(三)

 ケンカしたのは、今日、即ち八月三一日の朝だった。僕が実家に帰るために支度して、兄はバイトに行くために準備していたときだ。

 前の日からずっと僕の心の中でモヤモヤしていたお台場での兄の姿。あれは兄のように見えたし、兄ではないようにも見えた。昨日はそれについて尋ねることはできなかった。聞くのが怖かった。

 でも僕は、スポーツバッグに着替えなどを詰め込みながら、思い切ってさりげなく兄に聞いてみた。

 すると、やはりあのとき兄はお台場にいたという。だから続けて「あのときの女性は誰なの」と僕の口唇が僕の疑問を兄にぶつけてくれた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る