第53話 背後の女騎士は警戒中!

「助けてくれて、ありがとう。私はクイーンと言う」


「あ、初めまして…………ユ、ユミナと申します」


 クイーンさんは顎に手を置き、クスクス微笑む。

「そんなに畏まることはないよ」


「すみません、私……人見知りで」

 やっぱり初めて会う人に対しては現実でもゲームでも慣れない。そう、慣れないんだ。でも......

 なんだろう。初めて会った気がしない。

 と、とりあえず何か言わないと。静寂の空間は落ち着かない。



「えっと、大丈夫ですか? 急に倒れてビックリしました」


「アハハ、すまない。道に迷ったことと状態異常になってしまって」


 まさか、過去に一度進んで以来のこの場所に別ステージがあるとは思わなかった。初めて遭遇する敵の攻撃を喰らってしまい、火傷・軽い麻痺・毒・腕の一部が凍傷の状態異常のフルコースを受けてしまい、そのまま倒れてしまった。


 全く情けない。もしもここにヴェインがいれば腹を抱えて爆笑していたかもしれない。



「状態異常は私が解除しましたので、もう大丈夫ですよ」


 私が受けたのはそこそこに上位の状態異常攻撃になっていた。序盤のモンスターが繰り出す状態異常攻撃なら持っている回復アイテムだけで事足りる。


 この森で出くわしたモンスターが放った攻撃はどれも強力で持っていた回復アイテムでは焼け石に水だった。





 それをこの桃髪の女の子は簡単に解除してくれた。中々に”できる”プレイヤーだと感じた。

 あのアホヴェインはユミナの後ろにいる女騎士にご執心だけど、私は目の前にいるユミナが少々、気になっている。


 防具類は序盤って位のレア度。でも、持っている武器が釣り合わない。おそらく神々しい杖の性能のおかげで私の状態異常が治ったと考えている。




「で、早速本題に移るんですが……ここで何をやってなんですか?」


 当然の反応。街やその周辺で遭遇するなら単なる偶然で済む。が、今私たちがいるのは森の最奥。出会うこと事態、奇跡に近い。



 ここは変な例え話とかでお茶を濁す手も勿論、ある。しかし、このユミナと名乗るプレイヤーの背後にいる人物からの濃度の高い威圧が私にのしかかる。



 ヴェインの目的の人物が私の目の前にいるのは朗報。初めてその素顔を見たときには女として負けたと感じた。ゲームの一キャラに対して何言ってるんだと思うが、それだけの美貌を女騎士は持っている。



 それとは裏腹に目の前の女騎士は危険人物でもあった。

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