第42話 フェロモン全開、ユミナちゃん!
突然ですが、皆さんは目の前に就寝中のドラゴンがいたら、どうしますか?
そっとやりすごしますか。
寝込みを襲いますか。
きっと色々な方法を取られると思います。
しかし、これだけはおぼえてほしい。
眠りを邪魔されたドラゴンは、非常に気性が荒いと言うことを......
黒銀色のドラゴンが空を支配していた。翼を大きく羽ばたかせ、地上にいる小さい者を見下している。自分の眠りを妨げた奴は、いかなる存在だったとしても攻撃する。
たとえ、昔、自分を封印した者と同じ匂いがしていたとしても......
「なんで、私ばかり攻撃されるのよ!!!!!!!!!」
「お嬢様が何かしたんですよ」
「ヴァルゴ!!!! 終わったら覚悟してなさい」
「それよりも、終わりましたね」
「何、諦めムードになっているのよ」
がらにもなくヴァルゴが弱気モード。視界が悪いことで方向感覚も狂っている。上はドラゴンがブレス攻撃。下、つまり私たちが今いる地上は猛吹雪。完全に詰んでいる状況である。
加えて、ヴァルゴはドラゴンにあまりいい思い出がないらしく、いつになく弱々しい様子となっている。
「レオ!!」
「ほい、来た!!」
私の合図に反応したレオ。空に向かって跳ぶ。ドラゴンよりも天高く。巨大な斧を構え、ドラゴンの頭目掛けて距離を詰めた。
「クッ......」
「レオ!?」
ドラゴンの首はレオの斧を弾いた。硬いのか皮膚が分厚いのかわからないが、ダメージはさほど入っていない。
しなやかに動く尾がレオに迫り、吹っ飛ばされた。地上は天然の雪クッション。合わせて即座に防御の態勢に入ったレオは直撃しても行動を開始できるタフネスを持っていた。
「大丈夫?」
回復魔法をレオにかけた。
「平気だ。それよりもユミナだけを狙う理由はなんだ」
みんなと合流後、対策と役割を再確認している最中に、件のドラゴンは私たちの目の前に降り立つ。
漆黒と銀白の体色、有機的なフォルム、機械的な翼、下顎から伸びる一対の鋭利な牙を持つ一体の龍。
ゲームではお馴染みのモンスター。それがドラゴンという種族。雄々しく堂々たる姿。群れを嫌い、我が王道を征く最強種の生物。
巨体全てで相手を威圧する。強烈な迫力、如何なる者に牙をむく戦意。そして、
私はため息まじりで吐いた。
「どうして?」
ドラゴンの素材なんて貴重な部類。でも、さすがに寝ていたドラゴンを襲う外道行為はしない。私の提案にみんなが賛同し、ゆっくり気付かれずに進んでいたのに......
クイーンが私に問いた。
「真っ先にユミナを攻撃したが、何したんだ?」
慌てる私。
「ほー...........っんとうに知らない。全く身に覚えがない!?」
「しかし......」
理由を考えている間、第三者の声が放たれた。
『よくも』
貫禄がある渋めの男性の声。
えっ、喋った!?!? なら、話は早い。
「ねぇ、ドラゴンさん。会話しましょう!!」
『会話?』
「そう、会話。コミュニケーション。種族が違っても言語理解があるなら話し合えるから」
『一度だ』
「OK、分かった。早速なんだけど、私、あなたに何かした?」
『その質問に答える前に、我の質問に応えろ。貴様はあの賢者と縁者か』
あの賢者......思い当たる人物は一人しかいない。
「もしかして、エヴィリオン・ヴィクトール?」
『そうだ、奴に封印された』
「私の魔法の師匠です」
ケンバーの名前と私の師匠の言葉で、ドラゴンは烈しい怒りを放つ。
ケンバー、何したの???
『そうか、奴の弟子か......通りで同じ匂いがすると思った』
服を嗅ぐ。ゲームだから匂い機能は搭載されていない。過去の私が実証済み。
モンスター視点では、感知されているのかしら。
ヴァルゴが後ろから抱きついてきた。
「大丈夫ですよ、お嬢様」
あのさぁ、今戦闘中なんだけど......
「お嬢様の香りは、人を魅了させる力があります。心配しないでください」
全く持って心配できないんだけど......
ドラゴンさんは、ヴァルゴとレオに視線を向けていた。
『ほお、貴様......良くそのような強者達を従えているな』
私は腕を広げた。
「私の自慢の従者だよ!!」
私の言葉に照れ始めるヴァルゴとレオ。
『奴とは、違うか......面白い』
うん? 何が???
『貴様、名は』
「ユミナだけど......」
『では、ユミナ。我と契約しろ』
「えっ!?」
突然の契約イベント!!!
「目的は? 急すぎる」
『変な考えをせんでいい。我はユミナに興味があるだけだ』
「それだけ?」
『ユミナには我の力を最大限に活用できる器を有している。人の身で、どこまで我の力を扱うか見てみたくなった』
「う〜ん。嬉しいような嬉しくないような......複雑だな〜」
『安心しろ、寝込みは襲わん。奴と違ってな』
本当に何したの、ケンバー。
振り返り、三人に助言を求めた。
「ねぇ、みんなどうしよう」
「いいと思いますよ。龍と契約なんて早々できることではありません」
「戦ってみたいから、訓練相手にできるか聞いてくれ」
「私の彼女はすごいな」
一人肯定。一人は肯定寄りの戦闘狂爆発。一人、遠い目をしている。
ドラゴンを見上げる。
「分かった、契約しよう。えっと、名前は?」
『ユミナが決めろ』
「じゃあー......」
私が熟考している間にヴァルゴが前に出た。
「ドラゴンよ、先に言っておく」
『どうした、強き者よ』
ヴァルゴは申し訳ない表情を浮かべる。
「ドンマイ」
『はぁ?』
「決めた!!!!!! 貴方は今日から、
ドラゴンだから、ドラン。うん、なかなかにいい名前。私の叡智が輝いた瞬間ね。
「どうしたの? ドラン」
命名した時からドランの顔がむず痒い顔とものすっごい嫌な顔が入り混じっていた。
『はぁ〜 これも何かの縁だ。ユミナとの契約が終わるまでは我は、ドランだ』
「だったら、せめて嬉しそうな顔をしてよ」
『少し、時間をくれ......』
良くわからないけど、突発的なイベントでドラゴンと契約しました。
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