第38話 新米の女王と荒天竜の女王
「『
私は自分の体がひり付くのを感じる。ステータスを見ると自分のHPが徐々に減っているのを確認した。
毒か……しかもかなり強力な毒。
状態異常。主に毒や麻痺が敵の体に異常を発生させるメジャーな手段。毒なんて全ての状態異常の中でもポピュラーなもの。効果もお馴染みのモノ。毒の攻撃を受けた者は少しずつダメージを受ける。毒を強化して猛毒とかにすれば更にダメージ量が増えてしまう。毒攻撃を一回でも受ければ治すまで必ずHPを削られる。もう一つは麻痺だね。毒と違ってHPが減ることはないけど厄介なのは自分の行動が出来ない点。所謂、行動不能なところ。麻痺なんてあの髪の蛇たちが持っていたら一気に麻痺状態に陥ってしまう。他にもマイナス作用が多くあるけどまぁ、そんなところだよね。でも、状態異常と言っても悪いことばかりではない。自身のステータスを上昇させるバフ効果も厳密には”異常”の分類。
「一気に殺さないわ。じっくりじっくり苦しみなさい! じわじわっと殺してあげるから!!」
確かに強力な攻撃。数秒この霧に触れていただけで自分のHPが半分も持っていかれた。私だけじゃなくヴァルゴも同様だった。霧で前が見えないが、高笑いしている
「本当に……残念なお人だね。『
私とヴァルゴの周りを天から眩い光が石像を包み込む。天井があってもお構いなしの月光色。光は淡い青色へと色を変える。場内にある悪い物質は全て浄化されていった。空気が清潔になり、新鮮さを取り戻した。てか、新鮮な空気ってなんだろう? まぁ、良いか!
私とヴァルゴにステータスに毒が抹消された。『
私は
「毒なんて……効かないわよ、オバさん!!」
オフィュキュースは形態変更(モデリング)を使用した。ヴァルゴを同じスキルを持っていることに驚いたが星霊全員の共通スキルなら納得がいく。
オフィュキュースは人型から巨大な蛇へと変身した。私たちの方へ胴体を滑らすように這い出す。迫るのが床の振動で伝わる。
「丸呑みよっ!!」
巨大な蛇となったオフィュキュースが私たちに近づいてくる。無駄にデカくなった
太い胴体を、くねらせ動き回る。
大きく後ろに跳ぶ。同時にオフィュキュースは口を開く。
「アンタにこれを出すとは思わなかったけど。【想像波形(イマジナリー)】・【神秘融合(ユニゾン・サビク)】......『ヴェノム』・『ショット』」
口から放出されたのは毒々しい塊。回避するが、それを邪魔するように大玉を連続で発射された。
毒を受けても『
『
「しまった!?」
【EM】の残量が残り”5”になる。『
「頼みの綱はおしまいね〜 【神秘融合(ユニゾン・サビク)】......『ヴェノム』・『レイン』」
天井から蛇の形をした毒が降ってきた。まるで毒の雨。逃げ場はどこにもない。
ヴァルゴは無数に放ってくる毒蛇の雨を速度上昇スキルの『ライトニング』で必死に攻撃を躱し、私を捕まえて一時的に避難行動を取ろうとするが、豪雨の如く毒蛇は降ってくる。
徐々に私のHPが消えていく。残り三割になった。なお加速してHPが減っていく。絶望の一歩手前にいる私だったが、ニヤリと笑う。
「おしまいはまだじゃないかしら!! 【
私の頭上に満月が生成された。
「月があればこっちのモンよ!!」
月光を浴びた
まだ、戦える。『
一分毎に10%HPを回復してくれる魔法。通り雨のように五分と短い時間しかその場に出せない。
「【
蛇の姿から人型となるオフィュキュース。身につけていた『蛇遣い』シリーズの装備が変貌を遂げる。
頭部の黒髪は変色を起こし、青色の蛇が生えてきた。肩から腕には緑色の蛇が巻きついていた。
黒一色の装備から紫メインのドレスになる。所々に天鵞絨色……暗めの青味を出している緑色が装飾されていた。下半身が蛇の時は妖艶なラミアを彷彿とさせる姿。
「『レイン』!」
オフィュキュースの今の髪の毛である蛇たちが伸びる。長く伸びる髪の蛇は一斉に私に向かう。どの蛇も獰猛な目つきと牙を持つ。私を噛み砕くためなのかそれとも腹に収めるためなのかわからないが危険度マックスなのは変わりない。
一匹が迫る。牙の先端から液体が垂れていた。あれに触れてはいけないの緊急信号が私の体全体に送られた。
「嘘でしょう……」
蛇たちから逃げていた私は驚愕していた。私が先ほどまでいた床部分が朽ちていた。
「あの液体は……モノを溶かす性能があるみたいね」
酸攻撃をしてくるなんて……敵が持っていい攻撃手段ではない。お手軽に相手を損壊させる性能があるんだから。酸攻撃が当たれば、損壊前に火傷を起こす。体内では火傷の状態異常。体外では体が腐ってしまう。牙から滴る液体が全て『酸』だけなら良いのか悪いのか複雑な顔を出した。
それが判明したのでますます蛇たちの攻撃を受けるわけには行かなかった。1匹なら注意深く見れば良かったけど、全ての髪の蛇が敵。つまり私を溶かす攻撃を有していた。
なので、一点を凝視するのではなく、全体を見ないといけなくなった。今尚、伸びている髪の蛇たち。本体のオフィュキュースは高みの見物を決め込んでいる。
絶対に超至近距離でグーパンチしてやる。などと意気込んでみたのは良いけど、正直この蛇たちがうざいしめんどくさい。
逃げてきたが段々、追い詰められていく私。
「あらあら、床が穴だらけね」
意図的だろう。私が必ず回避すると見越しての蛇攻撃。次なる布石として敢えて蛇の牙を床に触れさえたと考えられる。牙が少しでも床に当たれば、時間経過で勝手に床に穴が空く。そうなれば逃げている人間……私の行動も自動的に低下してしまう。それだけではない。
「サンダー!!」
後方から迫る蛇へ稲妻を放つ。二匹を黒焦げにして倒したが、残りの髪蛇は攻撃の手を緩めない。
床に空いた穴が複数あれば下を潜って別の穴から飛び出せる。奇襲攻撃も可能になる。加えて何匹戦闘不能になっても無数の蛇がいる。
「次の行動が決まったわ!」
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