第31話 解放された獅子座は、人の言葉を話すメスライオン

「えっと、待ち合わせは「シュヴァル」か」


「サングリエ」でも良かったが、ある意味ズルで到着した。理由を話すと色々めんどくなる。白陽姫ちゃんなら問題ないと思うけど、念の為。現状ちゃんとクリアしたのは「セルパン」まで。ならば次の街でもある「シュヴァル」で集合となった。





「動けない......」


 即、ログインしたのはいいが......大の字の私の体は全くいうことが効かない。何故かって、それは......





「お嬢様。ダメです、そこは♡」


 夢の中で私とナニをやっているのよ、ヴァルゴ。


「ユミナ様......いじめます♡」


 アリエス、あとでお仕置き決定。


「ご主人様、イケません♡」


 あの〜 カプリコーンさん、何が???


 寝息を立てている私の従者達。


 右腕にヴァルゴ、左腕にアリエスが私の腕枕をされて寝ている。カプリコーンは足の間で体を丸くしながら就寝している。


「うん? フェーネ」


 額にはフェーネがいる。当然だけど寝ている。


「タウロス......助けて」


 主の悲痛な救援は鍛治師には聞こえていない。


「タウロスは今......工房にいるぜ」


 聞き慣れない声が聞こえた。


 顔を起こし、私の目に入ったのは百獣の王の名を関するライオンだった。


「えっと......どちら様?」


 ライオンが人語を喋るのはこの際、疑問に持たない。ゲームならそんな設定なんだろうっと。

 部屋の隅に横たわっている等身大のライオンは起き上がり、ベットまで近づく。


「すまんな、こっちの方が好きでね」


「もしかして......レオ?」


「あぁ、よろしくな、ユミナ」


「......もう体は平気?」


「大丈夫だ。ありがとな、助かったよ」


「私は私がしたいことをした。それだけ」


 レオは周りを見渡す。


「ヴァルゴやアリエスが気にいるのもわかる。なぁ、ユミナ」


「うん、何?」


「オレは剣闘士を生業にしていてな。何かの縁だ。ユミナを守り、戦う戦士になる。いいか?」


 口角を上げる。


「いいよ、存分にその力、私のために奮って」


「承った、ユミナ」


 レオは私の右指五本を口に含んだ。


「ち、ちょっと!?」


 レオの口の中で私の指が踊らされている。甘噛みされる指。ヌルってした感触、これはレオの唾液?


 私の指から口が放たれる。指に牙の跡がついていた。HPも少しだけ減っている。


「不快になったらすまない。これがオレの愛情表現なんだ、すまない」


「あーいいよ、いいよ。それよりも......気をつけて」


「『気をつけて』??  あ゛っ゛」



 レオが見上げる先には、レオを見下すヴァルゴとアリエスが。カプリコーンはいつの間にか端で立っていた。


「何、お嬢様を傷物にしてるんですか?」


「アタシだってやってないことを」


 なんかもう、怒っているベクトルが違う気がする。声に出して間違えを正したいが二人の耳に入らないだろう。


「はぁ〜 【形態変更モデリング】」


 レオの体が煙くなる。次第に煙は晴れ、中から三メートル超えの女性が出現した。

 二人を見下ろすレオ。顔は愉快そのものだった。


「相変わらず、ちっこいなお前らは」



 睨み合う三者。



「はい、そこまで」


 このままだといつもの喧嘩が始まる。なので強制的に終わらせた。


「レオ、一個聞いていい?」


「なんだ、ユミナ」


「さっきのライオン姿、乗れる?」


 豪快な笑い。


「いいぜ、目的地をいいな。完璧に運んでやるぜ!!」


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