第24話 誰のために戦う
◆◇◆◇◆◇◆
私達を捕まえようと触手が襲いかかる。どうやら、触手は右腕だけらしい。右だけを注意して攻撃を当てる。
触手を避けた。時々触手を双剣で捌いている。
武器は双剣に切り替えている。
いつもの戦術ではフォンラス・アーテンに勝てない。
私の魔法攻撃がフォンラス・アーテンには効かないからだ。
言うなればフォンラス・アーテンは魔法攻撃無効耐性持ち。
しかも、火・水は吸収耐性。
ユミナがいくら魔術師として魔法が全体的に強化されていたとしても、吸収されては無意味。吸収された魔法攻撃は左手に収束し、放てる。まさか自分が放出した魔法攻撃を自分が喰らうとは思わない。
とにかくこのまま魔法攻撃をしても、フォンラス・アーテンを強化させてしまうだけ。相性が悪いので
そうか、と納得した顔になるユミナ。
自分たちを絶海の孤島に招待したのはこの博士。浜辺にいる者なら誰でも良かった。
自分の研究のための材料が欲しかっただけ。
島に出ないように結界が貼ってあったのも、巡回していた機械生物にも納得がいく。大波で捕まえた人が研究所に行かなくても機械生物が捕獲すればいい。
後方で何かが割れる音がする。
触手に捕まらないように掻い潜りながら、割れたモノを見た。
二基の水槽が破壊され、中にいた女性達が空気ある世界へ排出された。触手が水槽に当たったのが原因だ。
「大事なモノじゃないの」
私の疑問に不愉快気極まりない笑みを浮かべる《フォンラス・アーテン博士》。
「そんな、ゴミどもいらないね」
一本を
「『ゴミ』ですって」
「ユミナ様っ!!!!!」
アリエスの声を聞いたと同時に驚きを隠しきれなかった。
アリエスが抱き抱えている女性の体は渇き、そして粉になった。床には小さな丘が形成された。白と灰色が入り混じってた粉末。ほんの数秒前まで人の形をしていたモノ。
「君の周りにある水槽に入っているゴミたちは実験の失敗作。人体に動植物の遺伝子を後天的に埋め込んだ。結果はダメだったけどね。水槽にいる
怒りしかなかった。
「なんで......そんなことを」
「人を人にするためだよ」
また、それか......
「人類が次なる高みに......」
フォンラス・アーテンは、罪悪感を微塵も感じさせない口調で自分の研究を話していた。
正直、耳障りだった。聞こえてきた内容の中に砂場、研究所内で戦ったモンスターはすべてフォンラス・アーテンが改造した存在で、水槽の中にいる人達よりも前に実験していた。
いきなり人を改造するのではなく、別の種に異物を取り込んだ場合、どうなるのか。次は人間をどこまで改造すればいいのか、結果あの怪物だ。
そして、数々の人体実験を元に残ったのが水槽内の人達。フォンラス・アーテンにとっては、彼女たちも失敗作と認識している。
フォンラス・アーテンが異形の者になってしまったのはきっと、自分を素材にした人体実験を決行したから。フォンラス・アーテンだけが水槽の外で生きていられるのは、一応の成功を果たしたと考えられる。
”一応”と考えたのは、研究所の地下にいるからだ。
私たちが研究所に侵入した時に、登場しなかった。あれは、研究所から入ってくる外気や太陽など光に触れちゃダメと推測される。
だから、自分が好きに動ける地下で私たちを待っていた。
ユミナは砂山を見た後、フォンラス・アーテンを見つめる。
ゲームのキャラだし、フォンラス・アーテンの設定も初めからプログラムされたもの。だからこんな感情を出すのはきっとお門違い。でも......
「もういい」
ユミナは静かに怒鳴る。
加速されたあびせ蹴りを喰らった《フォンラス・アーテン博士》は奥にある壁へ激突した。
「アリエス、フェーネ」
今の顔を二人に見せれない。だから隠した。怒りは全て握っている双剣で晴らす。
「予定変更。アイツをぶっ倒す」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます