第4話 ドキドキさせたい愛情表現

 

 ヴィクトール王国。セルパンに存在する魔法大国。ヴィクトールの王族は代々、ヴィクトール魔法学園に通う。学舎であっても、ヴィクトール魔法学園では貴族、王族の地位は適用されない絶対中立。身分が高い者、低い者は関係なく優秀な魔法使いだけが優遇される。完全実力主義の場所。


「あれが、王女様か〜」


 廊下の先に群衆。渦中の中心にいるのは魔術師の金色の髪の女性。

 カレッタ・グランブ・ヴィクトール。ヴィクトール王国の第一王女。


 最年少で魔術師を取得し、各属性魔法を最高位まで高めている。魔法だけではなく王女としての礼儀作法、武術も秀でている。性格は温厚で誰にも分け隔てなく接している才色兼備。


「ご主人様、カレッタ嬢を変な目で見てはなりません」


 睨むのは私の麗人執事でカプリコーン。


「いやだって......王女だよ!! やっぱりオーラが違うな〜」


「......まさかだと思いますが、私達にをカレッタ嬢に仕掛けるなんて事はしませんよね」


「し、失敬ね。さすがの私もそれくらい弁えているわよ」


「ご主人様の言葉をそのまま信じるのは少し......」


 呆れたカプリコーンにプンスカする私。


「信じるまでてあげるわ」


「ご勘弁を。ご主人様」




 ◇



 私とカプリコーンの談笑を見ている数多の視線。私達は嫌悪感を抱かないのでそのままにしている。


 そんな数多くの視線の中にはカレッタも含まれていた。


「あれは......ユミナ様!?」


 自分以来の最速、最優秀で”魔術師”を取得した女性。


 ある時は、男女問わず理性を崩壊させる美貌を持つ女騎士と歩いていたり。


 また、ある時は執事服を着た完璧な麗人と歩いていたり。


 聞くところによると、冒険者の中では有名人だとか。ユミナを知る者達は女王や姫様、ユリヒメ? なる存在と呼んでいるらしい。


 優秀な魔法使いとして勉学をご一緒にしたい気持ちともう一つ、知りたいことがある。



 ヴィクトール大図書館には何があるのかを——————





 魔法学園創立してからたった二人だけ入室が許された古びた塔。中には誰にも知り得ない数多の種類の古代書物、そして創立者でもあり、カレッタの祖先でもあるエヴィリオン・ヴィクトールが手掛けたオリジナル魔法が書き記された書物、魔法使いにとってはまさに宝石箱。魔法の叡智がヴィクトール大図書館にはある。




 大図書館に入室する条件が厳しくヴィクトールの王族はエヴィリオン・ヴィクトール以外、誰も認められなかった。

 歴代最強の魔法使いと呼び声が高いカレッタでさえ、ヴィクトール大図書館には入れずにいる。


 だから、普通に出入りが可能なユミナに興味を抱いているカレッタ。


 話したい衝動に駆られるが道のりは遠い。










 私が授業クエストを受けている最中、従者であるカプリコーンは隣に座っている。


 カプリコーンは天使だ。今は非常に顔の造形がよく、宝塚の人ですかって位の麗人。しかも執事なんて格好だからさらに隙がない存在となっている。


 昔は定番の天使輪っかを頭上に置き、白く美しい翼を生やしていた。星霊に任命された時点でスキルや魔法使用時に翼を展開し空を飛ぶなどが可能になる。一度、見たことがあるけど......体が勝手にお祈りポーズを取るとは思わなかった。それだけご利益アリアリのお姿だった。



「それにしても、カプリコーン。大変だったね?」


「あはは......途中からご主人様、消えましたよね」


「ほら、私は『戰麗アドバンス』に慣れたかったから〜」


 授業クエストが終わった瞬間にカプリコーンに群がっていた。カプリコーンなら大丈夫だろうと私は忍足で戦線離脱し、外で『戰麗アドバンス』モードのまま訓練していた。


戰麗アドバンス』状態時効果で『時間経過でMPの自動充填」がある。高速移動で魔法をフルバーストで放てる。

 ただ、星刻の錫杖アストロ・ワンドは長い杖なので高速移動中に振るモーションを取るとジェット噴射の様に勢いがつき、意識しないとあらぬ方向へ体が持って行かれてしまう。


「『戰麗アドバンス』時は小回りがきくナイフかな」



 魔法石も入手できたし、タウロスに依頼して新たな短剣系統を作ってもらおう〜











 魔薬学のクエストを完了した私はボルス城へ戻った。


「今日は終わり〜」


 ベットに倒れる。


「はしたないですよ。ご主人様」


 大の字の私に苦言を呈するカプリコーン。


「いいじゃん。誰もいないんだから」


「はぁ〜 仕方がないですね。それでご主人様、この後の予定は?」


「読書と授業で疲れたから後はゆっくりしようかな〜」


「そうですか。時にご主人様。立ってもらえますか?」


「うん? 立つ? いいけど」


 ベットから立ち、カプリコーンと対面する。


「では......失礼」













「ち、ちょっと!?!?」


 顎をクイっとされた。近づく美顔。


「やはり、効果覿面てきめんですね」


「離してよ」


 逃げたいが腰に腕を回されていた。


「ご主人様は過激な行為に慣れていた。なので、このように意表をついた行動には免疫がないっと見て取れました」


「いらん観察眼だこと......」


「吸い寄せられる魔性の髪、全てを魅了するオッドアイ、触れば至福の頬、甘美な唇。ご主人様のお顔は世の女性を虜にする要素が多いですね」


 男よ、さらばだ......ヴァルゴといいカプリコーンといい、男性に何か苦い思いがあるのかな〜


「ぐ、偶然よ......」


 耳元で囁く。


「ゆっくりと、徹底的に堕としてあげます」


 耳を押さえた。


とすの言葉に邪が宿っているのは気のせいだよね......」


 天使の皮を被った堕天使だったか、カプリコーンよ。




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