第115話 二つは一つへ

「風が気持ちいい」


ボルス城、ベランダ。

私は手すりに腕を置き、風を楽しんでいた。


下を見ると、庭にリーナと彼女の従者でもある女騎士、コーランがいた。二人はカプリコーンに城の案内を受けていた。


「全く、ユミナ様は......」


振り返ると、ヴァルゴが近づいてきた。


「アイリスは?」


「しばきました」


「ははぁ、傑作!!」


「笑い事ではありません」


「リーナに言うの?」


「いえ、言いません。真実を話す事が、必ずしも正しい行いではありません。それに、私が言うよりアイリスやマリアが言った方がいいかと」


「それじゃあ、私も絶対に言わない。は、話は変わるんだけど......ヴァルゴ」


「何ですか?」


しっかりとヴァルゴの目を見た。


「私の話......聴いてくれる」


「......はい。聴きます、どんな内容でも」



......


..........


...............


....................



「私......好きな人がいるの」


「............はい」


「でも、複雑で......」


「......はい」


「もしかしたら、私の勝手で独りよがりなだけかもしれない」


「はい」


「えっと......だから、」






目を見開く。


微笑むヴァルゴ。


「君はどうしたいんだ。君自身の気持ちはどうなんだ?」


「わ、私は......」





「私はユミナ様が好きです。愛しています」


「......ッ!!」


林檎の様に真っ赤になるヴァルゴ。恋する乙女だった。


「これが私の気持ちです」


「ごめん、私は」


は、それでいいです。ユミナ様がやりたい事をしてください。幸いなことに私は長生きできます。ゆっくり待ちます」


「ありがとう」


下を向いている私を抱きしめるヴァルゴ。


「待ちます、いつでも......」


「私は......よ。自分の思いの丈を私の好きな人にぶつけてくる!!!」


「それでこそ、私の主です」






私の耳にヴァルゴの口が近づく。


「ですが......」


甘い声音を漏らしながら腕を掴まれる。


「えっ!?」


引っ張られ、寝室へ強制連行された。

私の上に乗るヴァルゴ。目を追えない速さでインナー姿になっていた。


ピッタリと抱きしめられる。

首元にキスされた。


「ち、ちょっと!?」


「ユミナ様の愛しき何某はここにはいない。と、言うことはユミナ様を誘惑し放題。何某に心を奪われているなら、私の全てを使って、ユミナ様の真の一番になります!!!」


足が絡み合い、お互いの手の五指も絡む。完全に身動きが取れない私。


「待ってよ!? ゆっくりじゃなかったの?」


「ベットでは......些細な事。隙あれば狙う、これが私の行動原理です。燃えてきますね!!!」


「数秒前の自分を忘れるくらい。なんてスケベな原動力」


「私は......いや、」


起き上がり、扉を開けるヴァルゴ。

雪崩の様に倒れ込み従者達。


「はぁ!?」


いつから。いや待ってよ。この状況は実に嫌な予感......


「私達は如何なる時もを狙っています。お気をつけてください」


全く......本当に、バカなんだから。



......私は幸せ者ね。







「入るね」


扉を開け、中に入る。


待ち構えているのは白陽姫ちゃん。


「どうした? こんな夜更けに」


「ど、どうしても。白陽姫ちゃんに言いたい事があって......」


恥ずかしい気持ちが込み上がる。身体中に大量の熱が巡っている感覚。正直、吐きそう。

震えている足。立っているのがやっとだ。胸が痛い......


深呼吸をした。勇気を持とう、前へ進む。


生唾を飲む。白陽姫ちゃんを見つめながら発した。


「好きです」


「......ッ!?」


ドキドキが止まらない。もう、行け!!!


「私は、白陽姫ちゃんが好きです。大好きです!!」




水滴が床に落ちた。


白陽姫ちゃんの目から涙が流れていた。


「えっと......」


涙を拭う白陽姫ちゃん。


「よ、よかった......」


膝をつき、うづくまる白陽姫ちゃん。床へ多くの涙が落ちた。


「だ、大丈夫?」


同じように膝をつき、白陽姫ちゃんを抱きしめた。


「怖かった......ここ数日」


「私も......ダメだった」


「自分の気持ちを吐き出した。あの後、せつなを悲しませたと自分を呪った」


「そんなことは......」


「でも、待っていた甲斐があった」


私の頬を撫でる。


「私もせつなが好き。愛している」


白陽姫ちゃんは私の頬に手を添え、私は白陽姫ちゃんの背中に手を回す。




私達は唇を重ねた。

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