第25話 石像、いただきます

 ゆっくり奥へ進む。


「逃がさない......」


 階段を登り終え、広けた空間に入る。フォンラス・アーテンは私の攻撃でめり込んでいる。


「壁かと思ったけど......ディスプレイだったんだ」


 壁一面はディスプレイだけしかなかった。モニターは全て真っ黒。起動はしていない。仮に起動していたらきっと酷い映像が垂れ流しされていたかもしれない。


 部屋の見渡すとを発見した。

「お前に聞きたいことがある」


 返事はない。まぁ、いいか。


「どうして、がここにあるの?」


 それはライオンを擬人化した造形だった。ライオンと女性が上手いこと一つになった見た目。浮き出た腹筋に恥じない精悍な体に、アマゾネスの民族衣装を着て、右手には分厚い刀身の剣、左手には巨大な斧を持っている。好戦的で勇猛果敢な歴戦の戦士の印象。


「ライオンなら......獅子座かな」


 そして、石像の隣には水槽が一つ配置されていた。下にいた二十人とは違い、水槽には琥珀色の溶液が入っている。中には小柄な女の子が入っていた。


「解析に結果、生体反応があった。つまりは、生きている石像。石像内の成分を抜け出せれば、更なる発展に繋がる。だが、うまくいかないものだね......それにしても、石像を知っているとは......お前、何者だ」


 ガラス片と一緒に床に落ちるフォンラス・アーテン。顔は変形している。私が顔面に蹴りをお見舞いからだけど。


「名乗る者じゃない。お前を倒し、石像も解放する。それが今、私がなすべき事」



 加速スキルを使い、閃光のようにフォンラス・アーテンへ向かう。触手は一つにまとまり、巨大な拳へと変化した。

 婥約水月剣プルウィア・カリバーと巨大な拳がぶつかり合う。


「剣じゃ、こっちが不利か」


 斬撃と打撃か。後退した私に、即座に触手攻撃がきた。隙間を縫うように回避し、装備を変更した。


「今度はそっちが吹っ飛べ!!!」


 距離を詰め、胴体へ鬼蜂の拳キラー・スティンガーの拳が放つ。


「【衝撃拳】」


 拳スキルとの併用で、くの字になるフォンラス・アーテン。振動は部屋全体に広がる。衝撃で天井にぶつかるフォンラス・アーテン。


「どうしたのよ、かかってきなさい!!!」


「キ、キサマッ!!」


 拳を変形させ、触手が上から部屋を支配する。同時に左手に溜まっている火魔法を放ってきた。


逸蓮托翔ギブ&テイク』を起動。バク転してからのムーンサルトで回避。


 触手は私を通過。火炎攻撃も床に残るだけ。手薄のフォンラス・アーテン。


 空中で標準を合わせ、鬼蜂の拳キラー・スティンガーの猛毒の針を発射した。


「命中!」


 肩に刺さった毒針は即座にフォンラス・アーテンの体に循環する。真っ黒な体でも分かるように紫色の線が無数に浮き出てきた。毒が巡っている証拠。

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