第116話 姉妹の日常
「水、美味い!!」
こんなに水が美味しく思えたのは初めてだった。
「あれ、せつな?」
リビングに入ってきたのは白陽姫ちゃん。
「お姉ちゃん? どうしたの?」
「ちょっとお水をとりにきてな」
リビングにあるダンボール。中身は常温の水ペットボトル。我が家の住人は一本だけを買うのが面倒くさいのかいつも箱買いしている。今ストックしているのは水と緑茶とヒゲとうもろこし茶。
2リットルの水をコップに入れて飲む白陽姫ちゃん。
「......そんなにじっくり見られると恥ずかしいんだが」
すぐに顔を逸らした。
「ご、ごめんなさい......」
やばい、見惚れていた。水を飲んでいただけなのに......
コップを置く音がした。
「せつな......」
後ろから強く抱きつかれた。
「えっ!? お、お姉ちゃん......!!」
「......”白陽姫”だろ!!」
耳元で囁くのは反則だよ......白陽姫ちゃんが一文字一文字、言葉にするだけで私の体全体が震える。
体が耐えれるキャパを超えていた。
「か、白陽姫......ちゃん」
「やっぱり、妹から名前を呼ばれるのは......心地いいな」
腰に置かれた白陽姫ちゃんの腕が強くなるのを感じる。
息も熱を帯びていた。
どうしよう、耳が真っ赤なのバレていないよね......
「せつな......」
「な、なに?」
「一緒に寝ないか!」
「......うん」
恋人繋ぎで私達は部屋に戻った。
......
............
..................
窓の外から、光が差し込む。私は目を開ける。
いつの間にか眠っていた。
「おはよう、せつな」
寝ぼけた瞳が覚醒する。
私の寝顔をじっくり見ているのは白陽姫ちゃんだった。
「お、おはよう。ずっと起きていたの?」
「あぁ、なんとなく。自然と目が覚めていた」
「で、ずっと私を見ていたと」
「偶に頬を突いていたぞ」
「いいよ、そんな報告は......他には、何もしていないよね」
白陽姫ちゃんは私の手を握り始める。柔らかい手......
「ご期待に添えず、悪いね。何もしていない」
「そ、そ、そうなんだ......」
「目が泳いでいるぞ?」
「えっ!? いや、これはなんて言えばいいのか......生理現象的な」
「ふ〜ん」
さらに近づき、私をギュッと抱きしめる。
やばい、美人の顔が超至近距離にある。唇が重なりそうなくらいの距離だった。しかも体を密着させているから心臓の鼓動の激しさが伝わっているかもしれない。
「安心しろ」
耳元で囁く私を誘惑する甘い声音。
耳が死んだ気がした。
「ゆっくりと進めよう。愛しき
唇にキスされた。
「ずるいよ......」
好きな人の中は温かい空間だった。優しい幸せが私を包み込む。離せない魔力があった。
私も白陽姫ちゃんを抱きしめる。
「あれ?」
幸せいっぱいだったから今の今まで気が付かなかった。
小悪魔的な微笑を浮かべる白陽姫ちゃん。
「どうした?」
タオルケットを外す。嘘でしょう!?!?
「一応、聞くね。服は?」
「私の服は、机にある」
本当だ、白陽姫ちゃんの机に綺麗にたたまれたパジャマがある。
「どうして......着てないの?」
頬が少し赤らめる白陽姫ちゃん。
「............言わせるな。ふふう〜」
「も〜お。風邪引いても知らないよ」
「その時はせつなが看病してよ。恋人さん」
義姉妹であり、付き合い始めた恋人関係の私達の日常が始まった。
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