第77話 未知との遭遇?

「どうかしたんですか、お嬢様」


 命からがら泊まっている旅館にたどり着いた私。

 スタミナや加速スキルを使い果たした私は部屋の入り口で仰向けになりながらお尻を上へ上げているなんとも間抜けな格好をしている。


「襲わないでよ......」


「流石に手負のお嬢様を襲うほど落ちぶれてはいません」


「言葉を出すのが困難は言い方......疲れた。こんなに走ったのなんて......初?」


 ぐったりしている私はヴァルゴとアリエスに訳を話した。


「なるほど......それは大変でしたね。ユミナ様」


「本当よ、ただ珍しい石像を知っているか近寄っただけなのに......」


「私たちのためにお嬢様に苦労をかけてしまうとは。申し訳ありません」


「ヴァルゴが謝る必要はないよ。私がやりたくてやってるだけだから」


「それにしても、ユミナ様の装備がそんなに珍しい物なのですね」


「私も初めは星刻の錫杖アストロ・ワンドの方かと思ったんだけど、幽天深綺のファンタズマ魅姫・ドレスもとは思わなくて......」


「アタシにはごく一般的なドレスなのにですね」


「それって、石化前の世界ってこと」


「はい、見た目も派手で性能も良しの装備品なんて昔にはありふれた物ばかりでした」


「これまでに立ち寄った街にいるお嬢様と同じ冒険者は、失礼ながらどれも似たような格好ばかりで。なんとも言えない思いです。あれでモンスターと渡り合っていると思うと心配しかありません」


「ヴァルゴ基準だと......ダメんだね〜 はぁ、気持ちいいよ......二人とも」


 今の私は旅館専用の浴衣を装備してヴァルゴとアリエスによるマッサージを受けている。ヴァルゴは背中を、アリエスは足を担当してくれている。


「マッサージ店でも開業しようかな」


 これだけ上手いと店を開いて、お金を稼ぐのもアリかもしれない。


「ユミナ様にならいくらでもやってあげれますが、他人となると」


「アリエスに同意ですね、どこの馬の骨かも分からぬ者にマッサージするよりもお嬢様を癒す方が私には最優先事項ですから。断固として遠慮します」


 僅か数秒の開業だった。さらば、マッサージ店。






「うん? クイーンさん?」


 オニキス・オンラインはフレンドしたプレイヤーとメールにやり取りが可能。主な活用法は一緒に狩りに行く予定組み。メンバーの欠員が発生したから空いてる。誘い方は人それぞれ。


「少し、出てくるよ」



 私が再び外出するので帰ってきたタウロス含めてオトモすると志願してくれた。でも、遠慮してもらった。理由はいくつかある。まずはクイーンさん自身から注意書きがあった。『ユミナ一人で来る』『ユミナの従者はかなり目立つ』『私のフレンドだから掲示板に無断載せはしないが、念のため』。


 その他、びっしり注意書きが羅列していた。なんなら主となる『一緒に狩りに行こう!』よりも目が入るメールだった。


 私たちは目立ち防止用として純白の霊奏シルク・ヴェールを各一つずつ所持している。でも、それはあくまで個人行動。もしくは私たちだけのパーティーで街中を歩く場合に周りの人々からの混乱を避ける対策。


 さすがに私の後ろについてきたヴァルゴたちが純白の霊奏シルク・ヴェールを装備したままクイーンさんとクイーンさんのパーティーメンバーがいる場所に向かえば、私一人があさっての方向に独り言を喋っている危ないプレイヤー認定されてしまう。




 私は星霊のステータスやクエストでもある《星霊探しの旅サイン・セクスタント》で星霊の現在位置を把握できる。これは純白の霊奏シルク・ヴェールを装備していても例外なく適用された。


 私の視界には純白の霊奏シルク・ヴェールを装備していても星霊の姿がはっきり視認される。でも、私以外の者は視認できないけど。



 諸々、考えた結果。星霊の同行は断った。三人はボルス城に送り届け、私は一人。クイーンさんとの待ち合わせ場所に向かう。




「集合場所は......『ラパン』を西に......洞窟?」


 星霊のオトモ拒否の理由はやっぱり、プレイヤーにある。今回のメンバーはクイーンさんが所属しているギルドとは関係ないプレイヤー。クイーンさんの個人的なフレンドたち。みんなよい人たちとメールに記載されていたが、クイーンさんの機転でオトモを拒否した。


 ヴァルゴはオニキス・オンラインのプレイヤーにはかなり人気な存在らしい。主に女性陣が心を打ち抜かれたとか。掲示板にヴァルゴ関連のスレがいくつもある。


 私も一度、覗いてみたけど、なんとも微笑ましい掲示板の数々だった。大抵は情報求むや情報よこせなどといった内容が飛び交う系らしい。


 ただヴァルゴに関してはそういった内容を言い合うより完璧女騎士を遠くから見ているだけでよいがメインだった。



 自分の従者が周りもメロメロにしてしまう魔性の女なんだと変な気分になるけど、マイナス面が少しなのはありがたい。

 で、今回のメンバーの中にはそんなヴァルゴを一度見たプレイヤーたちらしい。ヴァルゴにメロメロな人たちに対してヴァルゴと一緒に来れば阿鼻叫喚になること間違いない。





 以上のクイーンさんの予防案と私の叡智な考えでオトモはなしの結論に至ったわけですよ。






「暑いわね......当然か。火山が近いんだから」


『ラパン』にあるフィールド、『火上加煙かじゅうかけ』。名前から想像できるように、煙は大量。エリアに点々とマグマだまりが設置されている。



 ゲームの中である以上、経験したことがない出来事をしようと日夜危険な行為に勤しむプレイヤーもいる。


 中でも大変人気? な行動は毎日煮えたっているマグマだまりの中にダイブする行動。正直マグマダイブに惹かれる要素はなんなのかと疑問に思う私。




 あぁ......早速、第一マグマダイブ者、発見......うわぁ、助走してからの高くジャンプ。空中でフォームを変え、腰やひざを曲げずに手先から足先までよく伸ばしてマグマに飛び込んだ。


「水泳の飛込じゃないんだから......」


 煙や熱気を感じながらの移動で疲れていた。でも、マグマの飛込を何回も見たことで元気な気分になれた。自分でもおかしな気分なのは重々承知している。


 頭が逝っている私は、五人一斉にエビと同じで折り曲がりながら飛込する姿を横目で見つつ、待ち合わせ場所に向かうのだった。


「暑さ対策......あれ使おうかな! 武器の性能も確認したいから、せっかくだし装備してモンスター狩ろう~」











 ◇


「じゃあ、次......空中で回転しながら入るわ」


「地面に頭、ぶつけるなよ......なぁ、」


「うん、どうした?」



「さっき、ここを通ったプレイヤー見たか?」


「いやぁ、バク転しながらマグマダイブするためのシミュレーションしていたから......でも、別に不思議じゃないだろう。プレイヤーがここを通ったなんてさぁ〜」


「それがさ、多分、女性プレイヤーだったんだけど......装備が変だったんだよ」


「全裸は......ゲームシステム的に無理か。半裸状態だったとか」


「頭がのチャイナドレス姿だったんだよ......黄と黒色の拳武器を両腕に付けながら歩いていたんだよ」


「......お前、連続で十回も飛込して頭、イカれたんじゃねえか。今日はもうログアウトしろよ」




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