第111話 白銀=時空者で、嫉妬深き吸血鬼姫 VS

 アイリスがリーナを『受け入てくれ』と言ったのは彼女が希少な種族だからだった。


 時空を旅することは私には想像もできない。でも実際に私は双子座のジェミニ達の転移魔法を目撃し、使わせてもらっている。恩恵はデカい。行った場所限定だけど、行きたい場所へ即座に縛りもなく移動できるのはプレイヤー目線でもNPC目線でも魅力的。


 だからこそ、悪用する者達が現れる。



 ヴァンパインに設置されている転移魔法は女王であるマリアの申請が受理されないと発動しない。解析し技術を流用しようと邪な考えを持った者は同族でも存在した。しかし、いくら解析しようとも未知の言語が術式に組み込まれているため解読は不可能だったらしい。しかし、人の身では自分の力でチカラを守らないといけない。



 幸先の良い事に私の従者は何百年も石化していたとはいえ、『リリクロス』に蔓延るモンスターにも引けを取らない強さを有している。『スラカイト』に至っては無双状態。アイリスとマリアさんは、だから、私にリーナを託したのかもしれない。








 捉えた時には、切先が私の喉元に迫っていた。


「......ッ!?」


煌めくシューティング・流星スター】を起動。左足裏に重心を置き、地面を擦り身体を前向きから後ろ向きへ反射的に方向転換。一撃はかわせたが、いつの間にか私の頭を狩る真紅の剣身が目の前にあった。至近距離の【威圧冠】を発動。リーナさんが怯む。その隙に【ホッパームーブ】で後方へ。


 怯みがなくなり、剣先を地面に垂らすリーナ。息があがっていた。


(リーナさんの瞬間移動のタネは......ネックレス?)


 ネックレスを外してからの猛攻。正直、【煌めくシューティング・流星スター】がなかったら終わってた。

 加速スキルがないとリーナの高速移動に対処できない。でも、【チャージング・アクセルフォース】や【暴走の代償リミテッド・アサルト】ではスピード不足。


「......どうして、貴女なの?」


 息が上がっているリーナさんは私を睨む。



(会話をし、油断した所を斬る作戦かしら......【フォーカスアイズ】、起動)


 初撃の行動は【フォーカスアイズ】プラス【煌めくシューティング・流星スター】で対処できる。

 しかし、【フォーカスアイズ】を起動しているが持続時間が短い。そこでカステラから貰った「覚正する集中薬エナジー・ハワイアン」を使った。レモネードの味だった。飲んだことで視界系のスキルの効果時間が増えた。


「私......貴女に何かしましたか?」


 戦闘中に考える内容ではない。でも、確認したい。初対面からリーナさんは私に対する態度が悪かった。これから一緒にいる事になるかもだし、ちゃんと聞かないといけない。



「分からないの」


「生憎、初対面の人に睨まれる事をしてないわ」


 指を指すリーナさん。


 隙を突く作戦ね......


「安心しろ、お前みたいに卑怯な手は使わない。あれよ」


 なんか、ムカっとくる言い方ね。ハイハイ、向きますよ......


 私が向いた先にはヴァルゴとアイリスが走っている光景があった。アイリスの表情は涙目で、ガチで逃げている......


「で?」


「まだ分からないのか?」


 う〜ん、意味がわからない。リーナさんの頭上に三択の答えくらい表示してくれない。まるでわからん。


 いや......もしかして。


「貴女の狙いはヴァルゴね」



「やっとわかったみたいね、私の英雄様をよくも寝取ったわね」


 目は怒り、剣を振り上げ荒ぶる。地団駄を踏む始末。


「はっ!? 寝取るって......何、変な事言うのよ」


 仮にも一国の姫様が寝取るなんてはしたない言葉を使わないでよ......また私の中の女王、姫への憧れが崩れるから。


「我が国を救った英雄様。その圧倒的な力で数多の敵を滅殺し、凶悪な王を打ち倒す叙事詩。ヴァルゴ様に関する文献でしたら、何度も何度も読みました」


 両手を胸の前に組み合わせるリーナさん。目を閉じて感慨に浸っている......

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