第48話 唯一への愛情

タウロスとアリエスはアクイローネへついていく。

 その後ろを私とヴァルゴが歩いている。


 私はヴァルゴの鎧を、腕の上下運動でポコポコと叩く。


「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ」


「地味に痛いので止めてください、お嬢様」


「敢えてやっています。罰です」


 自分の行動に意味がないとでも思っているのか。



「何、公衆の面前でアホなことを言うのよ」


「......お嬢様が長い眠りにいる間、私は考えたのです。今までお嬢様に黙って攻められる不甲斐な私でした。しかし、今度からは私から攻めようと考えたんです」


「だったら、他人がいないところでやってよ!!」


「実は先ほどの方々から”せふれ”? だったり、私のぺっと? になりたいなどと言われてしまって......」


 あの人たち、私の従者に何余計な知識を与えるのよ。最近のVRゲームには優秀なAIが搭載されているらしく

 NPCが私や他人の言葉を理解しようと勝手に動くとか。今度は厳戒態勢にならないと、私の従者が変なことに興味を持ってしまう可能性が出てくる。


「言葉では解決できない状況でしたので......」


「それで、私を使って事を納めたのね。免罪符的な......」


「彼女たちは誰もが魅力的でした。ですが、私が見ているのはこの世でたったお一人です」


 眩しい表情を浮かべるヴァルゴ。

 その顔はやめてよ......恥ずかしいから。本当に油断するとこっちがどうにかなりそうだよ。


「あのような行動をした理由は分かりました。ですが、今度からはダメですからね」






 私は歩を進める。


「ダメなんですか」


 振り返す私。ヴァルゴと目が合う。


「あ、あ、当たり前です。ほ、ほら、行きますよ!!」


 ヴァルゴの口角が微かに上がる。

「..........................................はい」



 実の所、小道にいるがその場でログアウトしたい。そして、早くベットに入って静かに過ごしたい。

 頬が染まるのを感じる。頬へ集まった熱量はアバターの体を鎧のように覆ってみせた。

 口を開くが腕で塞ごうとした。少し遅かったらしく、発した言葉が漏れた。

 幸いだったのが誰にも聞かれていない点だった。


「..........................................ばかっ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る