第12話 隠れビーチではお静かに:Part3

 ◇◆◇◆


 浜辺に座り、水平線を眺めているリーナとコーラン。

 国から出ていないリーナにとっては今回が初めての海。きっと珍しいのだろうが......


「美人さんがぼーっと海を見ているの、シュールすぎる」


 腰を屈めて、二人の顔を覗き込んだ。


「......小さいわね」


「殴るわよ!!」


 水着姿で前屈みになっている私に尺度なしの感想を言い放つリーナ。


「お母様やお祖母様に比べれば小ぶりも良いところだわ」


「あの二人に比べられると自信を無くすけど......リーナも私と似たようなもんじゃん」


「私には未来がありますので」


「ほほ〜う。私には未来がないと言いたいわけ??」


「そう聞こえたのなら、自覚があるってことかしら〜」



「......すみません、ユミナ様」


「コーラン、リーナのお付きやめれば」


「時々、思いますが......恩義もありますので」


「拾われたんだっけ? どうせ、物珍しさでお側に置いたんでしょうけど」


「それでも、当時の私からすればリーナ様は救世主でしたので」


「そっか。どうですか、リーナ姫。忠義心の強いコーランからのお言葉は!!」


「ノーコメントよ」


「だったら顔を隠す必要はないよね〜」


 リーナは両腕で顔を隠し表情を見せないようにしている。


「話は聞いていたけど、太陽の下でも活動できるんだね」


「体は重いけど......普通に生活する分には問題ない」


「コーランも似た様なモノ?」


「いえ、私は種族が違うので特に制限がかかっている訳ではありません」


「確か、サキュバスだっけ?」


「はい、強いてあげるなら夜の方が燃えます」


「サキュバスって男性の生気を貰うんだっけ?」


「私達の命の源みたいなモノですので」


「いいの?」


「大丈夫です、私はどちらかというと男性より女性の生気の方を好みますので」


「ってことはリーナの......」


「変な想像しないでよ。ド変態」


「私が何を想像しようと私の勝手。というか私が想像したものがわかる口ぶりね〜 もしかして......当たってる? リーナはいやらしい子だね〜」


「い、いやらしくないし〜 サキュバスの行為は神聖な行いなのよ。時々......凄いけど」


「お暇しますか、あとは若いお二人でごゆっくり〜」


 私が離れるとすぐにリーナの肩に頭を置くコーラン。

 リーナは嫌がらず黙って水平線を眺めていた。



(......ずるいなぁ)















 ◇◆◇◆◇


 華奢な腕に掴まれ、森を歩く私とアリエス。


「ここなら大丈夫ですね」


 森の真ん中で足を止めるアリエス。


「こんな森の奥で何するの?」


 人の気配、モンスターの気配はないから軽装でも問題はないが......


 微笑み、恥じらいもなく白のワンピースを消したアリエス。





「見ていただけると光栄なのですが......」


 ワンピースからビキニになっただけ。知り合ったばかりは自分の体に刻まれている呪いを見せないように過ごしていた。進歩して今ではだけど、素肌を見せてくれる。嬉しいことなんですが......


 真摯な目で私に近づく。次第に吐息を漏らし始める。

 ちょっと真面目になったかと思えば......これか。


「えっ!?」


 背中に木の幹が当たる。追い詰められた......


「えー......っと、アリエスさん?」


 しばらく肩で息をしていたアリエスは我慢できず、私に寄り添わせてきた。

 上気の頬、潤んだ瞳で私を見つめる。上目づかいの視線は老若男女問わず込み上がるものがある。私でさえ、ドキドキしている。


 私はアリエスに胸をもまれた。


「あっ......」


「ふふん、大丈夫ですよ。ユミナ様」


「全然、大丈夫じゃないと思んだけど!?!?」


「......これは嫉妬なんでしょうね」


 私のを強くもむアリエス。


「し、嫉妬......?」


「カレッタ姫とユミナ様の仲睦まじいお姿を見て......体の中からドス黒いモノがでた気がしました」


 悪いことしたな......


「アタシには何もありませんので......」


「そんなことないよ。だって......」


 アリエスの身長に合わせて屈んだ。同じ目線に、そして唇を重ねた。


 突然のことでアリエスの目が見開く。


 離し、悪戯っぽく微笑む私。


「だって......はカレッタにはしてないわ。自信を持って!」


 耳元で囁く。


「自信を持たないと......やらないわよ♡」


 蕩けた表情のアリエス。羊の耳まで真っ赤になっていた。

 か細い声で私に宣言した。


「はい、精一杯頑張ります......」


「それでこそ、私の従者ね」




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