第23話 亀と柱?

「危ないわねっ!!」


 独楽回転攻撃はしてこない。代わりに闘牛さながら、真っ直ぐな単調な動きだけだった。


 今装備している足装備の「バードラン」。一部ウサギ系モンスターの素材を使用した結果、見た目は白いブーツとなった。膝まで覆うブーツのかかとには鳥の羽が付いている。そのためかAGI値の補正がかかっている。

 またウサギの跳躍力もプラスされ、回避も容易となった。


 回避して隙あらば攻撃を喰らわせたいと思っていたが損傷が激しい甲羅だったが防御力は健在。




 私は装備欄を押し、装備を変えていた。防具系は現状でいい。変更するのは武器の方。


 新たな武器のお披露目よ!


星霜せいそうの女王』を外すのは惜しい。ボリボリネズミでも実施した方法の別パターンを採用する。左武器に星刻の錫杖アストロ・ワンドを持ち替える。そんでもって残っている右武器欄に『ヴァーシュ』の武器屋で購入した片手剣を装備した。


「初陣よ、兎鳥とうの短剣!!」


 全長30㎝、白い剣身で柄は彩る羽の片手剣。分類的にはナイフやダガーと同じ位置付けとなっているらしい。


 武器屋NPCに提示された一覧ではロングソードも選択可能だった。でも、剣武器初心者の私では長い剣身を扱うのはまだまだ至難の技。


 さらに蔑ろにしていた訳じゃないけど私のステータスで圧倒的に低いのはSTR。


 いくら『星霜せいそうの女王』で強制プラスステータスが付属されていても、星刻の錫杖アストロ・ワンドがガス欠を起こしてしまえば、戦力ダウン。


 今後の戦闘幅を増やすためには剣を持っていても損はない。なので補正も外付けも無くなった状況でも使用できる武器を選択肢した。結果、兎鳥とうの短剣を生産して貰った。





 名前の通りでウサギと鳥の素材で出来ている武器。剣身は白一色に対して柄の主張がうるさい。多分、多種多様な鳥系モンスターの羽素材を入れた結果。もう少しバランスを考えて欲しかった。アンバランスな格好の片手剣。装備時、AGI値とDEX値に補正がある。




 私は走り出した。AGIにもプラス200が追加されているとはいえ、さっきのヴァルゴよりかは遅く感じてしまう速度。でも現状が今の私のスピード。



「『ウォーマー』!!」



 ストーン・タートルの足元に水流を流す。本来なら人でもモンスターでも歩行時、無意識レベルで体のバランスを保つ行動を取る。バランスを崩すモノがあると生物はどうなるか。



『ウォーマー』で放射された水の効果で滑りを誘発された。急ぎ足や小走りで自分の体勢を整えるようとする。普段の体重移動には、余計な負荷がかかってしまう。結果、裸足のストーン・タートルには滑らかになった地面で体のバランスが取れなくなる。



 ストーン・タートルの体は反転し、防御力が弱い内側が丸見えとなった。


 元に戻ろうともがくストーン・タートルに詰める私。兎鳥とうの短剣を垂平に突き刺し、即座に横水平へ兎鳥とうの短剣を移動させた。空いた切り傷の中に向かって炎の強弾を放つ。


「『ファイマ』!」


 なんか久々に使用した『ファイマ』。火炎攻撃の威力を上げてくれる【攻火炎アフ:中】も重なる。中から炙られ、ストーン・タートルは熱さに負け、爆ぜた。


「疲れた……初めての剣武器攻撃としては良かったかも知れない」



「前回のような野蛮な戦闘ではなく、良かったです、お嬢様」


 失礼しちゃうわ!? 岩投げだって立派な戦略なのぉおおお!!!

 自分の持っているスキルを把握するのも大事なんだから、ね!



「......新手ですね」


 またカメさんか〜 今度は岩カメさんから熱い視線アプローチを注がれた。とほほ……


 振り向き兎鳥とうの短剣を構えた私は驚く。


「ニッコリ笑顔の長身の岩が私たちへ走ってくるんだけど!?!??!?!?」


 てっぺんに顔? 雑に掘った横線。上に二つの線。二つの線の斜め下には一つの線があった。横線AとBが目の役割だとすれば……横線Cは口?。


 奴の下。つまり私たちがいる地面は強風により砂嵐が舞っている。吸引力が最大パワーを有している。砂塵の大嵐に巻き込まれれば人なんて一瞬にして、ゴミ塊HPゼロになり一貫の終わりを迎えてしまう。






「なんでよぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」


「お嬢様、叫びながら走ると舌を噛みますよ」


 私とヴァルゴは岩柱無機質で雑な顔に背を向け、STMとAGIをフル活用して全力で逃げていた。あっ!! 閃いた!!


LUC値を信じる!!


不運を変えてくれる便利アクセサリー。早速、赫々たる道標ゴールド・ティアーズを......




























 目が覚めると、なんか見た景色がある上側の面。部屋の構造も以前、ヴァルゴと寝ていた場所にそっくりだった。起きた部屋から外は見ると、さっきまで爆速していた岩石地帯とは別の騒がしさがあった。耳を押さえたくなる爆音の大部分が人が発する声であった。


 端的にいってユミナである私は死亡して、『ヴァーシュ』の宿屋に戻ってきた。


「岩柱ぁぁぁ。お前の顔忘れないからね……」


 名前は確か岩響の巨山ヤービキャニオーン。頂上付近に顔と細長く岩でできた胴体だけのMob。特殊行動だったのか腕まで生えて自分の胴体を毟り、投げつけてくるなんて私は聞いていない。


 さらに投げた岩が問題だった。まさか爆発するとは思っても見なかった。今度見かけた時は爆弾を生成される前に倒す……私に......巨山体、倒せるのかな?


 私は次なる目標ができたと同時に欠落しているモノに気づき部屋を見渡す。




「ヴァルゴは……?」

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