第50話 女子、◯日会わざれば刮目して見よってね〜

 元々、アクイローネは素材集めのために三つ目の街から東に進むとある森にいた。奥に進むに連れと不気味さを増していてるフィールド。草木を掻き分け、見つけたのは古びた洋館だった。素材集めの集結したアクイローネとパーティーメンバーは攻略サイトに載っていないダンジョンを見つけ、テンションを上げたまま洋館内を探索するつもりだったが......


「はっきり言うとね、全滅したの」


「なんでそんなにウキウキした顔で言うのよ、怖いんだけど......」


「仕方がないじゃん。玄関の扉を開けた瞬間に三つ目の街の宿屋で目を覚ましたんだから。もう笑うしかないって〜」


 友人の精神を心配する私、ユミナは星刻の錫杖アストロ・ワンドLv.5を構え、『アイディ』で氷の槍を生成した迫るテントウムシモドキのモンスターへ発射した。


 それにしても星刻の錫杖アストロ・ワンドもLv.5になるとは考え深いものがある。最初は無価値な杖だったのにここまで変貌を遂げるとは......子どもの成長に泣いてしまう親の気分。なんか泣けてきたよ......


 私の攻撃が直撃したテントウムシモドキ……名前はコクシバグ。敵からの攻撃を受け続けるとてんとう虫の特徴とも言える赤い甲羅が変色する。最終的に黒一色になると一定範囲の生物を殺すことができる即死級の行動を起こす。死を免れる方法は簡単でコクシバグを一撃で倒す。

魔法使いの右手マジカル】、【加速する弾丸イグナイト・バレット】、【二つの絆ダブル・アクション】を起動、敵を貫通させる氷属性の魔法。クリティカルが上がった『アイディ』は意図も簡単にコクシバグを爆散させた。


「アイテムゲット!! ヴァルゴお願い」


「かしこまりました」


 コクシバグを倒したことでてんとう虫の甲羅部分がドロップした。素材類全てヴァルゴに渡してある。


「ユミナ……手際良いわね」


「だって、さっさと拾わないと背後からモンスターが襲ってくるし」


「だから、火属性の魔法じゃなくて氷魔法にしたのか。魔法使いで火属性の魔法を森でぶっぱなすと小型モンスターに完全敵対視のモーションが入るから」


「攻略サイトで見てから使うの遠慮している。でも、大量に鳥モンスターを倒した結果できた武器もあるし!」


 左手に兎鳥(とう)の短剣を装備する。


「お嬢、その武器耐久値少なくないか」


「…………忘れていました。ごめんなさい」


 オフィと戦闘で兎鳥(とう)の短剣の耐久力が風前の灯だった。その状態を放置して今に至る。


「貸してみ。簡易的だけど直すから」


「ありがとう、タウロス」


 タウロスは製造の金槌ビルド・アップで私の武器をメンテしてくれている。

 製造の金槌ビルド・アップは鍛治と戦闘の両方に使える。一応、武器扱いらしい。

 中々、鍛冶職人の作業を見ることはないのでタウロスの作業に魅了されていた。


「で、ヴァルゴ…………まだいる?」


「ずっといます。私たちが動かないのであちらも留まっているようです」


 叫棺きょうかんの洋館を目指している私たち。「ティーグル」の門からつけている奴ら......確認するだけで五人はいた。相手が間抜けなのか分からないが隠れていない。あれがブラフだと思いたい私がいる。本陣は隠蔽やフィールドの風景に同化していて、こちらが油断している内に背後からの襲撃とか。だから、あの五人は囮役として機能していると考えたい。



「まぁ、どうせヴァルゴたちが目当てでしょうね」


「女性なら良いですが、異性となると......」


「見るからに野蛮な格好ですね。アタシはちょっと遠慮したいです」


 兎鳥(とう)の短剣を製造の金槌ビルド・アップで叩くタウロス。

「そう言うなよ、アリエス。好かれることは良いことだぜ」


「言葉が通じてないみたいね......男なんて無理よ」


「ハイハイ、そこまで。で、作戦なんだけど......」


「ねぇ、貴方たち......どうしてそう冷静なのよ」


 私たちがあのゴロツキ風のプレイヤー? かは判断できないけど、迎撃作戦を練っている時にアクイローネだけは反応が違う。


「アイツら、レッドプレイヤーだよ。逃げないと......」


「アクイローネ、どうせこのまま逃げても狙われる確率が増える、だから......」


「こちらから、お迎えします」


「流石、ヴァルゴ。分かっているわね」


「私はユミナ様の従者ですから」


 えっへん的な顔をするヴァルゴ。定番化しつつある私たちのやりとりに呆れるアリエスと、横目で見ているが気持ちはアリエスと同じのタウロス。



「ほい、お嬢。できたぜ」


 手渡された兎鳥(とう)の短剣。心なしか刀身が輝いているように見える。

 新品同然に戻りましたとの合図なのかもしれない。しかし、タウロス......この子、やりよる!!


「ありがとう、タウロス!!」


「で、作戦は終わったか?」


「ヴァルゴには近距離戦闘を任せます。私が中距離担当かな。ヴァルゴの隙をついて奇襲する輩を魔法で狙う、もしくは敵の陣形を崩す役割をします。アリエスは後衛で支援重視。アリエスとアクイローネの護衛はタウロスにお願いします」


 全員がうなづく。


 振り返る私たち。連中は隠れるのをやめて前に進み出す。

 皆さん武器を構え始める。片手剣、斧、刀......殺傷能力が高そうな武器だこと......


 話合いは無駄ね。そちらがその気なら......

「行くわよ、みんな」










 えっと、結論から言いますと、瞬殺でした。全員、爆散してプレイヤーキラーが保有していたアイテムが全て地面に落ちた。山盛りのアイテムたち......


 結局、敵は五人しかいなくて奇襲とかも全くなかった。これは、【気配探知】を発動して判明したこと。でも、【気配探知】に引っ掛からないように高度な隠れ蓑術的なスキルや魔法があるかもしれないと思い、警戒しながら戦闘していたけど。


そんな奥の手は存在しなかった。


レッドプレイヤーなんだからそこは悪に徹しなさいと思ってしまう私がいた。この考えになったのは全てオフィュキュースのせい。あんな陰湿なやり方を事あるごとにやるから勝手に十手先もあるだろうと考える習慣が身についてしまっていた。


 一人だけ戦闘を楽しんでいるレッドプレイヤーがいて危ない雰囲気だったけど、ヴァルゴのターゲットを指定して剣を振るうことで行動を封じることができる【重力劍(ポリマ)】で動きを抑制。ソイツは重くなった体のまま、周囲の地面と一緒に上から見えない圧力で押しつぶされ、へこんでいった。で、無防備のまま【双天打ちヴィンデミア】でアバターがひき肉状態になって、さよならした。


 二人ほど私たちへ走るプレイヤーが来た。これもちゃんと撃退した。もうね、敵になっていたプレイヤーの顔が驚きの表情しかなくて申し訳ない気持ちになっていた自分がいる。


 現状の【星なる領域スターリースカイ】では8分間、パーティーのHPが減らないので例え、敵の攻撃を受けてもダメージがゼロ。


プレイヤーとの距離を詰めてゼロ距離高火力の魔法を発動させた。森プラスモンスターだと無限に出現してしまうのでなるべく使用を控えていた【ファイディ】で業火に包まれた敵A。


残りの一人は消防車の放水の如く発射される【ウォーディー】で水攻撃をしてからの【アイディ】で敵Bの体を氷漬けにした。なんとも哀れな表情を向けていたが、油断するとこちらが不利になるため手加減せず全力で氷の塊に特大の穴を空けた。


 功労者は勿論、星刻の錫杖アストロ・ワンド。【装甲を備えつけるパワー・ツール】で兎鳥(とう)の短剣の攻撃力分、私の筋力STRを上げてからの【魔法使いの右手マジカル】、【二つの絆ダブル・アクション】。強化された【仲絆の力パワー・オブ・ブレイブ】で獲得したのはタウロスの幸運LUC:300とアリエスの魔法攻撃力MAT:600だった。こればかりは星霊のステータスからランダムに借受されるので仕方がない部分があった。でも、ピンチをチャンスに変えてこそ一流ってもの。


 アリエスの魔法攻撃力MATでは未だに燃えている敵Aに追加で【ファイディ】。釜茹でにあっている気分かもしれないな......あの敵さん。


 タウロスの幸運LUCもしっかりと有効活用した。【幸運値】補正とクリティカル発生時、敵を麻痺状態にさせる【幸福の力ラッキーパンチ】を起動。クリティカル率が上昇するスキル、【二つの絆ダブル・アクション】でも十分に敵にクリティカル攻撃が発生する。が、折角なのでとタウロスの幸運LUCも上乗せした結果、ゴリゴリと敵Bにダメージが入る。


 折角、タウロスが直してくれた兎鳥(とう)の短剣は多用しなかった。地味に気に入っている兎鳥(とう)の短剣だったけど、敵プレイヤーにはダメージが入っている様子がなかった。オフィュキュースの時は通常スキルや【星霜せいそうの女王】スキルをマシマシに付与したことでなんとか戦えていたけど、本来の兎鳥(とう)の短剣のスペックは最序盤の武器。星刻の錫杖アストロ・ワンドにバフを与えていたことでバフなしの兎鳥(とう)の短剣にダメージが入る訳もなく最終的には【装甲を備えつけるパワー・ツール】の発動条件にしか使っていない。


 タウロスがいることだし、新たな武器を生産してもらうのもアリだ。そうとなれば、まずは素材集めのために叫棺きょうかんの洋館で出現するモンスターを乱獲しよう。


 とまぁ、色々ありましたが、戦闘は無事に終わりました。



「みんな、お疲れ様」


「一人だけしか相手できなくて物足りない感があるけど」


「そうやって驕っているとオフィの時みたいになるわよ」


「言うなよ......」


「しかし、同じ冒険者なのに殺しをやる冒険者がいるとは......これからは外だけではなく、街の中も警戒が必要ですね」


「それは、大丈夫だよ。街の中は安全に守られているから。殺陣が行われたら無力化されるようになっているし」


「でしたら、安心ですね。これで街でもユミナ様と愛でることができます!!」


「ヴァルゴ......自重してくれないかな」


 集団プレイヤーキラー相手でもなんとかなったことに私は内心、驚いた。レベルの差がどれだけあったのか今となっては分からない。何百年も石化されていて思い通りの戦闘ができるまで時間がかかってしまった星霊たちも徐々に勘を取り戻している。ヌルゲーって言葉が私に降りかかっているけど、私のヴァルゴたちと楽しくやれればそれでいい。


「さてと、恐怖の館へGO!!!!」


「ユミナ様、叫棺きょうかんの洋館です。”きょう”と”の”しか合ってません」


「多分ですが......発音は正しいけど、文字が違うと思います」


「アリエス。お嬢.....ユミナ様は時々、ポンコツになるので気にしては身が持ちませんよ」


「聴こえているんだけど......ヴァルゴ。罰として周りに落ちているアイテム回収して」


 ヴァルゴは周りに落ちている襲撃者たちのアイテムを見る。

 山盛りだった。


「いつもやっていることですが......」


 機敏な動きでアイテムを拾うヴァルゴと手伝うアリエスとタウロス。


「ねぇ、ユミナ」


「うん?」


「貴女、いつからそんなに戦闘ができるようになったのよ」


 アクイローネは私たちの戦闘をただ見ることしかしていない。自分ではあまりしたくないプレイヤーキラーとの戦闘。

 プレイヤーキラーということで狡猾にコチラを襲ってくる。逃げるのが定石。初めは敵との数が同じだからなんとかなるとユミナは考えたから戦うことにしたとばかりに思った。でも開始数秒で認識を改めた。


 ユミナも凄く戦い慣れているけど、ユミナの従者である三人が過剰戦力だったこと。最前線のプレイヤーでも勝てるか分からない。その位の実力をNPC三人は有していた。ヴァルゴは近距離戦闘では相手したくない攻撃手段やスキルを持っていたし、タウロスはメイン武器ではないもののアリエスとアクイローネを守ってくれた。そして、後衛でユミナとヴァルゴに支援し続けていたアリエス。回復とバフを何重にも掛けてくれて無敵感が半端なかった。支援担当にも関わらず、ちゃんと攻撃手段を持っているのも驚いた。剛腕の巨人デストラクションと叫びながら拳でもパンチ一発で敵の鎧が砕けた時は、口を閉じることはできなかった。



「ヴァルゴの教育と変態蛇遣いとの戦闘が主なかな〜」


 笑顔で私の腕を掴むユミナ。

「行こう!! アクイローネ」 


(やっぱり、敵わないや......)




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