第3話 姉妹が恋人として過ごす時間こそ今日一、最良の日
「せ〜つ〜な♩♩」
後ろから抱きつく白陽姫ちゃん。
今日は残った宿題を片付けている。といっても学業最高の白陽姫ちゃんに手取り足取り教えてもらったので一時間くらいで終了した。(別の意味はないよ)
その後はお察しの展開。
私の部屋で私は恋人でもある白陽姫ちゃんの愛の囁きを聞かされている。がっちりホールドされており、逃げれない。いや、逃げる要素はないんだけど......私の身が持たないのが現状。
「白陽姫ちゃん......少し待って」
私からの告白を受け、晴れて恋人になった私達。だけど、ある意味、枷が外れた白陽姫ちゃんはことあるごとに私に甘える。
ある時は寝ている私の布団に夜中入ってきたり、
ある時は両親がいないことをいいことにリビングで肩を並べながら映画鑑賞したり、
またある時はお風呂に一緒に入る回数が増えたり。
そして、今は私を後ろから抱きしめ私への愛を耳がふやけるまで囁いている。こうなった白陽姫ちゃんは絶対に離してくれない。
冷房が効いている自室でも私の体の体温が徐々に上がっていく。私の体の変化に機敏になった白陽姫ちゃんは見逃さなかった。対面に姿勢を変える白陽姫ちゃん。
「せつな......嬉しいよ。私で欲情していて」
「真昼間から何、いってるの!? ねぇ、白陽姫ちゃんって......そんなに肉食だったの」
巻波白陽姫は
欠点を挙げるなら友人以外と話すのが苦手というくらい。日常会話はできるが気心の知れた仲ではない相手にはあまり親しい話はしない。
私のクラスメイトの中には白陽姫ちゃんは休日には優雅に本を読む。休みであっても己の鍛錬を欠かさない武芸を嗜んでいるとか。色々言われている。因みに彼氏はいないっと学園での生徒の共通認識。
なぜなら、姫に釣り合う人間など存在しないし、いたとしても巻波白陽姫と同等に能力を有している人———そんな人は天文学的確率でいない。
数日前の私も頭の片隅に記憶していた。
なんだけど......私を抱きしめている件の女性は。そんな幻想を容易く打ち砕く欲に忠実な人間。まぁ、彼氏は未来永劫現れない。彼女でもある私が許さない。
夏休み明けはどうなるのか......困惑している私。
うーんっと、困り気味の白陽姫ちゃん。
「いや、自分でも信じられないって心境だ。でも、こんな気持ちが抑えられないのは......せつなのせいかな」
「回答に困る......」
「まさに運命の出会い。愛しているよ、せつな」
なんだろう、妙に自信を持つ人は恥ずかしい言葉もかっこいい言葉に表現できる能力でも持っているのか?
ゲームを通して、普通に話せる様にはなった。でも、さすがに白陽姫ちゃんみたいに相手を籠絡できる言葉は頭の辞典には載っていない。
当然、かっこいい言葉を言われ、頬を触る私。
「私には勿体無い彼女だよ!」
おや? 目を逸らしチラチラ見始めキョドる白陽姫ちゃん。
何かを閃いた表情を浮かべる。数日ではあるが白陽姫ちゃんがこの表情をした後、碌な展開にならないことを知っている。
「今日......二人とも帰りが遅い」
あっ!? これは......
分かっていたがいざ、面と向かって言われると気恥ずかしいものがある。
「そ、そうなんだ〜」
首を傾げた白陽姫ちゃん。
「乗り気じゃないな」
「いや......毎日はさすがにどうかなって」
私達って高校二年生だよね。さすがにデートと称して炎天下の外を歩くのはしんどい。でも......他に何かやることないのかな〜 弓永家の姉妹。行動が完全にインドア生活を謳歌している。
「人生なんて一瞬だ。ならば一瞬を充実させなくちゃ」
うん、なかなかいい言葉だと思うけど。動機が不純なのはいささか問題がある。
「せつなは......恋人が舞い上がっているのに。何もしないのか」
私だって、せっかく二人っきりの空間。イチャイチャしたい気持ちは限界突破している。
「いや......でもさぁ〜」
私の想定外のうろたえを見て、突いていく白陽姫ちゃん。
「せつなと一緒にいる時間こそ、私の時間が進んでいる証拠。だから、今日も私の時間を進ませてくれないか」
告白? ドキドキが止まらない。仕方がないな......
「......わかったよ」
小さく呟いた私に反応した白陽姫ちゃん。
「ありがとう」
発せられた言葉は、心の底から感謝とこれからは任せろっと意志証明だった。
招く私も心の中では嬉しさ全開。もしかしたら体が爆発するのではないかと思えるほど。
今日はゲームにログインできないかもしれない。
ヴァルゴ達に後で何かされないか心配だが、その時はその時。
ジト目の白陽姫ちゃん。視線だけで体に刺す勢いだ。
「恋人がいる前で何を考えているんだ?」
す、鋭い。でも......馬鹿正直にゲームの美人NPCからアプローチされるかもしれないって言えない。
言ったら最後だから......
「ふ〜ん。まぁ、すぐにわらす」
えっ!? 怖いんだけど。
嫉妬は時として大胆な行動を取る。
「楽しみだよ、彼女がどんな秘密を隠しているのか。一応、聞くが他の女の事を考えていないよな」
「い、いや〜 考えていないし私の恋人は白陽姫ちゃんだけ」
唇を重ね、行動で示された。
蕩けた表情をしているだろう。先制攻撃が決まったのかイタズラっぽく笑みを出す白陽姫ちゃん。
「覚悟はいいか」
私の返答を待たず、私を優しく包み込むように抱きつき再び私の唇を奪った。
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