第3話
何度か話を聞いていた。皇帝からの寵愛を得るために、皇后は寵妃を呪殺しようとしたと。そしてその事実を揉み消したことも。
人は人から話を聞いて更にそれを広める、時に原型を留めないで。特に後宮という話題のない場所だと噂が広まるのは早い。
だから氷華は皇后達を嫉妬に狂った殺人鬼と皆に広めたのだった。それにより皇后は事態の収拾がつかなくなっていた。
「まああれで、皇后は引きずり下ろせるな」
皇帝は内心氷華を皇后にしたいと思っている。王族は元々頭が良くない。また後宮に入ってくる女たちは見た目重視で入ってくるので、頭が良い娘はあまりいなかった。賢い娘を寵愛したとしても、それに嫉妬した馬鹿な娘が嫌がらせをするので誰も幸せにはなれない。
こんな歴史があるからこそ、この国の王族は賢い女が好きだった。一種の憧れとも言える。賢い者の遺伝子を王室に残したい、それが王族の本能と言ってもいいだろう。
「ではこれで。わたくしは宮へ帰ります。明日の朝儀、わたくしも出席してよろしいですか」
明日は皇后たちの処分が決まる日だ。普段であれば後宮の管理、後宮に住む者の管理は例え皇帝であっても皇后の許可が必要だ。しかし今回は皇后自身が罪を犯したのだから例外であった。皇帝の一存で決められる。
「本来であれば許されないが、良いだろう」
「ありがとうございます、御前失礼致します」
氷華は丁寧な礼をとり退出した。実際は酷い礼だったが。本人が満足しているから何も言えない皇帝は、氷華の礼をみて苦笑した。
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