第30話 友人を助ける

「カトレアさん……私たちはを追います」


「......よろしくお願いします」


先ほどの威厳のあるシスターはなくなり、あるのは涙腺が緩んだ涙目のカトレアさん。

言いたいことが山ほどある顔だった。必死になって言葉を選んで私に言ったのは『願い』そのもの。

本当にアシリアさんのことが大事なんだんだね。


「行こう、ヴァルゴ……場所は当然……」


「お任せください。記憶しています」






私とヴァルゴは教会の出入り口に向かって歩き始める。

「でも、なんでアシリアさんを攫う必要があるんだろう」


首を傾げている私にヴァルゴは答えた。

「おそらくですが……オフィは聖女の力を欲しているのでしょう」


「『聖女の力』ね〜 そんなにすごいモノなのかしら」


「誰が何を欲求するのかは自由……特にオフィは自分だけしか持っていないモノを集める傾向がありました」


「蒐集家ってやつだね。私も集める気持ちは分かるけど、人の迷惑で手に入れても嬉しくもなんともないけど」



私はその場で立ち止まる。不審に思ったヴァルゴが振り向く。

「お嬢様……?」


「でもさ、残念な人だよね。


「『残念』ですか?」

ヴァルゴは主が何を言っているのか分からなかった。

ヴァルゴが思考している間にユミナはヴァルゴに笑顔を見せる。


「だって……こんなに素敵な女騎士ヴァルゴを手に入れないなんて……意外と見る目はないんだね。








私の言葉に肩を落とし、深いため息をしているヴァルゴの姿がそこにあった。


「酷くない!?!?!?? ヴァルゴさん?」


「なんと言いますか、お嬢様の元気がないお姿は今度見られないのかもしれませんね」


「えっ!? ヴァルゴ……貴女中々にドSね」


「『ドS』? ですか?」


「あ〜あ なんて表現をすればいいんだっけ。あれよ、人の弱気な姿を見て興奮する人!」


目が泳ぎ、口を魚みたいにパクパクしているヴァルゴ。おっ! レアな表情ゲット!


「し、心外……でっ、ですね、お嬢様。私はべっ、別に……そのような特殊な人ではありません」


「だって、私の元気がない姿が見られないって……つまりそういうことでしょう! 隠さなくてもいいよ。私はそんなヴァルゴも好きだから。あっ! でも、今度私が弱気な顔を見せても襲わないでよ。約束ね!」


再び歩き始める私。それを追うヴァルゴ。何やら弁解しているが生憎私のヴァルゴ辞典には新たな項目が出来上がっている。これを焼却するのはまず不可能よ。


「で、ですから……私は」


「はいはい、行くよ!」


「なんと不名誉な……」


私は教会の両開き扉を開ける。顔を上へ向け高らかに宣言した。

「さぁ、囚われの聖女様を救いに行きますか!!!!」







と、ここまでは実に良かった。良かったんだよ......うん。

ある意味この出来事が原因で私の運命は大きく変革していった。

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