第32話 人は時として知能が低下してしまう
場面は戻り、『ヴァーシュ』のメインストリート。
男どもは地面と接触して起き上がれないようになっていた。見た目に反しず防御力も高く、いざとなればかかとでもモンスターを指すことができるハイヒール。鋭く対象を貫くかかとは地面に這いつくばっている男どもの背中に置かれていた。
このまま死なすのもアリと考えた女性陣。HPがなくなりリスポンしたら一定時間デメリット効果がある。だが、死ぬとはある意味簡単な行い。このまま生き地獄を味わせようと思い立った女性陣は満場一致で首を縦に振る。周りの者たちも心は同じだった。既決したことで更なる地獄が男性陣に降りかかることとなった。
「団長……何やってるの?」
少々、リアルで遅れたことで地面が阿鼻叫喚となっているのを恐怖して自分のギルドのリーダーに話かけた怪盗服の女性。腰まで伸びている真っ白な髪、モデル体型のような細い体は烏の羽のような艶のある黒色のワンピース・ドレスに包まれている。ドレスの上に羽織っている純白の白コート。目元は、白色のベネチアン風マスクで覆われており、素顔は分からないようになっている。
「あぁ、遅かったな。少し待ってくれ、このアホに死よりも恐ろしいものを味わせるから」
「は、はぁ〜」
団長が言った『アホ』とは初期メンの一人で名前はクサケ。アタッカー担当で中々に使える人。男気溢れる武人のような男性。色恋よりも強いモンスターと戦いたい戦闘狂。なのだが、今の彼の表情は恋する一人の男の子となっていた。
「私には一切振り向かないくせにぽっと出の女騎士にほの字になるなんて……似たような服装なのに……どうしてよ、えぇっ!!」
団長とクサケはリアルでは幼馴染。そのためなのか団長の今行われている攻撃行動は少々、リアル面も含まれている。
普段の彼女はお淑やかなのにと思う怪盗服の女性。今日だって学園でちゃんと仕事をしていたのに自分と別れた後の時間、何があったのかと考え込む怪盗服の女性。
「それより、
名前を呼ばれた怪盗服の女性。
「何?」
「いつもはキッチリと時間通りにギルドに来る筈のクイーンが今日はどうしたの?」
「ごめん……ただ」
「別に責めてないけど。まぁ、今日は聖女ツアーも最後の地だからもらえる特典を逃すかもと思っただけだし」
「いや、その……『イモウト』と」
「あぁ〜 例の義妹さんね〜 喧嘩でもした?」
「それはしてない。ただ……ログインする前に義妹とハイタッチしてね」
「ふ〜ん」
「嬉しくてニヤケ顔を鎮めるために遅れた。それだけ……」
深いため息をした団長こと、ヴェイン。
「クイーンは中学生か何か。あっ
「…………いくら友人でも私は暴力も厭わないけど」
「ハイタッチだけで喜ぶヘタレには屈しません」
クイーンは自分が装備している靴で勢いよく地面を踏む。何やら奇声が聞こえたが気のせいだろう。
「面白いじゃない。今から帰って勝負よ……ヴェイン」
ヴァインもまた装備している靴で地面をぐりぐりと擦る。『やめてくれ……』と弱々しい声が聞こえたが絶対に幻聴と確定して目の前の女怪盗を見る。
「私のストレス発散要因になってくれて、ありがとう……クイーン」
お互いが目から火花を散らし、メンチ切っている下で死にかけている者が一人。
「もう勘弁してください……」
「そこの地面はほっといて、クイーン」
「うん?」
「さっきこの場所にいた二人の女性を追おうと思う——桃髪の魔法使いと青紫髪の女騎士。ふんっ!!」
再び地面が踏まれた。
「なんで?」
「桃髪の方はプレイヤーなのは明白だった。少々怪しい行動を取っていたけど。聖女がどうのこうのととか……。ここは教会から離れているから聞き間違えかもしれないけど。でも、青紫髪の女騎士の方は持っている装備も見たことがない。最前線にいる私たちでもね。だから……」
「
「それはそれ。私はあくまで自分の力を向上させるため。持っている装備品はどれも一級品だった。オーダーメイドの線の場合は鍛治職も知らないと。後は……」
早口で喋る友人を呆れな顔で見るクイーン。
(ダメだ。突き止めるまで……ログアウト出来ないかもしれない)
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