第6話 苦悩は子孫の試練

 更に先に進む私達。途中、私達同様のクエストを受注しているプレイヤー達に遭遇したが動く木や見た目がナマケモノなのに剛腕で猛攻してくるお猿さんの群れにかかりっきりだったので無視した。

 頑張れ、みんな。間違っても火属性の魔法で森を燃やさないように......




「ユミナ様、一つ質問よろしいでしょうか」


 恐る恐る私に質問するカレッタ。


「何ですか?」


「あの......大図書館のことなんですが」


 私が口を開く際に前に出たカプリコーン。


「カレッタ様、ご主人様はお優しいお方です。そのことはお分かりですか?」


 カプリコーンの目は、冷たい視線だった。カレッタのこれから発せされる第一声によっては例え一国の姫だろうと首を刈る体勢を取っている。自分の主を守るための行動だ。


 低い声が降り注ぐ。


「不快に思われたのであれば、後ほど処罰は受けます。私は王族に不敬を働いた者ですので、覚悟はできています。カレッタ様を含め、多くの方々がご主人様に詰め寄りました。目的は全て大図書館の入室の条件を教えて欲しいという内容でした。中にはこれを機に本当に仲良くなりたいという本心の方もいたかもしれません。今回の同行もご主人様の許可を出したので目を瞑りました。ですが、私はご主人様の執事です。ご主人様の身の安全が最優先。なので、ここからの言葉は慎重にお選びください」





 震えながら、話すカレッタ。


「じ、実は......エヴィリオン・ヴィクトールのことで」


「ケンバーのこと?」


「『ケンバー』?」


「......ご主人様」


「ご、ごめん......」


「はぁ〜 それでエヴィリオン・ヴィクトールについて何を知りたいのですか?」


「大図書館にある書物か日記にヴィクトール家の事は書かれていましたか」


「どうですか、ご主人様」


「見てない。なにぶん、塔内部は書棚が九割だし、書物もぎっしりだから全て見れてなくて」


「そうですか......」


「何かあるんですか?」


「ヴィクトール家はそう遠くない内に終わります」


「そ、そうなんだ」


 かなりの爆弾発言で言葉を失った。


「魔法学園は大丈夫です。ですが、ヴィクトール家は年々、力が衰える一方です。他に負けない圧倒的な魔法があればっと、長年ヴィクトール家の魔法使いは大図書館にある魔法を習得しようと躍起になっていました。でも......」


「誰も入れず、今に至るってことだね」


「はい......私が最後の希望みたいです。だから......現在唯一入れるユミナ様が知っていることがあればと思い......」


「自分で入る意思は?」


 カレッタは杖を強く握る。


「入学してから今まで大図書館の大扉に阻まれまして......」


「ビンタ扉ね〜 アイツは......」


「ごほん」


「はい......ごめんなさい」


「親族達は毎日......言っていました。どうして、子孫にエヴィリオン・ヴィクトールはこのような仕打ちをするのかと」


「ケンバー......そんなこと考えてたかな」


「あの、先ほどから登場する『ケンバー』とは?」


「うん? エヴィリオン・ヴィクトールだよ、私の師匠!!」


「い、生きているのですか!? 本人が」


「いや、肉体は死んでいるよ。今のケンバーは......霊体的な......存在かな」


「お願いします、ユミナ様。いくらでも、何でもします。エヴィリオン・ヴィクトールに聞いてもらってもよろしいでしょうか」


「どうして......子孫が入れないのか」


「はい」


「因みに、ケンバーの魔法を私が習得してるっと言えば、どうする?」


「私は欲しくありません。エヴィリオン・ヴィクトールのオリジナル魔法は身震いするモノかもしれません。でも、私は純粋に魔法が大好きなんです。簡単に分かっては好きが嫌いになります。だから......私はエヴィリオン・ヴィクトールの魔法は要りません。知りたいのはどうして、あのような試練を子孫に与えたのか。それだけです。私がエヴィリオン・ヴィクトールの真意を親族に伝えれば......納得すると思います」


 口角を上げた。こういう子、好き。


「分かったわ、クエスト終了後に聞いてみるよ。ケンバーの真意を」


「......ありがとうございます」


「それじゃあ、お花摘みに行きますか!!」

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