第40話 何も知らないユミナちゃん〜

 ヴァルゴとクイーンは黙って、凍る洞窟を歩く。クイーンは初めこそ、驚きしかなかった。女性でも魅了する容姿を持つヴァルゴを見てしまい、心がざわめく。


(やばいな......ユミナが堕ちていないか心配だ)


 クイーンは落ち着かない。ユミナの話が本当なら、自分と仲良くするために『オニキス・オンライン』を始めた。数々のスレが立ち、数多の女性が前を歩く女騎士にメロメロになっている。女騎士の主でもある恋人のユミナは当然、数多の女性よりも親密な関係。完璧容姿の女騎士の色香に惑わされていないか心配しかない。


 クイーンは心の中で恋人の心配する一方で----


「はぁ〜」


 長いため息。よく息が続くなっと変な方向に関心するクイーン。


「あの、どうかしましたか?」


 振り返り、クイーンを見るヴァルゴ。

「すみません。突然、はしたない行動をとってしまい」


「あっ、いえ。私は特には......」


「実は、クイーン様に確認したいことがありまして」


「ユミナには聞かれなくない内容ですか?」


 クイーンの問いにうなづくヴァルゴ。


「単刀直入に言います。クイーン様がお嬢様のですか?」


 しばしの静寂。


 返答に困るクイーン。


 頬が赤く染まるヴァルゴ。


「えっと......はい。そうです」


 低い声。


「わかりました」


 クイーンに近づくヴァルゴ。


「あの......ヴァルゴさん!?」


 ユミナはいつもこんな綺麗な美女の顔を拝んでいるのか。ゲームの一キャラに変な感情を抱くのはどうかと思うけど。正直、同じ女性として勝てない。自分がどんなに女に磨きをかけても勝てない溝がある。リアルにヴァルゴのような女性がいれば、白陽姫はせつなとカップルにはなれなかっただろう。


「ま......」


 聞き取れなかった。


 クイーンの瞳をしっかり見るヴァルゴ。


「負けません!!!!」


「『負けません』?」


「今はクイーン様がお嬢様の一番ですが、いつでも狙っていることをお忘れなきを」


 ヴァルゴの顔を見て、クイーンは納得した。


 目の前にいる顔を真っ赤にしている女騎士さん。さっきまで凛々しい年上の女性の印象だったが、今の女騎士さんは一人の女性に恋する乙女そのものだった。


(ヴァルゴさんは、ユミナのことが好きなんだ)


 主として敬愛し、一人の女性として愛している。


「私は......運が良かった」


「羨ましいです」


「でも......それだけですよ」


「??」


「きっと、アプローチはヴァルゴさんの方が進んでいます」


「えっ!?」


「だから......」


 クイーンはヴァルゴを真剣な目を向ける。


「私も負けません。絶対に椅子は渡さない!!」


 目を見開くヴァルゴ。自然と口角をあげる。


「悪くありませんね」


 クイーンとヴァルゴに迫る多くのMob。白熊や氷に覆われたムカデなどさまざま。


 二人は武器を構える。


「まずは、どっちが強いか競うのは」


 クイーンの提案にヴァルゴものる。


「まずは一勝!!」


 モンスター達に向かうは、獲物を狩ろうとする肉食獣。モンスターたちの思考ルーチンに逃げる手はない。繰り広げられるのは、一方的な蹂躙。黙ってモンスターを討伐する、理性的な行動。だが、無双状態の女性二人の理性とはかけ離れた行動を見てる。キモい高笑い、ライバルと戦うモンスターを横から奪い、キルスコアを稼ぐ。








 左側の道を歩いている私。


「ねぇ、レオ。変な声、聞こえない?」


「うん? そうか、モンスターの鳴き声だろう」


「そ、そっか。気のせいだよね。さてと、先に進みますか!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る