第28話 脱出先は、旧友が待つ地
言葉は変だけど、地下は恐ろしいくらいに静寂が戻った。
「ユミナ、大丈夫?」
フェーネの頬に指を置く。
「大丈夫だよ、何言っているか十割わかんなかったし〜」
「ユミナ様、行きましょう!」
潜水艇に入ると運転手側にアリエスが座っていた。
「あらかた操作を覚えました。いつでも出発できます」
いや、数分で覚えれるものなのか? まぁ、システム的な設定なのかっと無理して納得した。
私たちは潜水艇で奇妙な孤島を脱出、障壁を抜け、外の世界へ生還した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
絶海の孤島から『スラカイト』到着まで、怒涛の展開だった。『スラカイト』の大陸で近いのは、あろうことか「サングリエ」。プレイヤーが最後に訪れる街だった。街と街の間のボスを倒していないのに、「サングリエ」周辺の大地を踏んで良いいのかっと焦った。
「問題なく良かった」
特に運営からの警告もなく、普通に「サングリエ」の街にも入れた。
私達が乗っていた潜水艇はアリエスの指輪に収納した。嫌な予感がしたから。
「収納して良かった」
「サングリエ」の街並みは一言でいえば、地中海の穏やかな気候に恵まれた美しき景勝地。SF時かけの孤島とは打って変わって中世の石で築かれた街並みで構成はされている。最後街ならあるいは存在するのか、もしかしてっとは考えたが、私の予想は一瞬で消え去った。
「高度な文明はないですね、変な気分です」
「アリエスもそう思う」
島にいた時間は一日しかない。でも、感覚がバグる感覚に陥っている。
「あれが......アシリアさんの家? であっているのかな」
視線の先、強固な城壁に囲まれているお城風の建物。「サングリエ」の聖教教会大聖堂。絶対に関わってはいけない雰囲気を醸し出していた。
不思議そうな顔をするアリエス。
「アリエス、何かあった?」
「いえ、ただ......アタシが知っている教会とは大分、変わったしまったなっと」
私の服を強く掴む感触があった。
「ねぇ、ユミナ。早く人がいない所へ行こう」
私の服の中にはフェーネがいる。大勢の人に気分が悪くなったらしく、街に入ってからずっと
「そうだね、ようやくだよ......」
私たちは人気のない路地裏へ歩き出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
一際群衆が目立つ場所があった。聖女アシリアの巡回。彼女の周りは聖教教会の屈強な騎士達が配置されている。
聖女を見ようとプレイヤーやNPCが集まっていく。安全のために柵が設けられているがいつ壊れてもおかしくないくらいに大勢の人々が詰め寄っていた。
敷かれたレッドカーペットを歩くアシリアが街中を見つめていた。
隣にいる司教カトレアが聖女アシリアに尋ねる。
「どうかなさいましたか、聖女様」
柔らかい物腰で口を開くアシリア。
「いえ、なんでもありません。司教」
一瞬見えた人影。もしかして、ユミナ様? やっとお会いできます!!!!!!!
こちらの準備は完璧です。見てなさいヴァルゴ。生まれ変わった私は強いわよ。
いや、待ってください、本当にユミナ様でしたか? 日頃の
そうに違いないわ、見間違えよ......隣にヴァルゴがいなかったし。
それにしても、私とそっくりな人と一緒に歩いていたな。冒険者の間で流行っている、こすぷれ? って格好なのでしょうか? 服装も聖女の衣装に似ていました......
アシリアはにこやかに手を振り、前へ進む。己の野望の為に利用できるモノはなんでも利用する勢いで。
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