第20話 シスター? を拾いました
物音がした。咄嗟の行動で
ヴァルゴも察知したのか
「待ってくださいぃぃぃぃぃぃ!?!?!」
通路の角から女の子の声が聞こえる。出てきたのはフードを被っているシスター服の女の子だった。警戒心がマックスのヴァルゴは剣先を女の子に向けていた。
「何者だ」
「私は……」
被っていたフードを取ると私の視界には金色があった。
「あ、綺麗!」
私は思わず声に出してしまった。
フードから抜け出した長髪のブロンド。吸い込まれる緑色の瞳。完璧な顔立ちで肌が白い。見た目は現実の私と同じ年齢かな。とにかく、超絶美少女が目の前にいた。
そしてなんだろう、心の高鳴りは……
「き、貴様ァアアア!!!」
なんでヴァルゴが体をプルプル震わせて、怒っているの?
「ご、ごめんなさい……」
「......ヴァルゴ、剣を納めてよ」
急にヴァルゴが怒り出したのかは疑問。いったん置いといて。ヴァルゴよりも目の前の女の子の方が先。
「私はユミナと申します。えっと、何かありましたか?」
「じ、実は……」
彼女の名前はアシリア。たった今『ヴァーシュ』に着いたNPCシスター。
なんでも『ヴァーシュ』の教会でお仕事があるとかで三つ目の街の『ティーグル』から来ていた。
巡礼のために大陸『スラカイト』、最後の街である『サングリエ』から逆行しているらしい。
なるほど、なるほど……うん? 巡礼? 何か
「へぇ〜 一緒に来ていた人とはぐれたんですね」
「はい。街が迷路みたいで迷っちゃいまして」
確かに、アシリアさんはわかってらっしゃるわね。私も咄嗟にヴァルゴの手を取り走り去り、メインストリートから逃げ出していた。運よく人気がない場所に着いたのは良かったけど、道が入り組んでいるのと無我夢中で走っていたから来た道も忘れてしまった。
「水路を辿ればと、歩いていたらお二人に出会いまして」
「もし良かったら、私たちと一緒に行きませんか?」
アシリアさんは胸元で手を合わせていた。
『《修道女の道案内》を開始しますか? はい・いいえ』
やばい……オニキス・オンラインを始めてから私はノックアウトされることが増えた気がしている。
みんなキラキラしていて笑顔がいい。これから会う人全員の背中がキラキラする加工がされてるだろうな〜
てか、待って? クエストが開始していた。
オニキス・オンラインのクエストは無限にある。NPCとのふとした会話で発生する、プレイヤー自身が忘れている条件が突如として解禁されて発生する、多岐に渡る。
まさに未知の領域。中には一度しか受注できないレアなクエストがあるとか。なのでメインストーリーでもある『果てなき冒険』の攻略よりも無限にあるクエストを楽しむプレイヤーが一定数いる。
それにしても、立て続けにクエスト発生するとなるといよいよ私が誰かに後ろから刺される可能性が近づく。大丈夫だよね、こんだけ
迷わず「はい」を押す。『道案内』だから目的地にアシリアさんを送ればクエスト完了なのだろう。意外に簡単だね。いや、私が受けているクエストが鬼仕様なんだよ。
「あ、ありがとうございます。でも……」
アリシアさんが困り顔になっていた。アリシアさんの視線の先にヴァルゴがいた。
細い目が私とアリシアさんを貫く。人によってはご褒美案件。私にはそっちの気はない。なので、非常に胸が張り詰める感覚。
「ヴァ、ヴァルゴ」
(ぷいっ!!)
そっぽを向かれた!?!?!?!??!?!?
あぁ、なんとなく分かった気がした。ヴァルゴの好感度の上下の仕様。
一回、アシリアさんの振り向く。急に私が振り向いた事で首を傾げるアシリアさん。
仕方がない。アリシアさんがいるけどここは背に腹はかえられない。
深呼吸、そう深呼吸よ。
「ヴァルゴ、安心して。私はヴァルゴしか見ていないから」
自分でも言ってても、非常に恥ずかしい言葉を言ったなと自覚している。穴があったら入りたい……
「わ、私もお嬢様しか……見てません」
頬を熱くして、私への好意を口走るヴァルゴさん……
少しのやり取りで仮定が確信に変わった。意外と勘がいいヴァルゴなのですぐに察知してしまう。
「い、行きましょう!! 道なら私が覚えていますので」
足にエンジンでも付けているのかと思わせる走りをしていた。
姿勢を正して腕を規律よく動かしている。一糸乱れない動きに気高い品性を感じた。
どこかで見たことがある……あれだ!
「集団行動行進……」
単独行動でやっているのはこの際、割愛します。
それにしてもヴァルゴにちょろインの属性があるなんて知って良かったのか、知らない方が良かったのか複雑な気持ちです。
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『オニキス・オンライン』
大陸『スラカイト』の現在解放されている街、一覧
1:「スーリ」 2:「ヴァーシュ」 3:「ティーグル」
4:「ラパン」 5:「ドラゴン」 6:「セルパン」
7:「シュヴァル」 8:「ムートン」 9:「サンジュ」
10:「ワゾー」 11:「シィアン」 12:「サングリエ」
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