第15話 無人島でCommunication!
私とアリエスは樹木をかき分けながら進んでいた。
さすがに森の中にまで魚類モンスターは出ないだろうっと考えた。
奇襲してくるモンスターが他にいるかもしれない警戒心がマックス状態になり、私達は途中から会話しなくなった。
音に敏感なモンスターのための対策だ。
「真っ白ですね」
「ただの巨大な箱ってオチかな」
坂を登り終え、目的地となる建物を見た私達の率直な感想だった。
建物は、二階建てくらいの高さがある。窓はひとつもない。建物自体は白で統一されている。入口辺りに台座らしき物が置かれていた。
警戒しつつ建物へ近づく。
「これ、オートロック?」
入口付近の台座はマンションのエントランスで見かけるオートロックそのまんまだった。
試しにインターフォンを押してみたが無反応。ボタンの隣には浮き彫りになっている縦長の装置が置かれている。
形状とオートロックの性質上、これは......
「カードキー方式のオートロックか」
となると、入るのは磁気カードかICカードが必要になる。
「あの、ユミナ様。入れないってことですか」
「そうだね、建物の中に誰もいない。他に出入り口もない。唯一の扉には専用の鍵が必要になる」
地面を見渡すが、それらしきアイテムはなかった。他の可能性なら、敵が所持していて、ドロップ品としてゲットできるか、考えたくないけど、近くに白骨死体があり、そこから入手する方法が一般的かな。
「あれ? だめだ」
中は気になるけど、島からの脱出が最優先。
「『研究所の壁は非接触オブジェクトのため使用できません』って嘘でしょう!?」
てか、待って。この白い建物が研究所? 嫌な展開。無人島で研究所なんてホラーの定番施設じゃん。
「そして、誰もいなくなったってわけか」
「なんのことですか?」
「いや、こっちの話〜」
どうしよう。外装の壁に
となると私達の行動は自ずと一つに絞られる。
「死体探そっか」
「いきなり狂気じみた事言わないでください!?」
アリエス、マジの引く顔はやめて。傷つくから......
森を歩いてどのくらい時間が経ったのか正直わからない。
カードキー探しの旅に出た私とアリエスは坂を下ったり上がったりの繰り返しをした。
丘の研究所以外に人工物はなく、森と海しかなかった。
モンスターの気配は多少あった。
本当になんの変哲のない無人島だった。
ぶらぶら歩いていると泉にたどり着いた。岩の窪みに雨が溜まっただけの泉。ここまでなら少し神秘的で終了だった。私達は水面に浮かんでいる物体を見て、立ちすくんだ。
泉の中央に葉っぱでできた船が浮かんでいる。そして、船の上で寝ている小さいシルエット。
赤髪、手のひらに乗るほどの小さい体。背中には自由に空を舞うことができる蝶の翅。
「
そういえば、今まで見たことがなかった。ファンタジー世界では定番種族なのにも関わらず、一回も目撃した記憶がない。
「人に似た見た目は珍しいの?」
「はい、一般で見られるのはピクシーって種族です」
青い肌に尖った耳がピクシーの特徴。そういえば......そんな見た目のモンスターと戦ったことがあったような。
私の中では妖精ってか弱く小さい美少女のイメージが強かった。
思い出した!?
ムカついたからアイツごと森を燃やしたっけ。
あの後、ヴァルゴの叱られたな......いい思い出だった。
「なんで、こんな無人島に
「敵ですかね」
「それにしても、無防備な印象」
葉っぱ船で優雅にお昼寝している妖精は警戒心が全くない。本当にくつろいでいる感じだった。
島をぐるりと回ったが情報は手に入らなかった。そこにきての妖精の登場。何か因果関係があると踏んでいる。ゲーム的にはフラグって呼ぶんだっけ。
「即、戦闘準備ができるようにしよっか」
あんな呑気な顔をしても、危険がないわけではない。何が起こるのかわからない。正体不明の妖精が敵か味方か。不安を募らせながら歩を進める。
「......誰?」
明瞭な声が泉に響く。
妖精と眼が合う私。黙っては何も始まらない。いざ第一島民への接触会話、行動開始!!
「あー......えっと。お元気ですか」
作り笑いをして手のひらを向けて振った。
しばしの沈黙。両者放心状態。時間にして一分が経過した時、驚いた顔を出す
残ったのは、泉に広がる波紋、沈没した葉っぱ船。そして森の奥へ飛んでいく妖精を黙って見守る私とアリエス。
「ユミナ様、逃げましたね」
「ヒトミシリハツドウ......」
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