第19話 やはり目立つ女騎士
「私、誰かに狙われないか心配」
「ご、ご心配ありません。私がお嬢様をお守りします」
ヴァルゴ、ありがとう。でもね、星霜スキル・魔法は完全に秘匿するべき情報かもしれない。
まず、
しれっとスキルレベルが上がった
もし発動者の私とヴァルゴやまだ見ぬ星霊だけにしか効果が発動されないのなら躊躇なくスキルを発動していく。他プレイヤーも
意外にスキル説明が簡略化されているから詳しい内容は自分の足で入手していくしかない。
でも、新たに入手した
誰が適用されて、誰が非対象かは全てのスキル・魔法の説明欄に記載してほしいよ。
......親切設計でお願いします~ 運営・開発者さ~ん。
「いや、女王スキルをダシに多数の人と仲を……ダメか」
やはりゲーム。ひいては不特定多数のプレイヤーが遊んでいるMMOでは価値のあるモノを手に入れたい欲望。周囲よりも上の存在になりたいと願望がある。
私が無闇に
私がまだ出会っていないプレイヤーやNPCの中には一定数のレッドプレイヤーがいるとか。危ない奴らに捕まったら最後、私が持っている情報を吐かすまで行動を起こすだろう。
なんといっても私以外に星霊を見つけようとするプレイヤーが出てくると思う。
自分で言うのもおかしいけど、ヴァルゴを大切にしてきた。
(昨日の夜はカウントしないけど……友達との遊び的なノリだし〜)
でも、全てのプレイヤーが私と同じではない。最悪、星霊が冷遇される可能性もある。
諸々を加味して、星霊の存在も話さない。ヴァルゴをプレイヤーと誤認させれば何とかなるのかもしれない。上手く隠れ蓑にしないと。
そして他のプレイヤーとパーティーを組む時は
自分の意思でなんとかなる内容ではない。ならば、やはり仮の装備が必要になる。
「自分を強化するのが簡単か......」
「強化ですか?」
「うん。自分の、ひいてはヴァルゴも守れないようじゃ、王女なんて名乗れないから」
「でしたら、街に行きましょう。お嬢様」
「街もいいけど......ヴァルゴは持ってないの?」
「もしかして......私のウラニアの指輪に収納されている武器を自分のモノにとか考えています?」
「いやぁ〜 あったら楽だよねって」
「先ほど格好いい言葉をおっしゃいましたのに......」
「過去は過去よ......ごめんなさい」
「はぁ〜 言葉が出ません」
「もう、わかったよ。地道に行くよ」
「十分です!」
「......ヴァルゴ、街の散策しましょう!」
「はい、お嬢様が行く所、如何なる場所でもお付き合いします」
何か忘れている内容が何個かある。思い出したときには、未来の私が事態解決をしてくれるだろう。
『ヴァーシュ』。
二番目の街でもある。『ヴァーシュ』の街を簡単に説明すると水の街。人々が行くかう通路以外に建物と建物の間に水路が築かれている。至る所に水路網が張り巡らされているので迷子になる人が毎日続出していたとか。
私たちは『ヴァーシュ』の街を散策していた。街の中心を貫く作りをしているメインストリートは活気があった。NPCの商人や生産職のプレイヤーも露天を出していてにぎわいを見せていた。
あまり人が多い所が苦手な私であるが隣にはヴァルゴがいるのでいざって時はヴァルゴの腕にしがみつく。
夕方から夜にかけての時間だったのでログイン率が高い。今でも増えていく。二つ目の街で多くのプレイヤーがいると考えると。先の街々とかもっとたいへんだろうな〜
てか、なんだか......何やら視線が痛かった。
「何!? なんて綺麗な装備!!」
「き、綺麗っ!」
「騎士服のプレイヤー、見た目レベル高くない!?」
「隣は明らかに始めたてだな。彼女のフレンド?」
「寄生で上がるつもりなんだな」
「自分だけじゃ何もできない奴だな、あれ」
「他力本願かよ」
人混みの中でも優所正しい騎士の服を着た美女が歩いているんだ。目立たない方がおかしい。
てかぁ、ヴァルゴさんは人からの視線なんてお構いなしって顔をしている。慣れているのかな? 私のSP(護衛)をしている。ヴァルゴが周囲を警戒してくれるのは感謝しかない。
反対に私は限界を迎えていた。ほんと、無理。一刻も早くメインストリートの場所から逃げ出したい。
「お嬢様。アイツら斬ります」
抜刀しかけたヴァルゴを制止した。さすがに街中で問題を起こせば別の面倒ごとにあう。
「落ち着いてよ、私は大丈夫だから」
「しかし、主を愚弄されて黙っているつもりはありません」
「いいから、ね」
殺気を鎮めたヴァルゴ。私はヴァルゴの手を握り、人気のない場所まで移動する。
数分歩き、私たち二人以外は誰もいない静かな場所に辿り着いた。辺りを見渡す。
迷路なみに入り組んだ通路ならそうそうプレイヤーに出会さない。
『ヴァーシュ』の街の地形に感謝かな。ありがとう水路街!!
「やっと安心できる……はぁ〜 疲れた〜」
「お嬢様……申し訳ありません」
深々と謝罪するヴァルゴ。
「私のせいでお嬢様の品性まで……」
「もう、いいよ。でも、ありがとう。私のために怒ってくれて」
「でも、よろしいのですか? アイツらはお嬢様を……その」
言わんとするのは分かる。ヴァルゴの性格上、本心を言ってしまう。ただ思ったままを私に言い放ったら不快にさせてしまい、自分の命の最後だと感じてしまう。結果、ヴァルゴは口をつぐんでいた。
「『馬鹿にしていた』? 当然だよ、街中に凄い見た目の美女がいれば誰だって注目してしまう。で、完璧美人の隣に明らかに分不相応なやつが一緒に歩いていたら変な考えを起こす人だっているんだし。運が良かったのは私たちに対して直接的な行動を起こす人がいなかった点だね! 良かった、良かった!!」
「私のせいで……」
私は首を横に振る。手を重ねた。
「ヴァルゴのせいじゃないよ。私が弱いだけ。だから……」
前のめりになってヴァルゴの顔を見る。
「だから、待ってて。必ずヴァルゴの隣に相応しい人間になるから!!」
ヴァルゴの顔が喜びに満ちていた。
「わかりました、お持ちしています。いつまでも……」
「さてと、早速……武器屋に」
物音がした。咄嗟の行動で
ヴァルゴも察知したのか
女の子の可愛いらしい声が静かな場所を彩っていく。
「待ってくださいぃぃぃぃぃぃ!?!?!」
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