第13話 ユミナちゃん、絶海の孤島へ
「......ここは?」
波打つ音と共に私は目が覚めた。
仰向けに倒れた身体を起こす。そこは砂浜だった。
煌めく太陽からの光線で照らされた砂が白々く輝いている。目を開けて間もないがあまりに眩しく数秒間、目を閉じてしまう。目を閉じたことで風を余計に感じやすくなる。耳から入ってくる細波の音が記憶に残るほどだった。
真上には雲一つない満天の青空。周囲を見渡すとあたり一面に広がる海。広大な海は太陽の光で巨大な鏡へと変貌を遂げ、照り返す。再び強烈な光の攻撃で目が刺激される。
「気絶していた?」
ゲーム内だから、気絶するのかと疑問に思うが今起きたことが事実だと受け止める。
「アリエス!!」
私の隣で倒れているアリエスの体を揺らす。
程なくし、目を覚ますアリエス。
「あれ? ユミナ様......」
アリエスも事態を把握したのか見回す。
「ここって、アタシたちがいた砂浜ではありませんね......」
そう、砂浜は砂浜でも私たちが先ほどまでいた場所とは異なる場所だった。
「何が起きたの」
思考が混濁していた。
「確か......みんなのところへ戻っている最中でしたね」
アリエスとのイチャイチャが終わり、みんなの下へ戻りながら波打ち際を歩いていた。
「......一緒に歩いていて......あっ!? 巨大な波が来たんだ」
突然の大波にのまれて......
「で、今に至るってことか」
まぁ、ここがどこかだとしても私には
「あっ!?」
ドアノブを持って気付いた。
「壁がない」
私の肩を叩くアリエス。
「ユミナ様、あれ」
指差す方角へ視線を移す。
「......建物?」
丘の上に白い建物があった。周りは自然環境の中、一際目立つ人工物。
私達にとっては好都合。壁になるモノがあれば転移は可能。未知の孤島を探検したい気持ちはあるがまずは安全を確保するのが先。探索はここにいないみんなと一緒に準備万端で臨む。
「とりあえず、あの建物を目指そっか」
私の提案にうなづくアリエス。
私達が一歩進んだ瞬間—————————
海面から何かが飛び出してきた。凄まじい爆音と爆発による大量の水飛沫が飛び散る。
砂浜は一瞬にして水浸しになり、波打ち際にいた私達も頭からかぶってしまい、全身ズブ濡れになった。
「何?」
海面の方を振り向くと、何モノかの姿が露わになる。
「エイ??とサメ??」
エイやサメも海の住人。珍しくもない。ただ違和感があるとすれば目の前の光景と生態。
エイの見た目は、先端部分に小さな瞳、毒々しい色をした平らな体、長く伸びている鞭状の尻尾。ヒレ部分は機械化されている。
サメの見た目は、腹部は白に近い灰色、それ以外の全ての部分は水色となっていた。紡錘に似た体型。エイ似のMobと同じように扁平な形の頭部を持ち、正面の両端に小さな目がある。尻尾部分が機械化されている。
二匹のMobの大きさはクジラサイズだった。これが一つ目の違和感。ゲームの敵モンスターなんだからこれくらいのサイズはいるかっと謎の安心をした。
で、二つ目の違和感。
魚類は
酸素があるなら海中でも地上でも両方は活動できると考えられる。しかし、そう上手い話はない。魚類は空気呼吸はできない。
色々難しい話になるけど、要は
現実に非常に似ている世界の『オニオン』では絶対にリアルの生物の生態を取り入れているはず。
なのに、どうしてか普通に活動できているエイとサメ。そして、三つ目の違和感。明らかに人工的に一部だけ改造されたと思しき生物達。
正式名称はエイの方は《ダイバーレイ》。サメの方は《アビス・シャーク》
「アリエス、行ける?」
私の問いに嘆息するアリエス。
「行けませんって言えば、彼らは見逃してくれますか?」
牡羊の星衣に装備を変え、
「私の従者は最高ね!! やろう!!」
殺気を感じ取ったのか二匹が近づく。
正体不明の絶海の孤島で明らかに普通じゃないモンスターとの戦いが始まる。
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