの話し方に一切も疎ましいとは思わず、寧ろ溺愛している。


「何かしら、アリスちゃん!」


 端的に言ってカトレアは超元気である。初孫でもあるアシリアの昨今の行動は自分が厳しく育ててしまった影響だと考えている。だからこそ、孫候補のアリスには可愛がる方針に変更した。


「うしろでままたち、なにやってるの?」


 純粋無垢な瞳で質問する。即答はできない。後ろの出来事。自分が遠い目で水平線を眺めている原因。

 まだ、アリスには早い。だが、興味を持っている以上、言葉を選ばないと過去の過ちを繰り返してしまう。


「アリスちゃんのママは多忙でね。お仲間の皆はママの疲れを取るためにマッサージしているの」


「まま、たいへんだった。ありすもてつだう」


 カトレアはアリスを自分の所まで手繰り寄せた。


「アリスちゃんのママの疲れは、相当な力が必要なの。アリスちゃんはまだ、早いかな」


 しょんぼりするかと思ったが、元気一杯の声を出すアリス。


「わかった。ありす、がんばる!! がんばって、ままの、つかれをいやす!!!」


「いい子ね、アリスちゃんは。どっかのアホアシリアとは違うわ」


 前後で表情と言葉を気づかれずに話す。未来ある少女には明るく、手遅れの初孫には残念さを。それを知る者は誰もいない。

 いや、現在単位が変更している一匹だけは例外。


(この方も苦労しているのね............はぁ〜)

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