第49話 憩い場からホラー場へ超特急コース
「落ち着きますね」
紅茶を飲みながら風で揺れる木々を眺めるアリエス。流石は元聖女様。非常に立ち振る舞いが綺麗。
なんてことのない風景にちょっとしたスパイスがかかることで一枚の絵画になったみたいだった。
「酒が置いてなかった......」
「ここはカフェです。そもそも置いてないし、他のお店でもこんな明るいうちからお酒があるわけないでしょう、タウロス」
「アタイのエネルギー源は酒だから〜」
「酒乱はほどほどにしてください。昔、タウロスとレオが酔って、周りの物を破壊していたでしょう」
「そんなこともあったな〜 まぁ、若気の至りってやつだ」
「”若気”が適用される年齢でしたっけ。あの時の私たち......」
「言わないでください......悲しくなります」
コーヒーを一口含むヴァルゴ。
「お嬢......ユミナ様。いかがですか、私が選んだコーヒーは」
「美味しいわ。ありがとう、ヴァルゴ」
「コーヒーのことでしたら任せてください!!」
「あとさぁ〜 良い加減に私を”お嬢様”か”ユミナ様”のどちらかに呼び名を統一させてよ。ここままじゃあ、私の名前が”お嬢......ユミナ様”になるんだけど......」
「は、恥ずかしくて......えへへへ」
ニヤニヤしながら体をくねくね動いているヴァルゴをタウロスとアリエスが呆れ顔になっていた。
「キモいぞ、ヴァルゴ。これがあの冷酷騎士だとは慣れないな.....」
「ここにはアタシたち以外がいるんですから。アタシたちの行動一つでユミナ様の顔に泥を塗ることになります」
アリエスの言葉に我を戻したヴァルゴ。咳払いをする。
ヴァルゴは
「ゴホンッ。失礼しました。改めて私はヴァルゴと申します。お嬢......ユミナ様の従者をしています」
「同じくアリエスと申します。ユミナ様の従者です」
「アタイはタウロスだ。お嬢の従者をやっている、よろしくな」
「タウロスは言葉遣いを学ぶ必要がありますね」
「良いだろう、堅苦しいことは苦手なんだよ」
「数秒前のアタシの言葉が意味を成していない」
三人の痴話喧嘩? がまた始まった。
「ねぇ、ユミナ」
「いちいち驚くと疲れるよ〜」
「どんな手段で美女・美少女を侍らせたのよ。コツとかあれば教えてよ」
「”従者”ね。これ大事なこと、変に曲解しないでよ」
「私だって、美人NPCと冒険したいのよ」
「そのうちね。で、これからどこに行く?」
「もう決めている」
「夏ってことで......お化け退治しましょう!!」
地図上に名前が表示される。
「......
なんともお化け屋敷に相応しい名前だこと。
ため息の私。だけど、ヴァルゴたちは別だった。
「お化けですか、面白そうですね!」
「アタイ、洋館行くの初めてかも!」
「洋館って、内部は普通ですよ。でも楽しみ!! もしかしてお化けなら......」
「ユミナの女たち。意外とノリ良いわね」
「”女”じゃない、”従者”......はぁ〜」
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