第57話 私の必殺技!!

ユミナもまた、目の前のグッダグ将軍に集中した。名前に”将軍”が含まれているだけあって、剣戟が始まってからの隙がない。婥約水月剣プルウィア・カリバーがあるから、今のところ五分五分。


 突きの構えを取るグッダグ将軍。時間稼ぎさせ、すればいい。婥約水月剣プルウィア・カリバーを構え、パリィの......あれ?


 両手に持っていたはずの婥約水月剣プルウィア・カリバーがいつ間にかなくなっていた。同時に自分の腹部に穴が空いていたことに気が付く。倒れるまではいかないが、キツいのが本音。


「【海突トライデント】」


 つかつかと私の方へ歩いてくるグッダグ将軍。


「今の攻撃で倒れなかったのは賞賛する。だが、もう終わりだ」


「貴女には恨みはないけど......計画のために戦闘不能になってもらうわ」


「言う立場が違うのではないのか。これで終わりだ、【海龍ドレイク】」


 一直線に向かう蒼い光の矢。

 衝撃で発生した地面の石ころは風圧で吹き飛んでいく。蒼矢の矛先でもあるユミナの周りは煙しかなかった。


「何っ......!?」


 煙の中にある影は立っていた。自分が放った【海龍ドレイク】は対象に突きの構えをすることで発動できるスキル。必中のスキルであり、威力は絶大。もしも【海龍ドレイク】の攻撃を受けても尚、立ち上げる者がいるならそれは人にあらず。


 煙はなくなり、姿を現した囚人の女。目の前の存在にグッダグは冷や汗をかく。


 眩い白銀が女の周りに集約する。女の前には少し大きめのナイフがあった。紅く漆黒を纏う刃。ナイフで煙を斬る。煙が払われたことで女の両サイドに不可思議な模様が浮いていた。地上には海藻に似た物があるとか、”ショクブツ”と言うとか。ここにきた海賊たちに見せてもらったことがある。囚人の女を守るように置かれている二枚の何かは、その”ショクブツ”と類似している。同時に腹部が完全に塞がっていることに驚愕した。自分は夢でも見ているのか、そうグッダグは自身に言い聞かせていた。


 何処までは本当で何処から夢だったのか。もう確認する余裕がない。


「微調整しないと。てか、これ......使って良いのかな」


 目の前の女はこちらを警戒しているが、自分を見ていなかった。持っているナイフに話しかけているように見えた。何か仕掛けてくる。長年の経験から断言できる。あのナイフはだ、と......



(タウロス、なんてものを復活させたのよ)



戰麗アドバンス』になりつつ、アクセサリーの『薔薇襲の荊乙姫ブラック・ローズ』を使い、直撃してもなんとか耐えれるととができた。



 テキストに記載されていた通りに、私が受けたダメージ量に合わせた花びらの盾が生まれた。”1”ダメージ=”1”秒が活動時間。受けたダメージ量で換算すれば、10000秒は私の両サイドを守ってくれる盾が出来上がった。



 にしても、タウロスには感謝するしかない。実は、グッダグ将軍の攻撃が強力すぎて『薔薇襲の荊乙姫ブラック・ローズ』で全てをカバーはできなかった。そこで、タウロスが復活させた裁紅の短剣ピュニ・レガを装備した。



 【裁紅の短剣】ピュニ・レガは自分のHPを吸収、もしくは受けたダメージ分。つまり消費したHPをナイフに宿すことができる。蓄えられたHPを糧に発動できる能力がある。それが、【魔魂封醒フリーダム】。



 どうやら、裁紅の短剣ピュニ・レガ専用の攻撃手段らしい。しかし、私とクイーンは本当に運命を感じる。実は、私は一度だけ【魔魂封醒フリーダム】という必殺技を体感している。


 クイーンの持つ破王双藍セウカ金始刀【閃】コーナ。この二つの武器はクイーンだけがクリアしたユニーククエスト《決意なる三位一体トリニティー・クロス》の報酬武器らしい。中身は教えてくれなかったけど、報酬の武器はオンリーワンの性能をしているので、情報屋や他のギルドのプレイヤーなどが押し寄せてきたとか。


 よもや私も【魔魂封醒フリーダム】の力が宿っている武器を使うことになるとは......これも運命なのかな。



 【裁紅の短剣】ピュニ・レガに蓄えられたエネルギーで十分だったのか、発動開始の画面が出た。後は、私が音声を発するのと、発動条件を揃える必要がある。



 後ろへジャンプする。追撃を行うグッダグ将軍を『戰麗アドバンス』で強化された足と『薔薇襲の荊乙姫ブラック・ローズの花びらの盾で対処。武器を使っての防御もできるが、グッダグ将軍は発動した【海突トライデント】を警戒してのこと。手持ちの武器でグッダグ将軍の攻撃を回避できるのは裁紅の短剣ピュニ・レガだけ。【裁紅の短剣】ピュニ・レガが手元を離れれば、今度こそ詰む。最悪負けてもいい。私は少しの時間を稼げれば良いだけ。


印電量ライジング】がグッダグ将軍の横っ腹に直撃。怯んでいる隙に距離を確保した。十五メートルだが、問題ない。もっと距離を離した状態で【魔魂封醒フリーダム】を発動すれば、グッダグ将軍は死んでしまう。


「............将軍、一つアドバイスします。防御に全力を注いでください」


「何っ?」


魔魂封醒フリーダム————————起動」

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