第27話 遺言はいらないです

「私の蹴りは一味違うわ。【印電量ライジング】」


 蹴りスキル【印能量マイティー】が進化して【印電量ライジング】になった。効果は蹴り攻撃の上昇と、敵に命中した時、内部から『状態異常:金縛り』を発生させる。『金縛り』を受けた者は一切の行動が出来なくなる上に、特殊な解呪方法と時間経過以外、治す手段がない。


 金色のエフェクトを纏う炎削の鷺ドリューエン


「一つ、良いこと教えてあげる」


 回転からの横蹴上げの蹴り攻撃で空中へ飛ぶフォンラス・アーテン。



 フォンラス・アーテンが空中にいる間に鬼蜂の拳キラー・スティンガーへ変更。ジャンプして近づく。


命装武を纏いし存在ライフ・ストリーム】、【二重絆デュアル・コープ】、【痛覚変換Lv.10】、【解析 Lv10】を起動。空中で落ちるフォンラス・アーテンへ肉薄し、打撃の中心点を確認する。


「女を怒らすと怖いわよ!!」


 鬼蜂の拳キラー・スティンガーに炎のエフェクトが包む。嵐焔をまとった拳武器を真っ直ぐにフォンラス・アーテンを突き抜いた。



「【烈闘・極】、体にはお気をつけて」


 拳による衝撃と燃え盛る打撃攻撃で、フォンラス・アーテンは吹き飛ばされる。分厚い壁は撃ち抜かれて砕け散る。降り注ぐ瓦礫によって、大きな穴が誕生した。奥に見えた光景に安堵を見せた私。




◆◇◆◇◆◇◆◇


 瓦礫に当たらないように空洞を進む。秘密で隠された空間を発見する。戦闘不能になったフォンラス・アーテンの隣には小さい潜水艇が浮かんでいた。


 アリエスに石像をウラニアの指輪に入れてもらい、潜水艇に入ろうとした。


「お前はどこに進む」


 振り向く。這いつくばるフォンラス・アーテン。


「人は道具か、生命体か」


 体の方向を変え、天井を見つめるフォンラス・アーテン。


「罪深き神は何を導く」


 手を掲げる。


「跳梁する世界に正義はない」


 お互い、目を見る。


「お前が贄となるのか、奇跡となるのか......見届けさせてもらおう」


 フォンラス・アーテンの体は砂となり、雪崩のように崩れる。床に溜まった砂はポリゴン状となって爆散し、霧散する。

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