第10話 月光の矢、復活の前触れ
「ごめん、
「ほ〜〜い!!」
手を振る
2年4組。
教室の扉を盾にして、顔だけ覗き込む格好をする私。
「何かご用ですか?」
「はひぃっ!?!?!?!?」
後ろにいたのは2年4組の教室の女子生徒さんだった。
「えぇ……えっと」
やはりなのか気心が知れた仲ではない人との会話は上手く言葉が出ない。
「すまない、彼女は私に用があるんだ」
教室から歩いてきたのは私の義理の姉でもある
昼休みなのもあって廊下には生徒が大勢いた。男子生徒なら
女子生徒なら自分たちの会話を忘れ、高貴と美貌な雰囲気が直視してしまいドキドキしていた。中には倒れてしまう人もいた。
誰もが教室から出た
「大丈夫か? せつな......??」
はい、結婚してください……って何プロポーズをしているんだ私は!?!?!?
自分が自分にツッコミを入れるのはなかなか現象。幸運だったのが今出してしまった言葉は全て心の中だった点。もし聴こえていたら……
『すまない。せつなは血のつながりこそないが私の妹だ。妹の素直な言葉は非常に嬉しいが私たちは女同士。申し訳ないが君を恋愛対象とは見てないんだ......すまないな』
きっとこんな感じの言葉を思いながら変な目で見られる。この上ない気持ちになる。
折角? ゲームの成果なのか分からないが昨日家でも少しだけ話せるまでになったのに。まだお互いよそよそしい関係が続いている。でも、台無しにしては本末転倒。今は少しだけでいいんだ。
「はい、お弁当だよ。お母さんから預かったの……」
新しいお母さんでもある
でもって、
「ごめん、忘れていたよ。ありがとう」
「お母さんが『珍しいこともあるんだね』って言っていたよ」
「少し考え事をしていたから……せつな。ありがとう」
ま、眩しい……私の
変な言葉を並べるよりシンプルな言葉が一番。なのでもう一度言います。美しい、これに尽きる。
「せ、せつな……」
「うん?」
「いや、なんでもない。お弁当ありがとう」
そう言い残して自分の席に戻る
「お帰り〜」
「................一つ言っていいかな、
哀れな目でまだコーヒー牛乳を飲んでいる
「友人として言わないと……
私の机に空箱のコーヒー牛乳だった
「二人も、
教室の一角に
いまだにグデーっとした顔で何本目か分からないが未だにコーヒー牛乳を飲んでいる茶髪の
左にいるのはお菓子の料理本を読んでいる水色のセミロングの
右にいるのはブラックコーヒーを飲んでいた薄い紫のショートヘアーの
「懇願されちゃってね」
「いやね、仕方がなくやった。だからあたしたちは無実」
「自ら自白しているの分かってる?」
三人とも一年からの同級生で私の友達。他にも交流がある人たちがいるけど、目の前にいる三人が一番付き合いが長い。だから自然と話せる間柄。
「で、せつな。噂のお
「ご想像にお任せします」
「聞きましたぁ、奥さん。『ご想像にお任せします』ですって。なんてハレンチな娘さん。一体何を言ってるのかしら、せつなさんは……」
おっとりとした口調で話し始めるみはる。
「ダメだよ〜 かなでちゃん。目を瞑るのが淑女としての作法なのよ」
「なるほど!! 勉強になります、みはる先生」
「そろそろ、怒っていい?」
「カルシウム足りないんじゃない? 飲みかけのコーヒー牛乳あげるよ」
「コーヒー牛乳ってカルシウム入っているの……」
「”牛乳”って記載されているんだから間違えなく入っているよ」
「気持ちだけ貰っておくよ」
ため息をする
「は〜〜あ。そうだよね、せつなは私の飲みかけなんていらないよね。は〜〜あ」
「もうぉおおおおおおおおおお!!!! 分かったよ、飲めばいいんでしょう、飲めば!!」
片手で飲みかけのコーヒー牛乳。もう一方の手は自分の腰に置く。さながらお風呂上がりのスタイル。
……あのさぁ、
飲み終えたら速攻で消去してあげるから待ってなさい。
......
............
........................
学校から帰り家の二階に着くと、後ろ姿の
「あ! おね……」
私が呼んだタイミングで
立ち尽くす私。
今は二人っきり。なんとかして進展しようと思ったが世の中、上手く行かない。
いや、マイナス思考になってはいけない。マイナスをプラスに変えてみせる。
リアルのやるべき内容を全て終わらせた私は社会復帰のためにゲームの世界へゴー!! した。
「社会復帰じゃないし」
自分が思った内容を自分で否定していた。
◆
「はぁ〜 今日も上手く喋れなかった……」
扉に背中を預け、私は座り込んでしまう。
「やっぱり……ムリなのかな」
お昼に時間を割いて、自分にお弁当を持ってきてくれた義妹でもあるせつなさん。
お父さんに聞いた。せつなは少々人見知りがあると言われた。長い付き合いを経た者なら問題なくくだけた会話ができるとも言っていた。現にせつなさんのクラスには一年の頃からの友人たちがそのまま同じクラスになっている。だから、せつなさんは学校生活でも問題なく過ごせていた。
全く知り合いがいない私のクラスに行くのに余程、勇気が必要だっただろう。
だから、来てくれたのが私にとって、心の底から嬉しかった。学園での自分ではなく、義理とはいえ姉としてちゃんと話したかった。でも、いざ対面すると本音で言いたい言葉が口から出ずにいた。
「どうして……こうも緊張してしまうんだ」
SNSで同性で楽しそうにショッピングや食事をしている画像を見ていた。
みんな楽しそうでなんていうかキラキラしている。
自分の状況と真逆を歩いている人たちを見て羨ましいと思ってしまう。
決して人付き合いが苦手ではない。仲のよい子たちとは頻繁に買い物なんかもしているし、共通の趣味もある。それなりに楽しい時間を過ごしているが……
「一番近くにいる子との時間は過ごせていない……」
私は机に置いてあるヘッドフォン型のVR機器に手を伸ばす。
「こういう時は、ゲームをやって憂さ晴らしかな」
◇
「参ったな〜」
『スーリ』にある噴水公園でなんとなくフードを被りユミナでもある私は今度の行動をどうしたものかと項垂れていた。
「この杖。うんともすんともしない」
賢者部屋で手に入れた古びた錫杖は本来の機能を失っているのか何にも発動しなかった。
ログインしてから速攻で近くの森で雑魚モンスターで検証していた。
一応、武器扱いで装備できる。けど、STR(筋力)とMAT(魔法攻撃力)が「1」ずつしか追加されず、それ以外の補正も入らない。
諸々の情報を集めた結果が「古びた錫杖」の現在であった。
全くもって価値がない存在。まだ初期武器でもある「魔法使いの杖」の方が有能。
やったね
それにしても森にいた小型のウサギモンスターさんたち。
自分の額に生やしているドリル形状の角で永遠と私の胴体ばかり狙ってきていたから危うくHPがゼロになる勢いだった。
「せめてヒントとか残してよ、賢者さん……」
賢者の半生日記を隈なく見ても、有益な情報は見当たらなかった。
ため息をつく。ふと、上を見上げた。
「満月……か」
『スーリ』は村みたいな町。
山奥の田舎ではなく、少し公共施設や設備があるくらいの田舎レベルの街。プレイヤーは即座にもう少し設備が整っている次の街『ヴァーシュ』に向かう。
田舎レベル5位の町でも街灯は存在する。しかし『スーリ』の街並みの光は遥か上に君臨している満天の月明りが勝っていた。
まさか、だよね。
でも、月星座とかもあるし占星術もあるから。無価値の錫杖……もとは星霊さんたちの持ち物だったし。何か繋がりがあるのかもしれない。
古びた錫杖を月にかざした。
特に反応はなかった。
「なんて、ね〜」
古びた錫杖を下ろすとした瞬間——————
「きゃっ!?!?」
先端に嵌め込まれている? 水晶が輝く。突然のイベントで思わず手から離してしまった。
錫杖の水晶と月が細い線で繋がっている。
乾燥ワカメは水で元に戻るみたいに時間が経過するにつれてモノクロの水晶が夜の神秘的な世界に変貌した。
月のエネルギーを得た水晶は深い青紫色へ変化する。
夜空が水晶に吸収されたかのごとく散りばめられている星座や流れ星は水晶で生きているように見えた。
同時に錫杖も燻みが剥がれていく。サングラスが必要なレベルに光り出した。
光が収まると地面に黄金の錫杖があった。
「なんか成功した......」
賢者さんも『なんじゃそりゃああああ!?!?』ってしているに違いないかも。
——————————————————————————————
〜装備欄〜
頭:緑鬼のローブ(フード)
上半身:緑鬼のローブ
下半身:緑鬼のスカート
足:見習いの革靴
右武器:古びた錫杖→
左武器:魔法使いの杖Lv1
装飾品
①:オフィの指輪:蘇生回数0/3。
——————————————————————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます