星霊女王ユミナ ～ユニークNPCを助けまくったら、女性に囲まれる女王になってた～

第60話 笑顔と言葉は大事

「ゲェ、ヴァルゴ」

「再会早々、酷いですね。アクエリアス」

　人間サイズになったアクエリアスは、対面にいるヴァルゴに難しい顔を出していた。

　事情を知らない私はアリエスに聞いた。

「なんで、アクエリアス。あんな顔してるの？」

「ユミナ様も経験済みだと思いますが、アクエリアスの基準に達していない者は容赦無く罵倒されます」

「そうだね、私も言われたよ」

「クソッ。あの魚類が......おほん。それは置いときます。アクエリアス自身は”美”に対する熱量が半端ないのです。自分磨きをしていない者が、何努力しても無意味だと、昔からずっと言っていました」

「あー......なんとなくわかる」

「ただ、例外はあります。自分がいくら自身を磨いても到底勝てない存在がいることに」

「さすが、私のヴァルゴ」

「ヴァルゴ自身は知らないですけど。アクエリアスが”美”に対して目の敵にしているのを」

「どっちも......ドンマイだね」

「............ところで、ユミナ様」

「何かしら？」

「怒ってます」

　私はアリエスの頭を撫でた。

「アリエス、良い子良い子。よしよし！！」

「ごめんなさい」

「何言っているのよ、私はちっとも怒っていないわ。ほら、レオも」

　私はレオの前に移動し、手を出す。

「貴方の大好きな私の手よ。舐めなさい」

「いや。今日は、ちょっと......体調がな」

「手、舐・め・て！！」

　目を細め、ニコニコの私の顔に屈したレオ。口に私の手を頬張る。

「どうしたの？　いつもみたいに口の中で舐め回さないの」

「ごめん......」

「もう、レオもアリエスと同じで何で謝るの？　私に何か後ろめたいことでもあったのかしら」

　正座しているレオとアリエス。見下ろしながら私は二人に質問した。答えは返ってこなかった。

「沈黙は肯定って捉えていいのかしら」

「「............」」

「何度も言っているけど、私はちっとも怒っていないわ。二人の演技が素晴らしいのが分かっただけでも今回の騒動で手に入れた貴重な情報だし、従者の罠にハマったのは私だし、大切な宝物を使って、ヴェラを脅して私を海底都市に向かわせたり、大損は本当みたいだから、主である私が返済するしかないし、それとは別にヴェラの部屋をこんなに破壊して、修理費も当然、主でもある私が支払いしないといけないし、ほー............んとうに何一つ怒っていないから、安心してこれからも私の従者になって欲しいんだな〜！！」

　右手で二人の頭を撫でる。

「罰が正座だけって、なんて懐の大きい人なんだろう、私！！」

　アリエスもレオも正座に慣れていないので足をモジモジさせている。

　NPCも戦闘以外で痺れを発生させるのかと、考えてしまったが記憶の海に流されてしまった。

「あの〜　ユミナ様」

「何？」

「ヒィッ！？　えっと、ヴァルゴは」

「なんて？」

「ごめんなさい、もうしません」

「なぁ、ユミナ」

「えッ！」

「すみません。もうしません」

「少しヴェラたちと話すから、これ置いとくね」

　二人にも見せてあげないと。海底都市なんて珍しい場所に行ったんだから。

「ユミナ様っ！？！？！？　死んでしまします！！」

「ユミナ、勘弁してくれ。悪かったって！？！？」

「海底都市で拾った貝殻。見た目に反して重いのよ。あと、良い匂いするらしく、二人にはお礼しないとね、膝に置いてっと」

「「ギャアアアアアアアア！！！！！！！！！！！」」

　未だに睨んでいるアクエリアスと意味がわからない顔を出しているヴァルゴから離れ、ヴェラの元へ歩いた。

　ヴェラはというと、ミランダと再会し抱き締めあっていた。

　二人が同じ空間にいることで、よりヴェラとミランダが姉妹の関係だと如実にわかる。

　違いは服装くらいかな。片やカジノに相応しい黒いドレス。片や海賊の服装。二の腕が剥き出しになっている袖なしの礼装外套。外套はミランダの髪と同じ鮮やかな真紅。つばの広い三角帽子。腰には剣帯。本当にザ・海賊って風貌だった。

　二人は私に気づく。

「あの時、ユミナを手を取って良かった」

「ミランダ......」

「ユミナ様」

　ヴェラが謝罪した。

「この度は、申し訳ございませんでした」

「いえ、これも私の従者が引き起こしたことですから」

　後ろから断末魔が聞こえるが私は無視した。

「ですが、ユミナ様の従者の行動で、こうして姉に再び会えました」

「それじゃ、お二人とも私はこれで失礼します」

「ユミナ、君には返しきれない恩ができた。いつでも頼ってくれ。君の頼みならどんなことでもしよう」

「『どんな』......」

　ミランダがため息を吐く。

「一応、言っておくが......求（・）め（・）ら（・）れ（・）て（・）も（・）応えれないぞ」

「きゅ、急に何を言うのよ、ミランダ！？　まるで、私は欲望に忠実な人みたいな言い方」

「君に体を預けるのは少し待ってくれ。用事を全て終わられ、身軽になったら準備するから」

「いや、私は別にミランダの体が目当てで助けた訳では......」

「......お姉ちゃん」

　ヴェラがミランダの海賊服を引っ張る。血の気が引いた顔だった。

「お姉ちゃんは、ユミナ様と何があったのですか？」

　まーもっともな質問だな。そして、この後の展開は容易につく。

「ユミナとは、一晩、一（・）緒（・）に（・）寝（・）た（・）仲（・）だ。そして、私を救ってくれた恩人だ」

「ミラ......」

　酷い誤解が生まれた瞬間。急いで修正しようと口を開いたが、後ろから口に手を置かれた。

　見覚えのある美しい手。何度も触ってきた私だからわかる。私の口を押さえている手の主人が誰なのか。

「ミランダ様、ヴェラ様。私共（わたくしども）はこれで、失礼します。少々、私用が発生しましたので」

　私はヴァルゴに捕獲され、ヴェラの部屋を退出された。

「嵐のような存在だな、ユミナは」

「あの、お姉ちゃん。さっきの話を詳しく聞きたいのですが」

「いいぞ。ヴェラの淹れたコーヒーを飲みながら語ろうかな」