第8話 好機は勇気に味方す

「お、終わった……」


 戦闘勝利の喜びをしたかった。でも、端から端までシャトルランを行った。フィールドを走り回っていたから疲労感を感じ、フィールドのど真ん中で大の字に倒れた私。


 ドロップ品は私を囲み、大量に配置されている。ドロップ品の中に一枚のカードがあり興奮している自分がいた。


「アクイローネには今度、何か買ってあげよう」


 友人が時間をかけてクリアしたお使いクエストをたった二回目的のモンスターを倒しただけで終わせた私。しかも一回目はおこぼれを貰う形。さすがに気が引けるのでアクイローネ様には甘い物を献上しよう……と考えた私。


 見習いの初歩戦闘終了後、MP回復命の鼓動戦闘終了後、HP回復が自動的に発動。全快とはいかないけど帰りもなんとかモンスターを戦うことができるくらいには回復した。


 帰るまでが遠足なようにダンジョンの外に出るには自分の足じゃないと帰れない。中盤や最前線の街には一瞬にして外に出れるアイテムがあるらしいが最序盤の位置にいる私には無縁のアイテム。


おさを倒したのに、嬉々として突っ込んでくるモンスターのモーションなんとかならないのかな……」


 ボスの敵討かたきうちだって認識に近いのかな。でも結局プレイヤーの養分経験値になる運命なんだから素直に道を開ければいいのに……


 レベルアップしたのでステータスポイントもゲット!!

 まだ動きたくないので自分のステータスをどのように上げるか悩む時間にした。


 Lv:13 

 HP:55

 MP:80


 STM (スタミナ):20

 STR(筋力):13

 MAT(魔法攻撃力):60

 DEX(器用さ):45

 AGI(敏捷):17

 VIT(耐久力):20

 LUC(幸運):30

 CHR(魅力):35



「試しに魅力値を上げてみたけど、今は特別な補正がかからないか......」


 新たにポイントを入れる前までの魅力値状態では多少、アバターが美しく見えると言われた。

 感想は当然、アクイローネ。でも綺麗に見えれば声をかけやすくなるよねと謎の自信をに入れた私は起き上がる。


 元来た道を歩き始めた————————————












 フォールドが揺れた。

 敵襲と考えた私は戦闘準備をする。でも、待てど待てど敵が現れる気配はなかった。


「……何? 扉?」


 ゴブリントロールがいた初期位置。後ろは残った巨大な棍棒と壁しかなかったが洞窟全体が揺れたことで壁が崩れ、ドアが出現した。


 帰るのをやめた私は非常に興味がある扉へ足を進める。

 扉の一歩手前にまできた私は奇妙な扉を観察した。


 材質は木製。でも所々脆くなっている? 隙間からは……暗くて見えないか。

 アクイローネと来た時には発現しなかった現象。敵の罠? いや、それなら扉を隠す理由がないし無駄な行動。


「さっきの戦闘が何かの条件を満たしたのかな?」


 ゴブリントロールの棍棒に当たらないように無我夢中で攻撃をしていたから。私が行った数々の行動が条件になったのか本人である私も分からない。




「......ここは乗ってみる方が正解かな」


 仮にゴブリンたちの罠だとしてもリスポーン地は『スーリ』の宿屋。寧ろ歩く手間が省ける。どうしよう……こんなに幸運続きな出来事が多発すると後で仕返しが来るのではないだろうか......

 気が抜けた瞬間に後ろからグサりと刃物で刺されるとか、集団で攻撃されれるとか……されないよね?


「そん時は、未来の私がなんとかしてくれるよ!! では、いざ未開の地へ」


 ドアノブを掴み奥へ進んだ。




「——ッ!?!?」


 扉の先は石でできた小部屋だった。壁にはコケが生えている。蜘蛛の巣が張っている。壁際には一面書棚だった。簡易的なベットがあり、埃が積もっていた。いかにもな奇妙な部屋は長年、使われていないと思わせる作りをしている。


 そして部屋の真ん中には———


「……杖?」


 古びた錫杖ロッドは石板でできている地面に突き刺さっていた。


 謎の杖の周囲を巡る。古じているけど凝った装飾がされている。錫杖の先端は鉤爪状に湾曲した形(ショーテルに近いかな......)の中に大きな水晶がある見た目だった。水晶も錫杖全体も燻み目立つ。軽く手で払ってみたが取れれば金色に輝くと。


「いきなり起動することはなさそうだね」


 敵発見! 即攻撃!! とかが自動発動しないことに安心を得た私はいったん、杖を観察するのを辞め、本棚に目を向けた。しかしほとんどが長い年月経っていたため破けているし、文字がスレスレでまともに読めなかった。



 二冊を除いて……


「これ、日記と魔導書?」

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