第51話 奇妙な怪盗者?

「ねぇ、今更なんだけど......帰らない?」


 私、ユミナの提案にその場にいた全員の目が点になる。


「ここまで来て、どうしたんですか。お嬢......ユミナ様」


 もう、私はツッコまない。ヴァルゴは私の名前を直さないと心で結論付けた。

 いや、だって......


「怖いじゃん」


 ヴァルゴ以外のみんなは理解した顔を浮かべる。


「古城は大丈夫でしたよね?」


「いや、あれは......アシリアさん救出とかでテンションがおかしかっただけで。本来の私は怖がりなのよ」


「それではあたしたちがユミナ様を囲う状態で中を探索しましょう」


「それはありがたいんだけど......なんで平気なのよ」


「お化けなんて......過去に戦いまくったからな。この洋館以上に不気味な場所で」


「墓地とか地下室とかありましたよね」


「中でもめんどくさかったのは......」


「「「不死鳥の幽霊」」」


 なんでそんなに女子会みたいに思い出話をやっているのよ、星霊さんたちは。

 てか、不死なのに幽霊って言ってて不思議に思わないのかな。

 星霊の具体的な仕事は知らない。けど、これだけは確信してる。


 私は星霊にはならない――――――絶対に。




「アクイローネは平気なの、あれ」


 私が指差す方を見るアクイローネ。


「まぁ、怪談番組とか良く見るし。耐性はあるよ。ユミナだってスプラッター映画を一緒に見たじゃん」


「あ、あれはみんなを盾にして見ていただけ。それにやばいシーンは目を瞑っていたし......」


 古びた洋館。いかにも何か出ますよと全面に押し出している不気味な建物。所々、壁や屋根が壊れている。

 寂れた館は三階建ての大きさ。探索しがいがあるけど、それだけ私の精神が下落する証拠。

 ゾンビパニックが起きた日には全魔法をバフ系スキルをモリモリにして辺り一面を火の海にしてしまいそう……


「なんでこんな森の奥に館が建っているのよ」


 どんな理由で建ったかは、定かではないけど建物がある以上......誰かが住んでいたのは明白。

 その何某はもうこの洋館には居ないが、代わりにお化けなど良くないものが棲みついた。それが分かってしまう状況は私の目の前に広がっている。


 洋館の壁には蔦などが生えている。それとは別のモノが生えて、こっちを見ていた。


「オバケが壁とくっついて、コチラに手招きしているんだけど」

 無数のオバケがそこにいた。定番の体が白色のオバケ。

 何で、罠満載の洋館に入らないといけないのよ……


「い、行きますか」


「もの凄い怯えていますね……お嬢……ユミナ様」


「最悪の場合は、ヴァルゴを盾にするから」


「ふふう、やはりお嬢様を守れるのは私だけってことですね」


「このポジティブ思考なら問題はないか……」



 門をくぐろうとした瞬間、【気配感知】に反応があった。

 後ろに振り向くと、白黒のタキシード風を着ている女性がそこにいた。

 よくよく見たら、アニメとかで見たことがある怪盗服に、見えなくもない装備だった。


 怪盗服を着ている女性。腰まで伸びている真っ白な髪、モデル体型のような細い体は烏の羽のような艶のある黒色のワンピース・ドレスに包まれている。ドレスの上に羽織っている純白の白コート。目元は、白色のベネチアン風マスクで覆われており、素顔は分からないようになっている。



「た……」


 全員が武器を構える。さっき戦闘で戦ったプレイヤーキラーの仲間だと感じた。

 疑心顔になるが、すぐに解消された。


 女性は倒れた。


「た、助けて………」


「え、えぇぇぇ」

 オバケの恐怖が一気に消し飛んでしまった。

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